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受験指導とアクティブ・ラーニング [授業研究・分析]

 「今なお高校地歴科(なかでも歴史学習)は教師主導型授業の牙城であり、生徒の活動を重んじた先導的実践が行われ、学習指導要領の改善が度々図られてきたとはいえ、「極北の地」であることに異論はなかろう。」

 この一文は、神戸大学附属中等教育学校が文科省の指定を受けて開発した高校地歴科の科目「地理基礎」「歴史基礎」の「実施報告書Vol.2」(平成27年2月発行)の巻頭言である。私自身、まったく異論はない。これは何を意味しているのか。教員養成系大学で開発されてきた歴史の授業は、いずれも失敗だったということである。以前(7年前)にも指摘したことだが(http://zep.blog.so-net.ne.jp/2009-05-25)、状況的にはあまり変わっていないようだ。そして「極北の地」にもアクティブ・ラーニングが導入されることにより、教育現場はますます混乱しているように感じる。

 「最後に一つ課題として指摘したいのは、世界史教育への危機意識が弱いと感じられる点である。知識獲得型の講義授業も現状ではやむなしとしているが、日本の世界史教育は悠長にかまえていられる状況にはない。探求的世界史学習いつやるのとの問いには、「今でしょ」と即答していただきたい。」
 こちらの文章は、全国社会科教育学会が発行している『社会科研究』第79号(2013年11月発行)に、書評として掲載された文章の一節だ。こうした現場を無視した物言いが、「活動あって学びなし」の歴史授業(http://zep.blog.so-net.ne.jp/2014-02-23)を褒めそやす風潮を生んでいるのではないか。

 アクティブ・ラーニングに関する本はかなり読んできたが、その中で心に残ったのは次の一文。
「アクティブ・ラーニングというと、賑やかに活動している場面を想像しやすいが、「静かなアクティブ・ラーニング」も有効ではないか。他者とノートを静かに交流し合うことはもちろん、一人一人がテキストを静かに読み、その理解を文字化しながら考えを深めていく、これも静かな「アクティブ・ラーニング」。生徒が集中して静かに考え、それを言語化する場面の設定が重要だ。」
 これは『月刊高校教育』2015年11月号(特集「アクティブ・ラーニングは怖くない!?」)に掲載されていた「「生きて働く質の高い学力」を培うアクティブ・ラーニング」の中の一文。筆者の渡邉久暢先生は国語の先生のようだが、「静かなアクティブ・ラーニング」は、「深い学び」に通じるのではないだろうか。思索することも、歴史の授業では必要だと思う。

 そしてもう一つは、『すぐ実践できる!アクティブ・ラーニング 高校地歴公民』(学陽書房)という本。アクティブ・ラーニングで使う課題について「課題は、出張時などに生徒に取り組ませる自習課題をイメージしてください。」「(教科書の)指導資料の中にある問題例を課題として使用します。」「教科書指導資料に加えて教科書準拠のノートを生徒が購入していれば、ノートに載っている問題を課題としてそのまま使うことができます。」という紹介。これは使えそう。現場の先生方の視点は、現実に即している。




すぐ実践できる!  アクティブ・ラーニング 高校地歴公民 (アクティブ・ラーニング教科別実践法シリーズ)

すぐ実践できる! アクティブ・ラーニング 高校地歴公民 (アクティブ・ラーニング教科別実践法シリーズ)

  • 作者: 後呂 健太郎
  • 出版社/メーカー: 学陽書房
  • 発売日: 2016/04/19
  • メディア: 単行本



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渡邉久暢

拙論をご覧くださり、ありがとうございました! ぜひ、実践の交流をさせてくださいませ。
by 渡邉久暢 (2016-10-21 13:18) 

zep

渡邉先生、はじめまして。
コメントをどうもありがとうございます。
アクティブ・ラーニングについて、どうも身体的なアクティブさが頭脳のアクティブさよりも優先されているように感じていたので、渡邉先生の文章はとても心に残りました。
「静かなアクティブ・ラーニング」は、地理歴史科こそ必要なのではないか?と考えています。
私にロクな実践はないのですが、先生のような第一人者と交流させていただけるとは、たいへんありがたいことです。ぜひよろしくお願いいたします。
by zep (2016-10-23 00:11) 

渡邉久暢

今後ともよろしくお願い申し上げます。

by 渡邉久暢 (2016-10-27 20:40) 

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