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今年の九州大の問題(2) [授業ネタ]

今年の九大の〔2〕は、14世紀のイングランドにおける4つの統計資料を使ったグラフの読み取り問題。本日2年生世界史Aの授業で、アクティブ・ラーニング形式でやってみた(北高33期生2年2組)。

 問1の解説を行った上で、問2にチャレンジ。
  グラフA・・・・14世紀半ば、イングランドでは人口が激減した。
  グラフB・・・・グラフAで人口が激減した時期、
       イングランドでは労働者の賃金が上昇した。
  グラフC・・・・14世紀半ば以降、小麦価格は上昇しなかった。

 以上のデータから、「14世紀半ばのイングランドにおいて、労働者の生活環境にどのような変化が生じたかを100字以内で述べる」というのが問題の要求。
 始めてみるとけっこう大変で、私の説明から各グループの答案作成まで40分以上かかってしまった。短文であっても、文章化をグループで取り組むのはあまり効率がよくないかもしれない。

【各グループが作成した答案】
①14世紀、15世紀のイングランドでは、人口は黒死病によって減少し、賃金が増えたことによって生活が豊かになった。
②労働者の減少により人手不足で一人当たりの賃金があがった。また生産力は落ちたが、人口の減少により食料の消費量も減ったので価格は変わらなかった。よって一人一人の生活は豊かになった。
③黒死病によって人口は大きく減少して、1人あたりの労働力が増え、賃金は上がる。しかし人口が減っているので、小麦の収穫量が減っても需要と供給のバランスが成り立つので、小麦価格は大きく変化しない。その結果労働者の生活は向上した。
④人口の減少により、小麦の生産者が減り小麦の需要が増加した。しかし、安価な小麦がよく売れるため小麦価格が変動せず労働者の生活は苦しくなった。
⑤黒死病により、労働者の数が減ったので、賃金を上げることで労働者を雇おうとする労働者不足の状態になったのに対し、小麦の値段が変わらないから、結果的に労働者の環境はよくなった。
⑥黒死病によって人口が減少したことにより、労働力が不足し、賃金が上昇した。そして食料の需要も減り、供給も減ったため、食料の値段は変わらなかった。だから労働者の生活は向上した。

④のグループだけ「生活は苦しくなった」としており、間違った認識を持ってしまっているが、他は「労働者の生活は向上した」という結論を導くことができた。ベスト答案は⑤。14世紀のヨーロッパといえば「死の舞踏」「メメント・モリ」の暗いイメージだが、個人レベルの生活を見ると、暮らし向きはよくなったと言えるのは興味深い。この「ビックリ」が出題者の意図だった...とすれば感服。

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shinobu tanaka

 さっそくやられましたか。こちらは来年度にできるかどうかなあ、というところです。問題を見て、昔おられた森本芳樹先生の著作を思い出しました、ジェニコ命の。
 封建制の危機のもう一つの顔は、相対的な農民の地位向上と、12世紀開墾地=耕作不適地の放棄ですから、生活水準の向上まで気づかせるのが狙いなら、入試から教育が始まっているということなのでしょうね。
by shinobu tanaka (2017-03-02 21:42) 

zep

 私は卒論&修論がドイツ中世都市だったので、森本先生と田北廣道先生には文献の手配等で本当にお世話になりました。森本先生は笑顔が素敵な先生で、若手を育てようという意識が高い方でした。森本先生の薫陶を受けた先生方は、田北先生はじめ尊敬できる先生方ばかりです。
 こうしたデータの読み解き系の問題は、今の時期の「余り時間」にやる内容として、ちょうどいいかなーという気がします。
by zep (2017-03-03 19:44) 

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