SSブログ

青池保子『アルカサル 王城』(プリンセス・コミックス) [マンガ]

DSCF20080814.jpg


 14世紀、イベリア半島で活躍したカステイリャ王ドン・ペドロ(ペドロ1世)を描いた青池保子の歴史長編。コミックスでは全13巻ですが、途中掲載誌の休刊に見舞われ、1984年から2007年まで24年という歳月を費やして完結という大作[http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200706280099.html]。少女マンガと侮るなかれ、『修道士ファルコ』や『トラファルガー』などこれまでヨーロッパ史関係の青池作品を読んだ人は分かると思いますが、実に読み応えある作品です。ヨーロッパ中世の歴史にひかれるのは、(現実はともかく)この時代と場所が何となくロマンティックな雰囲気をたたえていることにあると思いますが、それを見事なまでに具現化した作品です。

 主人公ドン・ペドロの兄(庶出)であり不倶戴天の敵でもあるエンリケ・デ・トラスマタをはじめ、敵も味方も登場人物の顔が同じ(ヘアスタイルで区別するしかない)で、かつセリフが多いため、かなり頭を使う作品でした。これはサブキャラと彼らが織りなすエピソードが極めて魅力的であるため、致し方ないことでしょうね。終盤に登場するエドワード黒太子や、ベルトラン・デュ・ゲクランに関する知識があれば、より楽しめるかもしれません。佐藤賢一の『双頭の鷲』を読んだときはデュ・ゲクランを応援したのに、この作品を読むと、デュ・ゲクランはほんのチョイ役なのにもかかわらず「(デュ・ゲクランって)嫌なヤツ」と思ってしまうのは、青池作品のスゴさかも。

 私はプリンセスコミックスで全巻買ったのですが、文庫版でも刊行が始まったようです。



アルカサル 13―王城 (13) (プリンセスコミックス)

アルカサル 13―王城 (13) (プリンセスコミックス)

  • 作者: 青池 保子
  • 出版社/メーカー: 秋田書店
  • 発売日: 2007/09/14
  • メディア: コミック



アルカサル-王城 1 (1) (秋田文庫 20-27)

アルカサル-王城 1 (1) (秋田文庫 20-27)

  • 作者: 青池 保子
  • 出版社/メーカー: 秋田書店
  • 発売日: 2008/07/10
  • メディア: 文庫



双頭の鷲〈上〉 (新潮文庫)

双頭の鷲〈上〉 (新潮文庫)

  • 作者: 佐藤 賢一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/06
  • メディア: 文庫



双頭の鷲〈下〉 (新潮文庫)

双頭の鷲〈下〉 (新潮文庫)

  • 作者: 佐藤 賢一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/06
  • メディア: 文庫



nice!(1)  コメント(9)  トラックバック(0) 
共通テーマ:コミック

nice! 1

コメント 9

凡山

これはもう私に貸すしかないでしょう(笑)
冬の先生が忙しい時期にでも借りに行きますよぅ( ^▽^ )ノ
よろしくおねがいしまーす♪
by 凡山 (2008-08-14 16:39) 

KE007

お久しぶりです。

先生のサイトにお邪魔するようになりましたのは、「ファルコ」がきっかけでした。とうとう、「ペドロ」までいらっしゃいましたね。ちなみに、同じ青池女史の「ドラッヘンの騎士」や「女王陛下の憂鬱」もいい歴史的作品ですよ。

「アルカサル」が発端で、すっかり中世あたりのヨーロッパ史病となってしまっている私です。(もともと歴史は大好きですが、なんだかすっかりマニアックになってきてしまって…笑)

青池女史が執筆の参考資料にされた本は図書館に行かないと手に入らないそうですが、http://www.elfinspell.com/PeterTitleStyle.htmlにいきますと「ドン・ペドロ」の物語があります。英語ですが…。ご参考まで。
by KE007 (2008-08-14 23:51) 

zep

>凡山さん
いいですとも、いつでも貸しますよ。事前に連絡してくれれば、準備しておきます。青池ワールドの真骨頂を堪能してください(笑)。

>KE007さん
「ドラッヘン」は歴史ミステリーということで、ジョセフィン・テイの『時の娘』的作品だと勝手に思ってますが、どうでしょう。「女王陛下」は知らない作品でしたが、「ドラッヘン」と同じ本に収録されているようで、ぜひ読みたい作品です。
『アルカサル』最終巻に参考文献がでてましたが、原書でしたね。英語では「PETER THE CRUEL」って呼ぶんですね。やはり「NOTORIOUS 」という評価が一般的なのでしょうね。
ドン・ペドロだけなく女王ファナとか、スペインには少々エキセントリックで魅力的な人物が多いですね。

by zep (2008-08-15 18:48) 

オガピー

ごぶさたしております。先生の影響で、「修道士ファルコ」「トラファルガー」「アルカサルー王城」すべて読ませていただきました。自分が楽しむだけで生徒たちに勧めても受験生は読んでいる暇は無いようです。ただ講談社の「世界の歴史」の旧版は読んでいるようです(新版は自分的にはあまりよくないので勧めていません)。本日から戦後史の課外を始めました。戦後史の複雑な流れがわかる「マンガ」ってないですかねぇ~?
by オガピー (2008-08-18 20:37) 

zep

「ドラッヘン」が今日届いたので呼んでみましたが、面白かったです。MASTERキートンの「祈りのタペストリー」に通じるものがありました。講談社はちょっと呼んだことないですねー。中公はおもしろエピソードが多い旧版のほうが、学問的要素が強い新版より高校生にはいいような気がします。戦後史のマンガはあまりみかけませんね。映画なら『フォレスト・ガンプ』がいいかも。
by zep (2008-08-19 21:02) 

出席番号100

世界史虎の巻、ありがとうございました。世界史は2次でも使うので頑張りたいと思います。

マンガといえば、歴史ものではありませんが僕はジョジョが好きです。先生も持っていらっしゃると記憶しています。
映画は最近BSでテキサス決死隊とアドベンチャー・ワールドを観ましたが、特殊効果をフルに使った現代の映画と違った面白さがありました。
私事になってしまいました^^;

随分前のペプシの食玩(スターウォーズⅢシスの逆襲のパドメ)が家にあるのですが、ご入用でしょうか。
たいしたフィギュアではないので、捨てられる運命にあります笑
by 出席番号100 (2008-08-25 20:12) 

zep

「虎の巻」の原型は4年ほど前につくりました。当時は綴じてもなく分量も少なかったのですが、卒業した諸君の協力も得て毎年少しずつ増やしていき、今の形になりました。センター試験だけでなく、論述でも年号をおぼえておくと、けっこう役に立つツールになります。ぜひ活用して、「こんな覚え方がある」なんていうフレーズがあれば、後輩諸君のためにもぜひ提供してください。
スター・ウォーズは、エピソードⅠ~Ⅲは守備範囲外なんですが、ぜひください!
by zep (2008-08-26 23:02) 

出席番号100

僕は用語暗記は得意なのですが、「タテ」と「ヨコ」の理解がまだまだ不十分で論述力がついていないと感じているので、そういった意味でも虎の巻はありがたいです。

明日持っていきますが、どうか期待はしないで下さい。
by 出席番号100 (2008-08-26 23:30) 

zep

出席番号100さん、今日はどうもありがとうございました。今、見終わったところです。年号は論述でも大事です。今年の東大の問題みたいに「1850年ころから70年代までの間」というような短い間を扱う場合、年号知ってると便利ですよね。
by zep (2008-08-27 23:30) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。