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「歴史総合」のサンプル問題 [大学受験]

 武井彩佳先生の『歴史修正主義』(中公新書)を読んでいて、大学入試センターが昨年公表した歴史総合のサンプル問題を思い出した。同書133㌻の「ナショナル・ヒストリーの限界」で指摘されている点は、サンプル問題の最後の問題(第2問・問6)とつながるように感じられる。

 大學入試センターによる「歴史総合」のサンプル問題[https://www.dnc.ac.jp/albums/abm00040337.pdf]はとてもよく出来ている。『学習指導要領解説・地理歴史科編』[https://www.mext.go.jp/content/20211102-mxt_kyoiku02-100002620_03.pdf]の124㌻に示されている「社会的事象の歴史的な見方・考え方」の視点や方法
  ①時期,年代など時系列に関わる視点
  ②展開,変化,継続など諸事象の推移に関わる視点
  ③類似・差異など諸事象の比較に関わる視点
  ④背景,原因,結果,影響,関係性,相互作用など事象相互のつながりに関わる視点
  ⑤現在とのつながり
がしっかりと取り入れられており、 問題をつくった先生方の工夫と熱意=本気度が伝わってくる問題である。

 世界史教師には良問だが、世界史受験生にはキツい問題というのが印象。実際の授業の場面を用いて、資料やデータを読み込んでいく問題は、長い文章が読めない生徒にはキツい。内容も単純に暗記だけでは解けず、センター試験の時には読み飛ばしても大勢に影響がなかった資料文も丹念に読まなければならない。一方で、第1問の問1など中学校時代のベーシックな学習が抜けていたら間違ってしまうような問題もあり、気が抜けない。さらに資料同士の比較検討など、相応の訓練が必要となるので、これまでのセンター試験時代の世界史Aの問題とは、まったくもってレベチである。極めつけは「近代化と私たち」を教育制度で考察する前述の第2問Bでの問6で、メタレベルを問う問題になっている。

 実際の共通テストでは「日本史探究」「世界史探究」「地理総合・公共」との抱き合わせで行われるので、「歴史総合」の分量としては、それぞれサンプル問題通りの10問くらいだろうが、「歴史総合」を含む科目、とりわけ「歴史総合・世界史探究」で受験する生徒は減るような気がする。これまで「世界史Aならなんとか点が取れるかも」だった層が、「歴史総合・世界史探究」で受験することはなくなるだろう。もっとも、もともと世界史Aの共通テスト受験生の数は極めて少なく(昨年度は第一日程で1544人、第二日程で14人)、作問の苦労に見合わないのが実情だったので、現実に即したという見方もできる。

 元日の朝日新聞紙上の岩波書店全面広告[https://www.iwanami.co.jp/news/n45189.html] が話題だが、歴史的な見方考え方はすべての人に大切なことだと思う。それは「歴史総合」の成否にかかっているが.....。

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