SSブログ

『ルートヴィッヒ』(ルキーノ・ヴィスコンティ監督、1972年、イタリア・フランス・西ドイツ合作) [歴史映画]

【映画について】
 19世紀南ドイツのバイエルン王ルートヴィヒ2世の即位から死までを史実に沿った形で描く歴史大作。ヴィスコンティ作品に見られる絢爛豪華な貴族趣味が最も端的に表現された、耽美的で重厚な作品。オリジナルは4時間もの大作であったが、監督自身の手で3時間に短縮された。劣化したフィルムが修復され、現在はオリジナル版がDVDにも収められている。

【ストーリー】
https://movie.walkerplus.com/mv49045/

【見所など】
 手元にある高校世界史の資料集における「ドイツの統一」の項目を見ると、いずれもルートヴィヒ2世についての記述とノイッシュヴァンシュタイン城の写真が掲載されている(第一学習社の『グローバルワイド』、帝国の『タペストリー』、浜島の『アカデミア』) 。おそらく、ノイッシュヴァンシュタイン城が東京ディズニーランドのシンデレラ城のモデルとなったからだろう。『グローバルワイド』だけルートヴィヒ2世の肖像が掲載されていないが、奇妙なヘアスタイルを含めて、ヘルムート・バーガー演じるルートヴィヒ2世は、現在残されている写真を見ると、実物そっくりである。
 ヴィスコンティ作品では、『山猫』がイタリアの統一をテーマとしており、この『ルートヴィヒ』はドイツの統一がテーマ。ということでこの2本、私の中では同時代のヨーロッパを描いた2本セットの映画である。冒頭ルートヴィヒのバイエルン王戴冠式のシーンでは、プロイセンやオーストリアの大使が訪れていることから、まだ統一前であることがわかり、ローマ教皇が参列していることからは、彼がカトリックであることもわかる。一方彼の母、マリー王太后はプロイセン出身ゆえプロテスタント。普墺戦争のシーンで、「オーストリアは同盟国だが、プロイセンは身内だ」言ってるのはそのため。作品中、ゾフィーに結婚の申し込みをする際、マリー王太后は「自分がプロテスタントだから相手が嫌がるかもしれないので、あなた(カトリックのホフマン神父)も一緒に来てください」と言っているが、ゾフィーもバイエルンの王族出身でカトリック。南ドイツではプロテスタントよりもカトリックが優勢であったことがよくわかる。ビスマルクの文化闘争の背景として使えそう。ゾフィーはルートヴィッヒとの婚約が解消された後、フランス七月王政のルイ=フィリップの孫と結婚した。
 授業で一番使えるのは、使者がビスマルクの意向を伝えにくるシーン。経済的支援とひきかえにドイツ帝国(連邦制国家である)への参加を要求され、苦悩するルートヴィッヒ。オーストリアとプロイセンの戦争など、ドイツ統一のいきさつを知らないと意味がわからないかもしれないが、ここが授業での使いどころという気がする。イタリアやドイツといった国民国家の形成からまだ200年もたっていないし、『山猫』『ルートヴィッヒ』を観る限り、一概に統一賛成が多かったわけではなかったようだ。

【その他】
①ヘルムート=バーガーは、1994年公開の映画『ルードウィッヒ1881』で再びルートヴィッヒ2世を演じた。
 ②ルートヴィッヒがオーストリア皇后エリザベートと久々に再会したとき、彼女は室内で馬に乗っている。もしかすると、オーストリア=ハプスブルク家に伝わる有名なスペイン式馬術(馬のバレエ)の練習中だったのか。『グローバルワイド』と『タペストリー』には、当時ヨーロッパ宮廷で最も美しいと言われたこのエリザベートの肖像画が掲載されているので(『アカデミア』には皇帝夫妻の写真が掲載されている)、作品中エリザベートを演じたロミー=シュナイダー(アラン=ドロンの元妻)を見せるのもいい。Wikipediaのエリザベート(エリーザベト)の項目には、ナポレオン3世妃ウージェニーとの興味深いエピソードが紹介されているが、『タペストリー』にはウージェニーの肖像画も掲載されており、なかなか使える。二人の肖像画を描いたヴィンターハルターは、センター試験や新テストの試行テストに使われたヴィクトリア女王一家の肖像画を描いた宮廷画家である。
 ③エリザベートの夫、オーストリア皇帝フランツ=ヨーゼフ1世については、第一学習社の『グローバルワイド』にエリザベートともに詳しい記述がある。イタリア統一戦争・普墺戦争に連敗、エリザベートやサライェヴォ事件など相次ぐ不幸にもかかわらずセルビアに宣戦して第一次世界大戦を始めた「不死鳥」。シャーロック=ホームズと同時代の彼は、エピソード「ボヘミアの醜聞」が起こった当時(1888年)のボヘミア(ベーメン)王だが、事件当時ヨーゼフ帝はすでに50歳代後半であるため、年齢的には適合しない。


ルートヴィヒ デジタル修復版 [Blu-ray]

ルートヴィヒ デジタル修復版 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • メディア: Blu-ray



ルートヴィヒ デジタル完全修復版 [DVD]

ルートヴィヒ デジタル完全修復版 [DVD]

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • メディア: DVD



nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:学校

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。