SSブログ

『山猫』(ルキーノ・ヴィスコンティ監督、1963年、イタリア) [歴史映画]

【映画について】
 自らもイタリアの貴族である巨匠ヴィスコンティが、これまたイタリア貴族であるジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサの小説を映画化した作品。イタリア統一戦争の波が押し寄せるシチリア島の貴族サリーナ公爵を中心に、変化する社会とそれに抗いつつも順応していこうとする貴族の生活を描いた、滅びの美学を余すところなく伝える一大叙事詩である。主演のサリーナ公爵ドン・ファブリツィオ役は、名優バート・ランカスター、彼の甥タンクレディは若き日のアラン・ドロン。他、日本では彼の名前をつけたバイク「ジェンマ」が発売されるほど人気だった、ジュリアーノ・ジェンマも出演。第16回カンヌ国際映画祭(1963年)でパルム・ドールを受賞した。音楽は、『道』をはじめとするフェリーニ作品や、『ゴッドファーザー』を手がけたニーノ・ロータ。
  オリジナルは185分という長さであったため、161分の「英語国際版」が作成され、日本公開時もこの国際版が使用された。その後ヴィスコンティ没後の1981年に、イタリア語オリジナル版が公開された。しかしオリジナルのフィルムは経年劣化を起こしていたため、イタリア政府により修復されることになり、撮影監督ジュゼッペ・ロトゥンノ(フェリーニの『ひまわり』や、『オール・ザット・ジャズ』も手がけた)自らの監修により、40周年を期した『山猫―イタリア語・完全復元版』(187分)が2003年につくられた。そして2010年には、マーティン・スコセッシ監督率いるザ・フィルム・ファンデーションがイタリアのブランドGUCCIの支援のもとリマスタリングを行った「4K修復版」がつくられた。現行ブルーレイはこのマスターと、セイゲン・オノがリマスタリングした音声が使用されているが、音声にはまさかの日本語吹替(71年にテレビ朝日で使用されたもの)を収録。画面の美しさはすばらしく、後半の舞踏会のシーンでは、バート・ランカスターとアラン・ドロンの髭の一本一本や額や頬を流れる汗の粒までハッキリ見える。


【ストーリー】
1860年、イタリア統一戦争の波は、ブルボン家の王が支配するシチリア島(両シチリア王国)にも押し寄せる。そのシチリア島の名門貴族で“山猫”の紋章を持つサリーナ公爵家の当主ドン・ファブリツィオ(バート・ランカスター)は、時代の変革を実感しながらも、これまで通り優雅な生活を送っていた。一方、彼が目をかけていた甥のタンクレディ(アラン・ドロン)はカリバルディの赤シャツ隊に参加し、片目を負傷する。休暇の出たタンクレディは、避暑に向かうサリーナ公爵一家と合流し、そこで新興ブルジョワジーの娘アンジェリカと出会い恋に落ちるのだった。周囲の反対を抑え、若い二人の婚約を後押しするサリーナ公爵。それは公爵家の存続と将来を見据えた上での決断であった。

【見所など】
 いったい制作費はいくらかかったんだろうという豪華な作品。 シチリアの風景は「何かの映画で観た記憶があるな」と思ったら、ケネス・ブラナーの『から騒ぎ』(1993年)だった。ガリバルディをはじめイタリア統一戦争の概略が頭にはいっていないと、意味がわからないかもしれない。授業で紹介したいシーンとしては、①タンクレディがサリーナ公爵に、ガリバルディの革命軍に参加すると告げるシーン(前のシーンがテレビ版ではカットされていたため、一部吹き替えが実際のセリフとあっていない)、②ガリバルディ軍と両シチリア王国軍との戦闘(ガリバルディ軍はみな赤シャツを着用している)。統一イタリア王国への編入を決める国民投票のシーン(教科書などでよくみるガリバルディの肖像画が見える)も面白いが、少々長い。その他気になったシーンがいくつかあった。①ピクニックに行ったとき、公爵一行が食事をしている間、従者たちは馬を引いて歩かせていた理由、②教会で少年が「振り香炉」を使っている、③舞踏会で、女性が白いものを踊る人に投げている理由、といったところ。Wikipediaに出てる「変らずに生きてゆくためには、自分が変らねばならない」というタンクレディの言葉を探したが、見つからなかった。どのシーンで言ったのだろう。
 絢爛豪華な舞踏会の合間、涙目で鏡に映った自分の顔を見るサリーナ公爵の哀愁と、かつて戦友だったガリバルディ軍の兵士の処刑を笑顔で語るタンクレディ(なぜか人相がよくない)。姻戚関係を結んだ新興ブルジョワジーのドン・カロージェロは、スペイン製の豪華な燭台を観て、土地に換算するとどれくらいになるかを話題にする(一方で貴族の家柄にあこがれを持っている)。ラストシーンで、祈りを捧げ、立ち上がって暗い通りに姿を消す公爵。後に残った野良猫は、山猫のその後を暗示するかのよう。バート・ランカスターの名演技が心に残る。



山猫 4K修復版 [Blu-ray]

山猫 4K修復版 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • メディア: Blu-ray



nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:学校

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。