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パワポで世界史の授業 [授業研究・分析]

 マイクロソフト社のプレゼンテーションソフト、「パワーポイント」(以下パワポ)を使い始めたのは、10年ちょっと前のこと。島根県立松江教育センターでの「授業力向上セミナー」(2007年)とか、九州高等学校歴史教育研究協議会大分大会(2009年)の時にはパワポを使ったプレゼンを行ってきたが、授業で使ったことは全くなかった。NHKの「わくわく授業」収録の時には、「テレビに映るんだから、カッコいい授業をしたい」と思ってパワポ使おうとしたら、NHKのディレクターさんからストップがかかった。現在はどうなっているか知らないが、10年くらい前はパワポ使う場面が番組に映り込むとマイクロソフト社からクレームがきていたらしい。

 今年の九州高等学校歴史教育研究協議会(長崎大会)の全体会で、開催県である長崎県からは、パネルディスカッションの報告が行われた。「歴史教育におけるICT活用について」というテーマのパネルディスカッションである。ディスカッションの前に事前のアンケートもとられているが、集計結果を見る限り「ICT活用の効果は認める」が、「機器の整備や活用スキルの問題から、なかなか使えていない」「あくまで手段であり、本質ではない」という考えが見えてくる。後者の意見に関して言うと、ICTというよりもパソコン関係一般についても言えることかもしれない。柳原伸洋先生は「インターネットと世界史教育は相性がよくない」「多くの教育者は、インターネットを敵視しているきらいがある」と指摘しているが(「インターネット時代と世界史」、勉誠出版『地域から考える世界史』に収録)、さきほどの「ICT機器の活用はあくまで手段であり、本質ではない」という考えに通じるような気がする。

 私自身について言えば、パワポは使ってないが、機器の活用には熱心な部類だと思う。3年生の授業は、プロジェクターが使える教室が空いているときはそちらの教室を使うようにしている。
ブログの過去記事から
「ICTを使った世界史の授業」http://zep.blog.so-net.ne.jp/2014-07-25
「新聞記事を使ったアクティブラーニング:現代社会
http://zep.blog.so-net.ne.jp/2015-07-28

 ICT機器を使った授業を、生徒はどう感じているのだろうか。私が熊本北高校で担任していた3年1組の学級日誌に、男子生徒が以下のような文を書いていた(原文のまま)

平成27年7月31日 雨   今日の世界史は電子黒板を使った授業でした。昨日から楽しみにしていて、その期待を裏切らない性能でただ驚くばかりでした。今日、一部マスコミで騒がれている、教育のデジタル化。ある知識人は「百害あって一利なし」と言っておられました。私は今回の授業のように、先生方のみ使用するのであれば導入してもよいと思います。なぜなら生徒ひとりずつに配ると、必ず機械を無駄に触る者が出てくるからです。パソコン室での授業がよい例でしょう。先生方のみが使用するのであれば上のようなことは起こらないと思います。

 これは夏休みの課外授業の際、浜島書店の『デジタルアカデミア』を使ってみたときの生徒の感想であるが、生徒一般の意見として、地図の拡大縮小や移動方向の図示、美術作品の解説はとてもわかりやすいとのこと。

 現在使っているのは浜島書店の『デジタルアカデミア』だけであり、あくまで「理解を助ける」という目的である。授業そのものをICTで行っているわけではない。授業は穴埋めプリントと板書で行っている。しかし最近は、社会系の授業でパワポを使っている先生も多いようだ。「パワポ世界史」で検索してみると、様々なコンテンツがヒットする。

 私自身は、これまで授業でパワポを使ったことはない。できればやってみたいとは思っているのだが、「スライド作るのが億劫」という実に後ろ向きの理由が、使っていない理由である。一枚のスライドにはいる文字数には限りがある。一時間の授業で必要なスライドの枚数は、いったいどれくらいになるのか。もし挫折して年度途中から板書に逆戻りになったらカッコ悪いし....など様々な不安が頭をよぎる。

 そして今年購入したのが、実教出版の「教育支援デジタルコンテンツ 世界史共通」である。正直、「今の若い先生たちは楽チンでいいね」と皮肉の一つも言いたくなるほどの収録内容であった。これまでも、一問一答や定期考査問題例、白地図ワーク、教科書本文などは各社の教師用ROMに収録されていたが、パワーポイント用スライドを収録した商品は、初めて目にした。「黒板用(背景が文字は白、重要事項の文字は黄色)」と「ノーマル版」の内容が同じスライドが2種類、スライドに対応した穴埋めプリント&解答も収録されている。その他、「各国史プリント」「テーマ史プリント」(いずれも問題形式)など課外授業でも使えるだろう。いずれもWord形式のファイルなので、自分用にカスタマイズできる。スライド中の「Link」をクリックすると画像データに飛び、さらに重要部分は拡大される。例えば「大航海時代」だと、Linkでコロンブスの航路データに飛び、さらに航路部分が拡大されるという流れ。実教さん、勝負に出たな!という感じだが、横綱山川も来年3月にパワポ教材を発売するとのこと。

PP.jpg

メニューはこんな感じ


 先日、「パワーポイントのスライドを使った授業が恐ろしくつまらない理由」という記事[http://blog.share-wis.com/?p=457]を目にしたが、「つまらない理由」は「追体験を発揮しづらい」という指摘だった。この指摘に関して言うと、世界史の場合は空欄とアニメーションを使って十分クリアできるのではないかと思う。3年生から中国史の解説をして欲しいという要望があるので、そこで実教世界史のパワポをテスト使用してみようかと考えている。

 現時点では、浜島の『デジタルアカデミア』が世界史関係ではベストだと思っているが、先日、ある会社から「『デジタルアカデミア』のような資料集ソフトに動画や音声を入れた商品に魅力を感じるか」と尋ねられた。大いに感じる。
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