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ブレグジットから一カ月 [授業ネタ]

 共通テスト第2日程の世界史Bでは、グーテンホーフ=カレルギーの『汎ヨーロッパ論』が取り上げられた(地図を見たとき東大1992年度第1問を思い出した)。カレルギーのことはウチで使っている第一学習社の資料集『グローバルワイド最新世界史図表』の「戦後の西ヨーロッパ」の項目で取り上げられているが、イギリスのEU離脱が発生したのがちょうど一年前の2020年1月31日、EUとの貿易協定が成立して(移行期間が終了)イギリスがEUから完全に離脱したのがちょうど一カ月前である。このタイミングでカレルギーを出題しようと考えたのであれば、出題者恐るべし。

 本日(1月31日)の新聞(共同記事)では、「英、EU離脱から1カ月」という見出しで、コロナとの二重苦で経済が混乱するイギリスの現状が報告されている。記事では現状のトピックとして、以下の点があげられていた。
【イギリス】
 ・貿易やビジネスに障壁、不満高まる
 ・スコットランドなどで独立機運
 ・「グローバルブリテン」戦略はコロナ禍が足かせに
【EU】
 ・「離脱の悪影響は当然」と英に冷淡
 ・在英代表部(大使館)の格下扱いに激怒
 ・外交・安保協力交渉、英に拒否される

 記事は「欧州の亀裂は広がりつつある」と結ばれているが、スコットランドの独立など英国内でも亀裂は進みつつある。イギリス国内は『歴史地理教育』2018年9月号でディヴィッド・ジョン・コックス氏が「悪循環が続きそうなイギリス」で予想したとおりになっているような気がするが、もう一点、共通テストでカレルギーを取り上げた第1問Bでヨーロッパだけでなくアジアの地図も示されているのを見て思い出したのが、コックス氏の「(イギリスの)ナショナリストたちは都合のよいところしか覚えていない」という批判。戦後イギリスの復興には、植民地出身の人々も貢献してきたという指摘である。
本日(2021年1月31日)のNHK「これでわかった!世界のいま」でもブレグジット後のイギリスの状況として、物流の混乱などの現状がレポートされていた。番組ではイギリス国内の企業、EUの企業、日本の企業の対応が紹介されていたが、経済面が中心であり人々の生活がどうなっているのかがあまり見えてこなかったのは残念であった。イギリスはTPPへの正式参加を表明するそうだが、イギリスがEU脱退を決めた本来の理由を思うと、2018年の上智大学TEAP入試の世界史で指摘されていた、イギリスの対ヨーロッパ政策のゆらぎはなるほどと思わせる。そしてさらに、今回の共通テストで示されたイギリスと西ヨーロッパが別ブロックになっている一方で、ドイツとフランスは同じブロックになっている地図を見ると、カレルギーの慧眼に驚く。
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