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ミュシャ展 [その他]

 国立新美術館で開催されているミュシャ展を見てきた。これまで私がミュシャに抱いていたイメージといえば、オレンジかかった色彩で豊かな髪の美しい女性の絵。そして、「ロンドンのピアズリー」「ウィーンのクリムト」「パリのミュシャ」が、私にとっての世紀末三種の神器であった。しかし、この展覧会は私がミュシャに抱いていたイメージを一変させる素晴らしい展覧会だった。

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 今回の展示会における目玉は、連作「スラヴ叙事詩」20展がすべて展示されていることにある。これまで私がミュシャに抱いていたイメージを一変させる、重厚さ、暗さ、大きさに圧倒された。連作「スラヴ叙事詩」は、ミュシャがスラヴ民族の歴史や神話などを題材に描いた一連の作品である。これまで私は、ミュシャはフランス人とばかり思いこんでいたが、彼は現在のチェコ出身のスラヴ系であった。したがって、Muchaの発音はチェコ語だと「ムハ」もしくは「ムッハ」となるらしい。
 会場内が混雑している理由の一つは、作品群の大きさにある。近づき過ぎると全体が見えないため、作品の近いところには人がいない。多くの観客は離れて全体を鑑賞しようとするため、会場内はとても混雑していた。細部を見るには望遠鏡があると便利。
 驚いたことに、「スラヴ叙事詩」の一部は写真撮影可であった。「原故郷のスラヴ人」は残念ながら撮影不可だったが、特に印象に残ったのは「ロシアの農奴制廃止」。1861年に発布された農奴解放令を題材にした作品だが、明るさと暗さ、希望と不安が同居しているような奇妙な感覚の作品である。右上の陽光と左下の暗い表情の人々とのコントラスト。こちらを見つめる不安げな母子の表情にひかれ、人の波をかきわけスマホのシャッターを切ったものの、手ブレでよく撮れていなかった。この作品が完成したのは第一次世界大戦がはじまる1914年だが、その前年にロシアを訪れたミュシャは人々の悲惨な生活を目の当たりにしてこの作品を描いたという。

 ビザンツ帝国、神聖ローマ帝国、オスマン帝国、ドイツ騎士団VSリトアニア=ポーランド(ヤゲウォ朝)連合軍、ベーメンのフス、オーストリア=ハンガリー帝国の解体とチェコスロヴァキアの独立など、世界史の知識があるとより楽しめる.....と言うよりも、知らないと「スラヴ叙事詩」に描かれている内容がわからないと思うのだが。ミュシャ展にあれだけの人が集まっているのだから、高校世界史の授業ももう少し人気が出るような工夫をしていきたいものである。
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