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「アメリカ合衆国の発展」の授業 [授業ネタ]

 昨日(2018年1月7日)の新聞に掲載されていた「世界名作味の旅⑩~『大草原の小さな家』のアップルパイ」は、興味深い記事だった。これまで「アップルパイはイギリスのお菓子」というイメージがあったため、アメリカのソウルフード的存在だとは知らなかった。Wikipediaによれば「アップルパイはアメリカを代表するデザートで、「アップルパイのようにアメリカ的だ ('As American as apple pie') 」という慣用句があり、日本人にとっての味噌汁同様に「おふくろの味」を連想させる。」そうだ。
 『マザーグースの絵本Ⅱ~アップルパイは食べないで』(ケイト=グリーナウェイ絵、岸田理生訳、新書館)という本が手元にあるので、「アップルパイ=イギリス」というイメージを勝手に持っていたのだが、私が思い浮かべるアップルパイはアメリカタイプだったようだ。

 19世紀後半のアメリカ合衆国を扱う「アメリカ合衆国の発展」の項目は、色々と触れておきたいことが多くて大変だ。西部への領土的な拡大のプロセスと、南北戦争をへて、19世紀末にはフロンティアが消滅して世界最大の工業国になるまでが骨組みで、これにプラスしていくことになる。例えば「アメリカ合衆国では,19世紀前半に,アメリカ労働総同盟(AFL)が結成された。」(2004年度世界史A追試)とか、「20世紀に、アメリカ労働総同盟が結成された。」(2015年度世界史B本試験)などセンター試験で問われるAFLの結成時期(1886年)については、「アメリカが世界最大の工業国となった時期を考える」ということでおさえることは可能だろう。
 19世紀後半のアメリカでプラスしたいのは、先住民問題とアフリカ系の問題。最近は「インディアン」とか「黒人」という語句を使わなくなってることも切り口としてはいいかも。とはいうものの、体系化してまとめるのは、なかなか難しく感じている(アメリカ出身のALTによれば、「日本の世界史の資料集は、アメリカの高校生が使っている歴史の教科書よりずっと詳しい」そうだ)。
 『タペストリー』(帝国書院)、『グローバルワイド』(浜島書店)、『世界史のミュージアム』(とうほう)など年表にアフリカ系・先住民関連事項を時系列で並べて別枠で組み込んでいる資料集もあり、少し工夫すればうまく構成できるような気もする。『グローバルワイド』も「国民国家アメリカへの統合」という特集ページで、先住民問題と奴隷解放の写真記事が掲載されているが、補足のネタとしては、『ミューアジアム』が、「映画に描かれた先住民と黒人奴隷」というコラムで紹介している『グローリー』と『ダンス・ウィズ・ウルブズ』を使いたいところ。浜島書店の『NEW STAGE』では、以前『ソルジャー・ブルー』が紹介されていたが、授業で使うのは少々難しい気がする[http://zep.blog.so-net.ne.jp/2009-10-20]。私が持っていた『グローリー』(SUPERBIT版)は日本語吹替がはいってない版だったので、最近吹替収録版を購入(中古市場では非常に安価だった)。以前紹介した、山川の『歴史と地理』432号(1991年8月)に掲載されている『グローリー』を用いた授業遊展開例(「歴史を観る-映画を駆使した授業」)が、うまく使えそうだ。

 『大草原の小さな家』に関しては、『タペストリー』と『アカデミア』に紹介されているが、いずれも肯定的なニュアンス。したがって、新聞記事にある「物語の中には、先住民に対する蔑視や偏見がにじんだ表現もある」という視点で、当時の人々に見られた一般的な先住民観を紹介する材料としたい。福音館から発行されている『大草原の小さな家』を読んでみたが、収録されている全26話のうち6つのエピソードが「インディアン」の語句を含むタイトルになっている。巻末に「アメリカ・インディアンのこと」という解説が収録されているが、筆者は故清水知久先生。小学生向けの文章ながら、筆致は鋭い。清水先生の文章の中に、「おかあさんといっしょ」で流れていた「インディアンが通る」という歌について触れてあるが、youtubeで聴いて私も思い出した。


 とはいえ、断罪するだけで終わるのは不十分な気がする。異質なものを否定し排除しようと姿勢は、現在でも見られるのではないか?と問いかける材料にしたい。
 
 年末休み中に読んだ、小田中直樹編『世界史 / 今、ここから』(山川出版社)の終章に以下のような記述があり、とても心に残った。

 好むと好まざるとにかかわらずグルーバル化の波に巻き込まれ、その結果、さまざまな側面で「わたしたち」と異なる「彼ら」と接触し、共存せざるをえない「21世紀の世界の一部としての日本」という時空間に生きる者にとって、何よりも大切なのは「私たちが正しい」という自己万能観でもなく、「彼らが正しい」という劣等感でもなく、さらにいえば「みんな違ってみんないい」(金子みすゞ)という単純な相対主義でもなく、「わたしたち」の常識も「彼ら」の言い分もいったん疑ったうえで、可能な限り適切な根拠と論理に基づいて自分の立場を選び取る、というスタンスである。その際、通常は「彼ら」の言い分を疑うことは簡単だから、まずもって意識的に試みるべきは「わたしたち」の常識を疑うことである。そのために必要な能力こそ、わたしたちが身につけるべき教養の一環をなし、さらにいえばその中核をなす。

 「可能な限り適切な根拠と論理に基づいて自分の立場を選び取る」ために必要な努力を惜しまないようにしたい。



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