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『オフィサー・アンド・スパイ』(ロマン・ポランスキー監督、2019年、フランス・イタリア合作) [歴史映画]

 第三共和政下のフランスで起こったドレフュス事件を、巨匠ロマン・ポランスキーが監督が映画化した作品。全編フランス語。DVD/ブルーレイに日本語吹替は収録されていないが、内田樹氏が字幕の監修を行っている。



日本版公式サイト https://longride.jp/officer-spy/

 ドレフュス有罪の証拠がねつ造されたものであったことを知った、防諜部のピカール中佐が主人公。さまざまな圧力に抗して真実を告発しようとするピカールが、再審にもちこんだものの歯切れの悪い幕引きとなってしまうまでを描いている。

 ドレフュス事件そのものと当時のフランスの社会に対する予備知識がないと楽しめる作品ではない。歴史的に評価が定まった出来事を映画化するのは、なかなか難しいものだ。「オフィサー・アンド・スパイ」という邦題も微妙で、原題の「J'accuse」=「私は弾劾する」でもよかったかもしれない(が、これも微妙である)。ピカールやゾラのキャンペーンによって、次第に世論が二分されていく点をもう少し入れてもよかったのではないか。第一次世界大戦後にパリ講和会議を主催したフランス大統領クレマンソーが、ゾラ達とともにドレフュス擁護側して登場する。『戦場のピアニスト』(第二次世界大戦下のワルシャワ)や、『オリヴァー・ツイスト』(19世紀のロンドン)など当時の再現にこだわるポランスキー監督らしく、19世紀のフランスの再現度は極めて高い。

 ラスト、軍籍に復帰したドレフュスがピカールのもとを訪れ、(ピカールと違って)自分が収監されていた年月が軍籍に加算されていないため、昇進が遅れているので官位を上げて欲しいと申し入れるが、政府高官となったピカールはそれを拒否する。ユダヤ系でホロコーストを生き延びたポランスキー監督の思いが感じられるシーンだが、一方で児童への性的虐待で現在も罪に問われている自分自身を投影しているようにも感じる。



オフィサー・アンド・スパイ Blu-ray

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  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • 発売日: 2022/12/02
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オフィサー・アンド・スパイ DVD

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ガリポリの戦いを描いた映画 [歴史映画]

 世界史の教科書に出てくる第一次世界大戦中の具体的な戦闘は、西部戦線のマルヌと東部戦線のタンネンベルク、あとはペタンとの関係でヴェルダンくらいだが、『世界史としての第一次世界大戦』(宝島社新書)ではガリポリの戦い(1915年)について触れられている。ガリポリの戦いは、当時の英海軍相ウィンストン・チャーチルが立案した連合軍によるトルコ上陸作戦で、死傷者はトルコ軍25万人、英仏軍30万人という大規模な戦闘であった(ヴェルダンのそれはドイツ軍34万人、フランス軍38万人)。このときのイギリス軍には自治領オーストリアとニュージーランドの連合軍(ANZAC)が含まれており、3万4千人の死傷者を出した。前掲書によると、この戦いをきっかけにオーストラリアとニュージーランドでは「国民」意識が高まり、毎年4月25日は「アンザック・デー」というオーストラリアやニュージーランド、その他サモアやトンガなどで国民の祝日となっている(中東に派遣されるANZAC軍団の護衛は、日英同盟によるイギリスの要請を受けて日本海軍の巡洋艦「伊吹」が担当した)。
 
 オーストラリアに留学していた教え子によると「Anzac dayはオーストラリアの祝日の中でもかなり規模が大きいもので、肌感覚ですがQueen birth dayよりも市民の意識のウェイトは高いと思います。私がいたパースでは、パース市内を一望できるキングスパークという場所に戦時中亡くなった方の慰霊碑があるのですが、anzac dayにはそこで一日中イベントが開催されるので、多くの人が集まってました。」ということなので、やはりオーストラリアにとって第一次世界大戦は大きな経験だったと思われる。

 チャーチルは作戦失敗により更迭され、ジョンソン英首相は著書『チャーチル・ファクター』(邦訳はプレジデント社より)の中で、チャートル最大の失敗という評価をしているとのこと。こうした経緯から、オーストラリアではガリポリの戦いやアンザックを題材とした映画がいくつも作られているので、いま日本国内でもDVD等で観ることができる映画を2本紹介したい。

【誓い(1981年)】
 『誓い』はオーストラリア出身のピーター・ウィアー監督の作品で、原題はストレートに『Gallipoli』である。低予算映画ながら予想外の大ヒットをおさめた『マッドマックス』のメル・ギブソンと、オーストラリアの俳優マーク・リーのダブル主演で、ガリポリの戦いに従軍した二人の青年の友情を描いた作品。以下ウィキペディア掲載のストーリー。「1915年、第一次世界大戦下のオーストラリア。 徒競走が得意な二人の青年フランクとアーチーは、志願兵で構成されるイギリスへの援軍アンザック軍団に入隊する。 フランクは歩兵隊、アーチーは騎兵隊に配属されるが、二人はトルコのガリポリで再開し共に塹壕で戦うことになる。 足が速いフランクは伝令係に任命される。 総攻撃が始まる最中、重要な情報の伝令任務を下されたフランクは、味方を救うため激戦地帯を走り抜ける。」日本版DVD裏ジャケットの解説は、第一次世界大戦とクリミア戦争を混同している。

【ディバイナー 戦禍に光を求めて(2014年)】
 『ディバイナー』は、ニュージーランド出身のオスカー俳優ラッセル・クロウが主演・監督した作品。原題「The Water Diviner」は、「水を探す人」の意で、映画は主人公がダウジングで井戸を掘る場所を探すシーンから始まり、後半でも重要なモチーフとなっている。ガリポリの戦いから4年後、帰らぬ3人の息子を探しにオーストラリアからトルコまで赴く主人公が、トルコの人々と心を通わせるストーリーだが、現地ではトルコ語がメインで、イスタンブールの街並みやモスクも美しく、トルコと異文化に対して好意的に描かれている点は好感が持てる(「ガリポリに行く」という主人公に、ホテルの女主人は「チャナッカレに行くの?」と返す)。美人すぎるホテルの未亡人(オルガ・キュリレンコ)とのプラトニックなロマンスは見てて恥ずかしくなるが、重要な役回りをメフレヴィー教団のセマーが担っている点や、ギリシア=トルコ戦争とムスタファ・ケマルなど知識があるとさらに楽しめる点も評価ポイント。しかし一方で、ギリシアをまるで悪者のように描いている点は気になる。逆に言えば、ビザンツ帝国の滅亡からギリシア独立、バルカン戦争から第一次世界大戦といった、ギリシア=トルコ関係を考えるには良いかもしれない。授業では、『ディバイナー』と同じく2014年に制作された『消えた声が、その名を呼ぶ』(第一次世界大戦中に起こったトルコによるアルメニア人ジェノサイドをテーマにした映画~ロード・ムービーとしてはこちらの方がよい)とセットで紹介したい。

IMG_1225.jpg


 『誓い』→『ディバイナー』の順で観ると、ガリポリの戦い前後という流れで楽しめると思う。両映画とも、オーストラリアの過酷な自然の中で暮らす農民達の生活と、赴いたトルコにおける沿岸部での激戦の対比、そして異文化に初めて触れてとまどうヨーロッパ文化圏のオーストラリア人(トルコでのラッセル・クロウ、訓練地エジプトでのメル・ギブソン)という点が共通しており、ギザのピラミッドのスフィンクスの下でラグビーに興じるアンザック兵士たちは、自分たちのアイデンティティを確認しているようにも見える。ピラミッドにはナポレオンのサインがあったが、本当に今も残っているのだろうか。(ピーター・ウィアーは、ラッセル・クロウ主演でナポレオン戦争中の英仏海軍の戦いを描いた『マスター・アンド・コマンダー』を監督している)。




誓い [DVD]

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  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • 発売日: 2007/09/21
  • メディア: DVD



ディバイナー 戦禍に光を求めて [DVD]

ディバイナー 戦禍に光を求めて [DVD]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 2016/06/08
  • メディア: DVD



ディバイナー 戦禍に光を求めて [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 2016/06/08
  • メディア: Blu-ray



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『グレースと公爵』(エリック・ロメール監督、2001年、フランス) [歴史映画]

 大串夏身『DVD映画で楽しむ世界史』(青弓社)の中でフランス革命を描いた映画として紹介されており、観たいと思っていたが現在は絶版。最近DVDを手に入れたが、正直ちょっと「期待はずれ」だったかも。

 スコットランド生まれの女性グレース・エリオット(1754~1823)の自伝的小説『グレースと公爵』を映画化した作品。フランスの王族オルレアン公フィリップ(七月王政のルイ・フィリップの父)の愛人となってフランスに渡り、オルレアン公との関係が終わった後もフランスで暮らした。この映画はフランス革命を王党派だったグレースの目を通して見たもので、「劇薬」としての革命の側面をよく描き出している。数々の危機を知恵と度胸で切り抜けるグレース役のルーシー・ラッセルと、胡散臭いイメージのオルレアン公を好人物に演じたジャン=クロード・ドレフュスの演技が素晴らしい。またくすんだ独特の画面が印象的で、これは忠実に再現した当時のフランスの風景をCGで合成したとのこと。ラストで査問されていたグレースを救うのはロベスピエールで、彼は証拠の手紙を読むために眼鏡をかけるが、マンガ『ナポレオン~獅子の時代』(長谷川哲也)に出てくるロベスピエール風の外見。
 ストーリーがやや難しいため授業で使うには少し厳しいが、フランス革命の「劇薬」的な部分を感じさせるにはよいかもしれない。



グレースと公爵 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • メディア: DVD



グレースと公爵 (集英社文庫)

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  • 作者: グレース エリオット
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2002/10/01
  • メディア: 文庫



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『ルートヴィッヒ』(ルキーノ・ヴィスコンティ監督、1972年、イタリア・フランス・西ドイツ合作) [歴史映画]

【映画について】
 19世紀南ドイツのバイエルン王ルートヴィヒ2世の即位から死までを史実に沿った形で描く歴史大作。ヴィスコンティ作品に見られる絢爛豪華な貴族趣味が最も端的に表現された、耽美的で重厚な作品。オリジナルは4時間もの大作であったが、監督自身の手で3時間に短縮された。劣化したフィルムが修復され、現在はオリジナル版がDVDにも収められている。

【ストーリー】
https://movie.walkerplus.com/mv49045/

【見所など】
 手元にある高校世界史の資料集における「ドイツの統一」の項目を見ると、いずれもルートヴィヒ2世についての記述とノイッシュヴァンシュタイン城の写真が掲載されている(第一学習社の『グローバルワイド』、帝国の『タペストリー』、浜島の『アカデミア』) 。おそらく、ノイッシュヴァンシュタイン城が東京ディズニーランドのシンデレラ城のモデルとなったからだろう。『グローバルワイド』だけルートヴィヒ2世の肖像が掲載されていないが、奇妙なヘアスタイルを含めて、ヘルムート・バーガー演じるルートヴィヒ2世は、現在残されている写真を見ると、実物そっくりである。
 ヴィスコンティ作品では、『山猫』がイタリアの統一をテーマとしており、この『ルートヴィヒ』はドイツの統一がテーマ。ということでこの2本、私の中では同時代のヨーロッパを描いた2本セットの映画である。冒頭ルートヴィヒのバイエルン王戴冠式のシーンでは、プロイセンやオーストリアの大使が訪れていることから、まだ統一前であることがわかり、ローマ教皇が参列していることからは、彼がカトリックであることもわかる。一方彼の母、マリー王太后はプロイセン出身ゆえプロテスタント。普墺戦争のシーンで、「オーストリアは同盟国だが、プロイセンは身内だ」言ってるのはそのため。作品中、ゾフィーに結婚の申し込みをする際、マリー王太后は「自分がプロテスタントだから相手が嫌がるかもしれないので、あなた(カトリックのホフマン神父)も一緒に来てください」と言っているが、ゾフィーもバイエルンの王族出身でカトリック。南ドイツではプロテスタントよりもカトリックが優勢であったことがよくわかる。ビスマルクの文化闘争の背景として使えそう。ゾフィーはルートヴィッヒとの婚約が解消された後、フランス七月王政のルイ=フィリップの孫と結婚した。
 授業で一番使えるのは、使者がビスマルクの意向を伝えにくるシーン。経済的支援とひきかえにドイツ帝国(連邦制国家である)への参加を要求され、苦悩するルートヴィッヒ。オーストリアとプロイセンの戦争など、ドイツ統一のいきさつを知らないと意味がわからないかもしれないが、ここが授業での使いどころという気がする。イタリアやドイツといった国民国家の形成からまだ200年もたっていないし、『山猫』『ルートヴィッヒ』を観る限り、一概に統一賛成が多かったわけではなかったようだ。

【その他】
①ヘルムート=バーガーは、1994年公開の映画『ルードウィッヒ1881』で再びルートヴィッヒ2世を演じた。
 ②ルートヴィッヒがオーストリア皇后エリザベートと久々に再会したとき、彼女は室内で馬に乗っている。もしかすると、オーストリア=ハプスブルク家に伝わる有名なスペイン式馬術(馬のバレエ)の練習中だったのか。『グローバルワイド』と『タペストリー』には、当時ヨーロッパ宮廷で最も美しいと言われたこのエリザベートの肖像画が掲載されているので(『アカデミア』には皇帝夫妻の写真が掲載されている)、作品中エリザベートを演じたロミー=シュナイダー(アラン=ドロンの元妻)を見せるのもいい。Wikipediaのエリザベート(エリーザベト)の項目には、ナポレオン3世妃ウージェニーとの興味深いエピソードが紹介されているが、『タペストリー』にはウージェニーの肖像画も掲載されており、なかなか使える。二人の肖像画を描いたヴィンターハルターは、センター試験や新テストの試行テストに使われたヴィクトリア女王一家の肖像画を描いた宮廷画家である。
 ③エリザベートの夫、オーストリア皇帝フランツ=ヨーゼフ1世については、第一学習社の『グローバルワイド』にエリザベートともに詳しい記述がある。イタリア統一戦争・普墺戦争に連敗、エリザベートやサライェヴォ事件など相次ぐ不幸にもかかわらずセルビアに宣戦して第一次世界大戦を始めた「不死鳥」。シャーロック=ホームズと同時代の彼は、エピソード「ボヘミアの醜聞」が起こった当時(1888年)のボヘミア(ベーメン)王だが、事件当時ヨーゼフ帝はすでに50歳代後半であるため、年齢的には適合しない。


ルートヴィヒ デジタル修復版 [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
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ルートヴィヒ デジタル完全修復版 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • メディア: DVD



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『山猫』(ルキーノ・ヴィスコンティ監督、1963年、イタリア) [歴史映画]

【映画について】
 自らもイタリアの貴族である巨匠ヴィスコンティが、これまたイタリア貴族であるジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサの小説を映画化した作品。イタリア統一戦争の波が押し寄せるシチリア島の貴族サリーナ公爵を中心に、変化する社会とそれに抗いつつも順応していこうとする貴族の生活を描いた、滅びの美学を余すところなく伝える一大叙事詩である。主演のサリーナ公爵ドン・ファブリツィオ役は、名優バート・ランカスター、彼の甥タンクレディは若き日のアラン・ドロン。他、日本では彼の名前をつけたバイク「ジェンマ」が発売されるほど人気だった、ジュリアーノ・ジェンマも出演。第16回カンヌ国際映画祭(1963年)でパルム・ドールを受賞した。音楽は、『道』をはじめとするフェリーニ作品や、『ゴッドファーザー』を手がけたニーノ・ロータ。
  オリジナルは185分という長さであったため、161分の「英語国際版」が作成され、日本公開時もこの国際版が使用された。その後ヴィスコンティ没後の1981年に、イタリア語オリジナル版が公開された。しかしオリジナルのフィルムは経年劣化を起こしていたため、イタリア政府により修復されることになり、撮影監督ジュゼッペ・ロトゥンノ(フェリーニの『ひまわり』や、『オール・ザット・ジャズ』も手がけた)自らの監修により、40周年を期した『山猫―イタリア語・完全復元版』(187分)が2003年につくられた。そして2010年には、マーティン・スコセッシ監督率いるザ・フィルム・ファンデーションがイタリアのブランドGUCCIの支援のもとリマスタリングを行った「4K修復版」がつくられた。現行ブルーレイはこのマスターと、セイゲン・オノがリマスタリングした音声が使用されているが、音声にはまさかの日本語吹替(71年にテレビ朝日で使用されたもの)を収録。画面の美しさはすばらしく、後半の舞踏会のシーンでは、バート・ランカスターとアラン・ドロンの髭の一本一本や額や頬を流れる汗の粒までハッキリ見える。


【ストーリー】
1860年、イタリア統一戦争の波は、ブルボン家の王が支配するシチリア島(両シチリア王国)にも押し寄せる。そのシチリア島の名門貴族で“山猫”の紋章を持つサリーナ公爵家の当主ドン・ファブリツィオ(バート・ランカスター)は、時代の変革を実感しながらも、これまで通り優雅な生活を送っていた。一方、彼が目をかけていた甥のタンクレディ(アラン・ドロン)はカリバルディの赤シャツ隊に参加し、片目を負傷する。休暇の出たタンクレディは、避暑に向かうサリーナ公爵一家と合流し、そこで新興ブルジョワジーの娘アンジェリカと出会い恋に落ちるのだった。周囲の反対を抑え、若い二人の婚約を後押しするサリーナ公爵。それは公爵家の存続と将来を見据えた上での決断であった。

【見所など】
 いったい制作費はいくらかかったんだろうという豪華な作品。 シチリアの風景は「何かの映画で観た記憶があるな」と思ったら、ケネス・ブラナーの『から騒ぎ』(1993年)だった。ガリバルディをはじめイタリア統一戦争の概略が頭にはいっていないと、意味がわからないかもしれない。授業で紹介したいシーンとしては、①タンクレディがサリーナ公爵に、ガリバルディの革命軍に参加すると告げるシーン(前のシーンがテレビ版ではカットされていたため、一部吹き替えが実際のセリフとあっていない)、②ガリバルディ軍と両シチリア王国軍との戦闘(ガリバルディ軍はみな赤シャツを着用している)。統一イタリア王国への編入を決める国民投票のシーン(教科書などでよくみるガリバルディの肖像画が見える)も面白いが、少々長い。その他気になったシーンがいくつかあった。①ピクニックに行ったとき、公爵一行が食事をしている間、従者たちは馬を引いて歩かせていた理由、②教会で少年が「振り香炉」を使っている、③舞踏会で、女性が白いものを踊る人に投げている理由、といったところ。Wikipediaに出てる「変らずに生きてゆくためには、自分が変らねばならない」というタンクレディの言葉を探したが、見つからなかった。どのシーンで言ったのだろう。
 絢爛豪華な舞踏会の合間、涙目で鏡に映った自分の顔を見るサリーナ公爵の哀愁と、かつて戦友だったガリバルディ軍の兵士の処刑を笑顔で語るタンクレディ(なぜか人相がよくない)。姻戚関係を結んだ新興ブルジョワジーのドン・カロージェロは、スペイン製の豪華な燭台を観て、土地に換算するとどれくらいになるかを話題にする(一方で貴族の家柄にあこがれを持っている)。ラストシーンで、祈りを捧げ、立ち上がって暗い通りに姿を消す公爵。後に残った野良猫は、山猫のその後を暗示するかのよう。バート・ランカスターの名演技が心に残る。



山猫 4K修復版 [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • メディア: Blu-ray



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勝利への脱出(ジョン・ヒューストン、1981年、アメリカ) [歴史映画]

【概要】
 第二次世界大戦中にドイツ占領地域で行われた、連合軍の捕虜とドイツ軍とのサッカーの試合を題材とした映画。主演はシルベスター・スタローンで、米軍の捕虜で元アメリカン・フットボールの選手という設定である。サッカーの王様ペレを始め、1966年W杯優勝イングランドの主将でMVPとなったボビー・ムーア、78年W杯優勝アルゼンチンの中心選手だったオズワルド・アルディレス(元清水エスパルス、東京ヴェルディ監督)ら往年の名選手が出演している。

【ストーリー】
 第二次世界大戦中のドイツ軍の捕虜収容所で、サッカーを楽しんでいた連合軍捕虜を見ていたドイツ軍のフォン・シュタイナー少佐は、自分自身が元サッカー選手だったこともあり、捕虜チームとドイツチームとの試合を思いつく。話は大きくなり、全連合軍捕虜VSドイツナショナルチームとの試合としてパリで行われることになった。試合の裏側ではレジスタンスの手引きにより、大規模な脱走作戦が進んでいた。

【見所など】
 2018 FIFAワールドカップ(ロシア大会)の組み合わせで、日本はグループHとなったが、同組のポーランドは2017年11月のFIFAランキングで7位の強豪(同ランキングで日本は55位)。人口が4千万人に満たない国ながら、ショパン、コペルニクス、キュリー夫人などの人物を輩出したこの国は、典型的な「大国に囲まれた小国の悲劇」の国でもある。
 サッカーW杯で日本がポーランドと同組になったというニュースを見て思い出したのが、この映画だった。B級映画と侮るなかれ、なかなか面白い映画である。Wikipediaによれば、実際に第二次世界大戦中実際に行われた試合「The Death Match」をモデルにしているという。


 連合軍捕虜チームのリーダーである元イングランドのサッカー選手コルビー大尉は、チーム編成のためにナチス側に「ポーランドとチェコの選手も探して欲しい」と要求するが、ナチス側は渋る。東欧出身の捕虜は強制労働の収容所に送られていたのである。連れてこられた5人の選手を見たコルビーは、彼らの痛々しい姿を見て愕然とする。現行DVDの字幕では「東欧の選手は?」となっているが、実際は「What about the Poles and the Czechs?」と言っている。私は高校生の頃この映画をテレビで見たが、そのときは「ポーランド」と言っていた記憶がある。チェコ(映画の時代はチェコスロヴァキア)は、2017年のFIFAランキングでは48位だが、2006年には2位まであがった東欧の強豪である。



 
勝利への脱出 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
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『ショア』(クロード・ランズマン監督、1985年、フランス) [歴史映画]

 クロード・ランズマン監督の『ショア(SHOAH)』は、ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)をテーマにしたインタビュー映画である。強制収容所から奇跡的に生還したユダヤ人、彼らを日常的に目撃していたポーランド人、そしてユダヤ人を死に追いやる側だった元ナチスのドイツ人たちといった、生き残った人びとへのインタビューから構成されている。タイトルの「ショア(ショアー)」は、「絶滅」を意味するヘブライ語で、ランズマン監督はいずれの国においても公開の際はこのタイトルにするよう強く主張したという。確かに、祝祭的なニュアンスを持つ「ホロコースト」よりも、直接的でふさわしいように思われる。

 本国フランスで公開されたのは1985年で、日本ではそれからちょうど10年後の1995年に日仏学院で初めて公開され、1997年には商業上映された。上映時間9時間30分。ブルーレイ・ディスクは3枚組である。撮影フィルムは350時間に及んだという。

 私はこの映画のことを知ったのは、小川幸司先生の『世界史との対話』であった。2012年当時『ショア』の日本版DVDは入手困難で、中古であっても高額で取引されていた。テキスト版(日本語)を購入して読んでみたが、読者のイマジネーションにすべてをゆだねるという点においてひとつの作品であり、訳者による解説も読み応えがある。しかし、映画版の衝撃はテキスト版をはるかに凌駕していた。

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 ポーランドのヘウムノ村で歌っていた歌、ヘウムノ村からの生還者が語りながら見せる微笑み、インタビューを取り巻くポーランド人たちが見せる笑顔.....中でも印象深いのはトレブリンカ駅における機関車のエピソード(日本語版テキストのカバー写真と、DVDボックスのケース写真に使われている)だった。言葉はないのでテキスト版本文に記述はないが、解説で紹介されている。「ガフコフスキは、思わず手を喉にあて、「首を切られるぞ」という合図をする」。その合図は3回。テキスト版を読んでから映画を見ると、より理解が深まると思う。

 9時間半という長さにもかかわらず、思わず見入ってしまうのは、場面の変わりが早いこと、(撮影当時の)ヨーロッパの風景の寒い美しさ、そしてランズマン監督の容赦のなさ。元SS隊員に対して容赦ないのはともかく、彼は生き残ったユダヤ人に対しても容赦しない。とりわけ印象深いのが、トレブリンカ収容所でユダヤ人女性の髪を切る仕事に従事していた男性へのインタビューだった。まるで無理矢理当時に引き戻すかのように、理髪師として働く彼に、ランズマン監督は客の髪を切らせながらインタビューする。彼が悲しみで沈黙してる間もカメラを回し、さらに「さあ、話して」「話すんだ」と要求するランズマン監督の姿勢には執念を感じる。私にはとても真似できない。
 この床屋の男性のエピソードは、ユベール・ティゾン「フランスでショアーを教えること」(『歴史地理教育』2017年3月増刊号「文学・絵画・映画で学ぶアジア太平洋戦争」)の中で、「クロード・ランズマン監督の『ショアー』に出てくる理髪師の証言は、シークエンスとして厳しすぎる。流す映像は13分を超えるべきではないだろう。」と触れられている。約20分である。
 
 
 ランズマンがインタビューの最後で語っている「私はすべてを語るべきではなく、人々が自らに問いかけるべきなのだと思ったのです」という言葉が心に残っている(『現代思想』1995年7月号)。主体的、対話的そして深く歴史と関わるためには、ランズマン監督が「いったい何があったのだろう」と疑問を持ったように、過去へ主体的に問いかける(疑問をもつ)ことから始めなければならないように思われる。


 私が購入したのは、ブルーレイのボックスセット『クロード・ランズマン決定版BOX』。セットの内容は以下の通り。

①「SHOAH ショア」ディスク1~3
②「ソビブル、1943年10月14日午後4時」ディスク4
「ショア」の後半で語られる、ソビブル収容所におけるユダヤ人による武装蜂起の計画と挫折。
③「不正義の果て」ディスク5
アドルフ・アイヒマンが大戦中、世界を欺く為に設立した「模範収容所」テレージエンシュタットの真実を、同収容所の生還者の証言で明らかにした作品。




クロード・ランズマン決定版BOX [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • メディア: Blu-ray



ショア [DVD]

ショア [DVD]

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • メディア: DVD



SHOAH ショア(デジタルリマスター版) [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • メディア: Blu-ray



SHOAH ショア(デジタルリマスター版) [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • メディア: DVD



ショアー

ショアー

  • 作者: クロード ランズマン
  • 出版社/メーカー: 作品社
  • 発売日: 1995/06
  • メディア: 単行本



『ショアー』の衝撃

『ショアー』の衝撃

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 未来社
  • 発売日: 1995/06/01
  • メディア: 単行本



声の回帰―映画『ショアー』と「証言」の時代 (批評空間叢書)

声の回帰―映画『ショアー』と「証言」の時代 (批評空間叢書)

  • 作者: ショシャナ フェルマン
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 1995/09
  • メディア: 単行本



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『クロムウェル』(ケン・ヒューズ監督、1970年、イギリス) [歴史映画]

 たまたまヤフオクで見つけて購入したこの映画、意外な当たり。クロムウェル役は故リチャード・ハリス、一方処刑されるチャールズ1世は故アレック・ギネスという豪華な組み合わせ。リチャード・ハリスは『グラディエーター』(2000年)でマルクス・アウレリウス・アントニヌス帝を、また『ハリー・ポッター』シリーズの初期2作ではダンブルドア校長を演じた俳優であり、アレック・ギネスは『スター・ウォーズ』のオビ・ワン=ケノービ。つまり「魔法学校の校長にして哲人皇帝と、ジェダイ・マスターが対峙する」という、なんともマニア受けする映画だ。
 チャールズ1世の甥でルパートという人物が出てくる。演じているのは、4代目007ジェームズ・ボンドのティモシー・ダルトンで、このルパートがけっこう活躍するので調べてみたところ、なかなか興味深い人物である。彼は映画の中で「パラタイン伯」と呼ばれているが、Palatinateはドイツのプファルツ(ファルツ)のこと。母親はチャールズ1世の姉エリザベスで、父親がプファルツ選帝侯であった。ルパートの妹ゾフィーはハノーヴァー選帝侯妃となり、のちのイギリス・ハノーヴァー朝初代ジョージ1世を生むことから、ルパートはジョージ1世の伯父という関係になる。

 クロムウェルの苦悩する部分が強調されており、かなり好意的に描かれているが、一方でチャールズ1世も、処刑の際の堂々とした態度などこちらも好意的。処刑のシーンは、山川出版社の『世界史写真集』とほぼ同じなので、この部分を授業では使った。
 一番の見所は、エッジヒルの戦い(映画中では議会側敗北として描かれているが、実際は引き分け)→クロムウェルによる鉄騎隊創設→ネーズビーの戦いという流れで描かれてる迫力ある戦闘シーン。同じく17世紀の三十年戦争を描いた『アラトリステ』における戦闘シーンを大きく凌ぐスケール。『アラトリステ』の三十年戦同様、長槍(pike)の部隊が主力である。
 17世紀の議会の様子も、なかなか興味深い。ヨアン・グリフィス&ベネディクト・カンパーバッチの『アメイジング・グレイス』で見られる18世紀末のイギリス議会では、多くの議員が銀色の髪のカツラを着用しているが、『クロムウェル』で描かれている17世紀のイギリス議会では、議員の多くが黒い帽子と黒いコートを着用してる。

 古い映画なので、日本語吹き替えと英語字幕がないのが残念。



クロムウェル [DVD]

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  • 出版社/メーカー: Happinet
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『アラトリステ』(アグスティン・ディアス・ヤネス監督、2006年、スペイン) [歴史映画]

【映画について】
アルトゥーロ・ペレス=レベルテによるスペインのベストセラー小説『アラトリステ』 (西: El capitán Alatriste) シリーズを原作とする初の映画化作品である。監督はアグスティン・ディアス・ヤネス。ストーリーは、映画化開始の時点で発表済みであった原作5作品の内容に加えて未発表部分までも網羅し、孤高の剣士アラトリステの20年余に及ぶ後半生を1本の映画に凝縮して描く決定版として制作された。アラトリステ役にはヴィゴ・モーテンセンを起用し、製作費にはスペイン映画史上の最高額となる2,400万ユーロが投じられた。スペインの映画賞、第21回ゴヤ賞(2007年)では、製作監督賞、美術賞、衣装デザイン賞の3部門を受賞。(Wikipediaより)

【ストーリー】
 17世紀初頭のスペインは欧州の強国であったが、アルマダの海戦で大英帝国軍に敗れてから、勢力は衰退しつつあった。国王フェリペ4世は寵臣オリバーレス伯爵(ハヴィエル・カマラ)に国政を任せていたが、国内外で様々な問題が持ち上がっていた。1622年、マドリード最強の剣客ディエゴ・アラトリステ(ヴィゴ・モーテンセン)は国王の傭兵としてフランドルの戦場に赴き、友人のグアダルメディーナ伯爵(エドゥアルド・ノリエガ)の命を救う。1年後、マドリードに戻ったアラトリステの元に、英国から来る2人の異端者を殺せと言う依頼が舞い込む。それは英国皇太子チャールズを抹殺するため、異端審問官ボカネグラと国王秘書官アルケサルが仕掛けた謀略だった。アラトリステは不穏な空気に気づき、寸前で暗殺を思い止まる。この事件からアラトリステは、アルケサルとその部下の殺し屋マラテスタに狙われ、オリバーレス伯爵から監視されるようになる。アラトリステは、フランドルで戦死した仲間の息子イニゴを引き取って育てていた。ある日イニゴはアンヘリカという美少女と出会い、恋心を抱く。アンヘリカはアルケサルの姪で、アラトリステの失脚を狙うため、イニゴを誘惑するよう差し向けられていたのだ。一方アラトリステは、旧知の女優で人妻のマリア(アリアドナ・ヒル)と3年ぶりに再会し、愛を交わす。1625年、アラトリステは、オランダ軍の要塞都市ブレダを陥落させる戦いで活躍する。10年後、グアダルメディーナ伯爵の指令で国王の金塊を奪還するため、アラトリステはフランドル船に乗り込む。そこで殺し屋マラテスタと対決し、返り討ちにする。アラトリステは、夫が余命幾ばくもないマリアと人生を歩む決意し、愛の証として美しい首飾りを贈ろうとする。成長したイニゴ(ウナクス・ウガルデ)はアンヘリカ(エレナ・アナヤ)と再会し、イタリアへの駆け落ちを誓う。しかしアラトリステとイニゴの愛は宮廷の思惑によって引き裂かれ、彼らは壮絶な運命を辿っていく。
(KINENOTE http://www.kinenote.com/ より)

【見所など】
 ベラスケス関係のネタが出てくる。命拾いをしたグアダルメディーナ伯爵が、アラトリステを自邸に呼んで密談するシーンで、新しい宮廷画家としてベラスケスの絵「セビリアの水売り」を見せる。また、山川の『世界史写真集』収録の「ブレダの開城」のもととなったブレダ包囲戦の模様は映画中でも描かれており、ベラスケスの絵も登場する。ブレダ攻城戦では、この映画で描かれているとおり、地下の坑道を使った戦いも行われた。国王フェリペ4世は、ベラスケスの「女官たち」で、妃とともに鏡の中に描かれている。
三十年戦争の戦争シーンも興味深い。映画のクライマックスはラクロワの戦い(1643年)で、史実でも数に勝るスペイン軍がフランス軍に敗れている。山川の『世界史写真集』収録の三十年戦争の図で、まるで古代ギリシアのファランクスのような陣形をとっている点にどうも違和感があったのだが、この映画でスペイン軍が「テルシオ(Tercio:スペイン方陣)」という方陣を組んでフランス竜騎兵に対応するシーンをみて、なるほどこういうものかと納得。三十年戦争へのフランス参戦に衝撃を受けた宰相オリバーレス伯爵が、リシュリューとの交渉を画策する場面も出てくる。
 映画全体を、「17世紀の一傭兵の生涯」という視点で見ると、面白いと思う。

【字幕における誤訳問題】
 詳細はこちらのエントリーを参照。
   http://grandesas.exblog.jp/11870355/
 上で引用したKINENOTEのストーリーは、「誤訳版」によっている。映画を観ないでこのブログ記事だけ読むと、たいした違いではないように思われるが、「結婚を決意した」という理解で映画を観ていくと、後半アラトリステが病床のマリアを見舞うシーンがまったく意味不明になってしまう。




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『もうひとりのシェイクスピア』(ローランド・エメリッヒ監督、2011年、英独合作) [歴史映画]

 2年生の世界史の授業は、いま絶対王政の単元。ウチが使っている資料集『グローバルワイド』(第一学習社)の巻頭には映画とマンガの特集があり、ケイト・ブランシェットの『エリザベス』が紹介されているので、この映画を使った授業を画策中。

 今日は代休だったので、授業で使えそうな部分はないか....とシェイクスピアをネタにした映画2本『恋に落ちたシェイクスピア』と『もうひとりのシェイクスピア』のDVD(英語の先生から貸してもらった)を見たのだが、いずれも面白い作品だった。
 『恋に落ちた....』でシェークスピアを演じるのは、ケイト版『エリザベス』の1作目で女王の相手役ロバート・ダドリーを演じていたジョセフ・ファインズ。エリザベス女王がジュディ・デンチで、ウェセックス伯がコリン・ファースなんだけど、ジュディ・デンチはともかく、コリン・ファースは「無駄な大物起用」という気がしないでもない。ネズミと戯れるジョン・ウェブスターが面白い。

 一方『もうひとりのシェイクスピア』は、シェイクスピア別人説をベースにした歴史ミステリーの大傑作。監督が意外な?SFパニック映画の巨匠ローランド・エメリッヒ。設定が演劇仕立てで、主人公でシェークスピア作品の真の作者オックスフォード伯エドワードを演じていたリース・エヴァンスは、『エリザベス:ゴールデン・エイジ』で女王暗殺のためにスペインのフェリペ2世が派遣したロバート・レストンを演じていた。エリザベス女王を演じていたヴァネッサ・レッドグレイヴは、同じく女王の若い頃を演じていたジョエリー・リチャードソンの実母。雰囲気似てる...と思ったら親子とは!CGで グローブ座の様子を再現してる点は、さすがSF映画の巨匠。演劇のシーンも、「当時はおそらくこんな感じだったんだろうな」と思わせる。ところどころにシェイクスピア好きにはニヤリのシーンもあり(若きオックスフォード伯が、義父ウィリアム・セシルにより使わされた監視役を殺すシーンが、『ハムレット』でポローニアスを殺してしまうシーンにそっくり)。シェークスピアが自分の紋章(coat of arms)を見せびらかすシーンでは、彼の実際の紋章(シェースピアのスピア=槍を使っている)が出てくるが、モットーの“Non sanz droict”(not without right:権利なからざるべし~古フランス語)を読めないのが面白い。。謎解き部分もかなり面白いが、ある程度歴史的な背景を理解していないと、回想シーンがたびたび織り込まれることも相まって、ストーリーを追うのは難しいように思われる。

  公式サイト http://www.phantom-film.jp/library/site/shakespeare-movie/intro.html


 両作品に共通する登場人物の一人が、エリザベス時代を代表するクリストファー・マーロウ。彼の死は謀殺という見方が一般的であり、それぞれの作品でどのように扱われているか比べてみるのも面白い。シェークスピアは俳優として、ベン・ジョンソンンの戯曲『十人十色』(1598年グローブ座初演)に出演していたとされる。



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