塚本靑史『マラトン 小説ペルシア戦争Ⅰ』(幻冬社) [歴史関係の本(小説)]
中国史関係の小説では定評ある著者による、古代ギリシアを舞台にした歴史小説。よく知られたエピソードであるものの日本ではこれまであまり小説の題材とはならなかった分野をモチーフにした作品で、長編小説ながら読者を飽きさせない構成は見事。
この本では、前494年からマラトンの戦いが起こった前490年までが描かれており、マラトンの戦いそのものではなく、マラトンの戦いに至るまでのアテネの動きが小説の主な部分をなす。主人公は、マラトンの戦いでギリシア軍を指揮した将軍ミルティアデス。その他クレイステネス、テミストクレス、アイスキュロスをはじめ、アルテミシア、ダマトラス、ヒッピアス、レオニダスなど有名どころが登場するので、混乱しがちなギリシア系の名前がなんとか整理できる。ピタゴラス教団の活動によって、作品にミステリータッチを加味することに成功している(活動の理由は最後に明らかになるが、それだけの理由ではなんとなく弱い気も)。続編はまだリリースされていないようであるが、続編に期待大。
評価 ★★★★(満点は星5つ)
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