SSブログ

『JSA』(パク・チャヌク監督、2000年、韓国) [歴史映画]

 題名のJSAとはJoint Security Area(共同警備区域)の略で、南北朝鮮の休戦ライン上で唯一両国が会談を行う場所。南北朝鮮の代表が会談を行う場所を一般に板門店と呼んでいますが、正式にはJSAと呼ぶそうです。

 この映画『JSA』は、朝鮮半島の南北分断という重いテーマを、サスペンス/ミステリータッチで描いた作品。エンターティメント性も高く、1時間50分というあまり長くはない作品ですが見応えのある映画です。北朝鮮兵士には『シュリ』のソン・ガンホ、彼と心を通わす韓国軍兵士には韓流四天王の一人イ・ビョンホン、そして中立国監視委員会から派遣され、事件の真相を追求する韓国系スイス人兵士には『チャングム』のイ・ヨンエという韓国を代表するスターたちが出演しています。

 興味深いのは、朝鮮戦争で捕虜になった北朝鮮兵士には2グループあったという話。1つは北朝鮮政府に忠誠を誓ったグループで、もう一つは無理矢理北朝鮮軍に入れられた人々のグループ。イ・ヨンエの父はどちらにも属さず南米に渡ったという設定です。

 写真で見る板門店と、この映画に出てくる板門店はほとんど同じ。よくできたセットです。

 帝国書院の教科書『世界史A』の最後のページにも紹介されている映画です。


 シネマコリア http://cinemakorea.org/korean_movie/movie/jsa.htm





JSA [DVD]

JSA [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東芝デジタルフロンティア
  • メディア: DVD



JSA [DVD]

JSA [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東芝デジタルフロンティア
  • メディア: DVD






nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

『マイケル・コリンズ』(ニール・ジョーダン監督、1996年、イギリス・アメリカ・アイルランド合作) [歴史映画]

 独特のゲリラ作戦によってイギリスの支配に抵抗した、アイルランド独立運動の指導者マイケル・コリンズを描いた作品。監督は『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のニール・ジョーダン、主人公マイケル・コリンズは『シンドラーのリスト』のリーアム・ニーソン(『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』のクワイ=ガン・ジン、『キングダム・オブ・ヘブン』ではオーランド・ブルームの父イベリン卿で重厚な役を演じた)、マイケルと対立するエイモン・デ・ヴァレラはアラン・リックマン(ハリー・ポッター・シリーズのスネイプ先生~ダイ・ハード・シリーズの1作目ではビルを占拠したグループのリーダーだった)。また、デ・ヴァレラにマイケル来訪を告げる少年は、無名時代のジョナサン・リース=マイヤーズ。監督以下4人ともアイルランド系で、ジョナサンは舞台となったコークの出身です。

映画の概要(ストーリー、現実との相違点など)はWikipediaを参照


 教科書でには「アイルランドは、1922年、北部のアルスターをのぞいてアイルランド自由国として自治領となった。」とわずか1行半の記述ですが、このとき結ばれた英愛条約をめぐってシン・フェイン党とアイルランド共和軍(IRA)は分裂、アイルランドは事実上の内戦に突入しました。条約締結を推進したマイケルらに対し、完全独立を主張する反対派の中心は、かつての盟友デ・ヴァレラ。苦悩するマイケルは、内戦終結をめざしてデ・ヴァレラ派との話し合いに向かう途中、反対派の襲撃を受けて非業の死をとげてしまいます。享年31歳。

 豪華なキャストで重厚なストーリーを語る作品で、私は大傑作だと思います。シネイド・オコナー(彼女もアイリッシュ)が歌うトラッドもすばらしい。U2の「ブラディ・サンデー」や、シンプル・マインズの「ベルファスト・チャイルド」などが思い出されます。そういえば、ロックオン・ストラトスもアイルランド出身でしたね。

  
映画「マイケル・コリンズ」のダブリン歴史名所:http://www.inj.or.jp/seanachai/experience/06mcollins.html




マイケル・コリンズ 特別版 [DVD]

マイケル・コリンズ 特別版 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

『ザ・ハリケーン』(ノーマン・ジュイソン監督、1999年、アメリカ) [歴史映画]

映画のストーリー(キネ旬DB) http://www.kinejun.jp/cinema/%E3%82%B6%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%AA%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%B3

 アメリカで起こった冤罪事件であるルービン・カーター事件を題材に、ハリケーンことルービン・カーターの半生を描いた作品。エンターティメント性が低く、とくに後半は淡々と進む印象が強いため地味な印象を受ける作品です。しかしながら、「正義とは何か」「人間の尊厳とは何か」を問いかけるすばらしい人間ドラマだと思います。映画と事実は異なるという点もいくつかあるようですが(http://graphicwitness.com/carter/#moviegraphics)、映画である以上100%事実ということがありえないのはわかりきったこと。

 見所はデンゼル・ワシントンの演技。ボクサー時代は野性味あふれ、投獄後は年齢を重ねてからは哲学者という演技力には舌を巻くばかりです。とくにラストで連邦裁判所での休廷時、レズラに語るシーンは感動的でした。
IMG_2812.jpg

 ボブ・ディランのアルバム『欲望』のオ^プニング・ナンバー「ハリケーン」は、この映画の主人公ルーブン・"ハリケーン"・カーターのことを歌った曲。映画の中にも、ボブ・ディランがこの曲を歌うシーンが出てきます。

 明日から2日間、福岡方面の高校を見学に行ってきます。訪問校では、使っている教科書や資料集、課外のテキストなどを尋ねてきたいのですが、カリキュラムをどうするかということも。九州大学法学部が地歴2科目を課すことの影響は?


 
ザ・ハリケーン [DVD]

ザ・ハリケーン [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東宝ビデオ
  • メディア: DVD



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

『ガンジー』(1982年、イギリス・インド合作、リチャード・アッテンボロー監督) [歴史映画]

 子供の頃、『ゴールデン洋画劇場』などで何回も見たスティーヴ・マックィーンの『大脱走』。その『大脱走』でビッグXを演じていたのが、この作品の監督であるリチャード・アッテンボロー。3時間以上ある長い作品で、途中で休憩時間がはいりますが、アカデミー賞では作品賞をはじめ、監督賞・主演男優賞・脚本賞・撮影賞・美術監督・装置賞・衣装デザイン賞・編集賞と9部門を受賞した名作。後半でガンジーを取材する女性カメラマン、マーガレット・バーク=ホワイトを演じるのは『ソルジャー・ブルー』のキャンディス・バーゲン。

 第一次世界大戦後のローラット法とアムリットサル事件、塩の行進、ジンナーとネルーそしてガンジー三者の関係(インドとパキスタンの分離)、そしてイギリスの産業革命がインドに与えた影響、さらにシク教とゴールデン・テンプルなど教科書的な知識で十分なので、予備知識を持って見てほしい映画です。

 映画でもっとも驚いたのは、主演のベン・キングズレー(元シェークスピア劇の舞台俳優)が「ガンジーの復活」といえるような迫真の演技。彼はこの作品でアカデミー賞の主演男優賞を受賞していますが、まったくふさわしい演技です。DVDに収録されているインタビューで、「当時の映像を見て役作りをした」と語っていますが、同じくDVDに収録されている当時のニュース映像を見ても本当によく似ています。私の中ではデンゼル・ワシントンのマルコムXと並ぶ「なりきり演技」のベストです。映画の中で、法廷にガンジーがはいってくると、裁判長以下傍聴者まで全員が起立してガンジーを迎えるシーンがありますが、本物のガンジーが入廷したかのようでした。

 映画でも示されていますが、ガンジーの行動が大きな影響を及ぼしたのは、映像メディアの発達が大きく寄与しています。2003年の東大入試問題・第1問

「 私たちは、情報革命の時代に生きており、世界の一体化は、ますます急速に進行している。人や物がひんぱんに往きかうだけでなく、情報はほとんど瞬時に全世界へ伝えられる。この背後には、運輸・通信技術の飛躍的な進歩があると言えよう。  歴史を振り返ると、運輸・通信手段の新展開が、大きな役割を果たした例は少なくない。特に、19世紀半ばから20世紀初頭にかけて、有線・無線の電信、電話、写真機、映画などの実用化がもたらされ、視聴覚メディアの革命も起こった。またこれらの技術革新は、欧米諸国がアジア・アフリカに侵略の手を伸ばしていく背景としても注目される。例えばロイター通信社は、世界の情報をイギリスに集め、大英帝国の海外発展を支えることになった。一方で、世界中で共有される情報や、交通手段の発展によって加速された人の移動は、各地の民族意識を刺激する要因ともなった。  運輸・通信手段の発展が、アジア・アフリカの植民地化をうながし、各地の民族意識を高めたことについて、下記の9つの語句を必ず1回は用いながら、解答欄(イ)を用いて17行以内で論述しなさい。   スエズ運河  汽船  バグダード鉄道  モールス信号  マルコーニ   義和団  日露戦争  イラン立憲革命  ガンディー」

で、指定語句に「ガンディー」がはいっている理由は、この映画を見るとよくわかります。

 一般に「非暴力・不服従運動」といわれるサッティヤーグラハが山川の『詳説世界史』で「非協力運動」ど表記されていることに違和感を感じていたのですが、この映画を見て、受け身のイメージを与える「非暴力・不服従運動」より、抵抗のニュアンスが強い「非協力運動」の方がよいようにも思えました。







 
ガンジー コレクターズ・エディション [DVD]

ガンジー コレクターズ・エディション [DVD]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • メディア: DVD



ガンジー (2枚組) [Blu-ray]

ガンジー (2枚組) [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • メディア: Blu-ray



nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

『ソルジャー・ブルー』(1970年、アメリカ、ラルフ・ネルソン監督) [歴史映画]

ソルジャー・ブルー.jpg

  1864年11月29日にアメリカのコロラド地方で起こったインディアン虐殺事件、「サンド・クリークの虐殺」を題材とした映画。私がこの映画のことを知ったのは姜信子さんが『安住しない私たちの文化』(晶文社)の中で触れておられたからですが、浜島書店の世界史資料集に紹介してあるので、ご存じの方も多いことでしょう。

 ジョン・ウェインが主演した『駅馬車』(ジョン・フォード監督、1939年)のように、「正義の白人騎兵隊 VS 野蛮な悪のインディアン」という西部劇のイメージを一変させた作品です。この映画は、1968年に起こったベトナム戦争でのソンミ村虐殺事件の婉曲的な批判であり、公開当時本国では上映自粛の動きがあったといいます。映画ラストの虐殺シーンは猟奇的とも言える、スプラッタームービー顔負けの残酷シーンの連続で、現在だとR指定確実。学校で見せるのは無理でしょう。私は映画のパンフレットを2冊買って、1冊は自分用、もう1冊は生徒の回覧用にしています。買った2冊のうち1冊には、前の持ち主の方がはさんでおいたのか、チケットの半券がはさまっていました。550円。残念ながら、日付・館名はなくなっています。「日本政府」と書いてあるのは、なぜでしょう。


ticket.jpg


 これまで長らくDVD化されないままで、一時はレンタル落ちの中古VHSでも結構な値段がついていたのですが、 今年ようやく日本でもDVD化され、手軽に見ることができるようになりました。


【Movie Walker の映画紹介】 http://movie.walkerplus.com/mv5321/
nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

『レッドクリフ Part1 & 2』(ジョン・ウー監督、2008-2009年、中国) [歴史映画]

レッドクリフ.jpg


 話題となった『レッドクリフ』を「PartI&II スペシャル・ツインパック」のDVDで購入(子どもたちは劇場に見に行ったものの、私は一緒に行けなかったので)。特典は武将キューピー11体セットです。大スケールのエンターティメント作品として十分楽しめる作品でした。「莫大な制作費をかけた大作」「配給がエイベックス」という「売れ線狙いが感じられる作品」ということで、ケチをつけたくなることもあるでしょうが、まぁいいじゃないですか。素直に楽しみましょうよ。

 Part1では阿斗を助ける趙雲の活躍、Part2では大スケールの戦闘シーンと周瑜の智将ぶりが印象的。ジョン・ウー監督お約束の、白い鳩や「向かい合う2人」をはじめ、スローモーションを多様したアクションも多用されています。周瑜を演じたのはトニー・レオンですが、今ひとつ影が薄かった『英雄 HERO』の残剣よりも、知的で人間味あふれるこの作品の演技は光っています。ミステリアスで何考えているかよく分からない孔明より、見ていて感情移入できますね。口の端を上げて微笑む笑顔がいい!所々で感じられるユーモラスな描写も、イイ感じでした。脇役ながら、魏軍の実直な兵士叔財も魅力的。

「赤壁の戦い=船による水上戦」というイメージだったのですが、陸上戦も重要だったというのは確かにそうでしょう。『三国志』を知らなくても十分楽しめますが、登場人物が「どんな人物か」を知っておくと、より楽しめるでしょう。



【初回生産限定】レッドクリフ Part I & II DVDツインパック

【初回生産限定】レッドクリフ Part I & II DVDツインパック

  • 出版社/メーカー: エイベックス・マーケティング
  • メディア: DVD



レッドクリフ PartⅠ&Ⅱ スペシャル・ツインパック [DVD]

レッドクリフ PartⅠ&Ⅱ スペシャル・ツインパック [DVD]

  • 出版社/メーカー: エイベックス・マーケティング
  • メディア: DVD



レッドクリフ Part I コレクターズ・エディション [DVD]

レッドクリフ Part I コレクターズ・エディション [DVD]

  • 出版社/メーカー: エイベックスマーケティングコミュニケーションズ
  • メディア: DVD



【初回生産限定】レッドクリフ Part II -未来への最終決戦- コレクターズ・エディション [DVD]

【初回生産限定】レッドクリフ Part II -未来への最終決戦- コレクターズ・エディション [DVD]

  • 出版社/メーカー: エイベックス・マーケティング
  • メディア: DVD



レッドクリフ 公式ビジュアルBOOK

レッドクリフ 公式ビジュアルBOOK

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/10/15
  • メディア: 単行本



レッドクリフ Part2 公式ビジュアルガイドBOOK

レッドクリフ Part2 公式ビジュアルガイドBOOK

  • 作者: 『1週間』編集部
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/03/03
  • メディア: 単行本



小説レッドクリフ(上)

小説レッドクリフ(上)

  • 作者: カン・チャン (脚本)
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/10/02
  • メディア: 単行本



小説レッドクリフ(下)

小説レッドクリフ(下)

  • 作者: 高里 椎奈
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/03/11
  • メディア: 単行本



レッドクリフPartII -未来への最終決戦-フォト&ストーリーガイド (TVTaro特別編集) (TOKYO NEWS MOOK)

レッドクリフPartII -未来への最終決戦-フォト&ストーリーガイド (TVTaro特別編集) (TOKYO NEWS MOOK)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京ニュース通信社
  • 発売日: 2009/03/18
  • メディア: ムック



nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

Kingdom of Heaven - The Director's Cut (Four-Disc Special Edition) [歴史映画]

kingdomofheaven.jpg


 リドリー・スコット監督の名作『キングダム・オブ・ヘブン』の「ディレクターズ・カット3枚組」は、日本盤が3枚組なのに対しアメリカ盤は4枚組です。日本盤3組は、「ディレクターズ・カット2枚組」に「劇場公開版2枚組」の特典映像ディスクをつけた中途半端な内容。ということで、リージョン1ではありますが、アメリカ盤4枚組を購入しました。アマソンUSのマーケットプレイスで$18.93でした。 日本円での支払金額は、商品本体がJPY 1,857とShipping & HandlingがJPY 1,205の合計JPY 3,062でした。1800円の商品に1200円の送料というのもどうかとは思いましたが、まぁ満足しています。

 映画というと、先日子どもと一緒に「仮面ライダーディケイド」の映画を見に行ってきました(本当は「G.I.ジョー」が見たかった)。内容的にはイカデビルや地獄大使、キングダークなどオヤジ世代が喜びそうなもの。V3のかけ声が、「ブイスリー」ではなく、お約束の「ブイスリャーッ」だったのにはこだわりが感じられました。それにGakutの結城丈二(実は京大出身)は鬼気迫るものがあり、なかなか良かったです。ライダーマンの変身が、マスクをかぶるものから右腕を外すものになってましたが、変身時の苦しそうな感じがまたよかったと思います。帰りにトイザらスに寄ったところ、クリアランスセールをやっていて、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のウィル・ターナー(オーランド・ブルーム)のフィギュアが500円だったので、即買い。




キングダム・オブ・ヘブン ディレクターズ・カット (3枚組特別編) [DVD]

キングダム・オブ・ヘブン ディレクターズ・カット (3枚組特別編) [DVD]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD




nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

『ブーリン家の姉妹』(ジャスティン・チャドウィック監督、2007年、イギリス) [歴史映画]




【映画について】
 原題は『The Other Boleyn Girl』で、フィリッパ・グレゴリーによる同名小説の映画化作品。アン・ブーリン役にナタリー・ポートマン、アンの妹メアリ役にはスカーレット・ヨハンソンという若手実力派女優が競演し、ヘンリ8世はエリック・バナが演じています。なおフィリッパ・グレゴリー原作の映像化として、2003年にもBBCにてテレビ版が製作されているようです。
 脚本は、エリザベス2世を演じたヘレン・ミレンがアカデミー賞の主演女優賞を得た『クイーン』[http://queen-movie.jp/]で脚本を担当したピーター・モーガン。また『恋におちたシェイクスピア』でアカデミー衣装デザイン賞を獲得したサンディ・パウエルが衣装を担当し、プロデューサーとしてケイト・ブランシェットの『エリザベス』を担当したアリソン・オーウェンがクレジットされるなど、テューダー朝イングランドを描いた映画関係者が名を連ねています。

【ストーリー】
 シネマトゥデイ [http://cinematoday.jp/movie/T0006549]
 公式サイト(日本) [http://www.boleyn.jp/]
 
【見所など】
 これまでのヘンリ8世は、『わが命つきるとも』や『キング・オブ・サンダー』など、ホルバインの肖像画にもとづく俳優がほとんどでしたが、今回はエリック・バナがヘンリ8世役。エリック・バナというと、『トロイ』のヘクトル役や『ミュンヘン』のヒットマン役など「いつも憂鬱」そうな表情の役が多く、ちょっと疑問だったのですが、これはよい配役だったように思います。ナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンの二人がかなりモダンな役作りですが、ブーリン姉妹の母エリザベスやノーフォーク公、キャサリン=オヴ=アラゴンなど、脇役が渋い演技を見せているので、映画全体を落ち着いたものにしているようです。キャサリン役の アナ・トレントという女優は、実際にスペインの女優さんのようです。

 映画中、姉妹の父トマス・ブーリンが妻のエリザベスに対して、妻の裕福な実家について触れるシーンがありますが、これは史実通り。トマスはもともとナイトでしたが、エリザベスの父は名門ノーフォーク公の二代目当主トマス・ハワードです。「ハワード」という姓からわかるように、ヘンリ8世の5番目の王妃となるキャサリン・ハワードとは深い関係があり、トマス・ハワードはアン・ブーリン、キャサリン・ハワード二人の祖父にあたります。したがってアンとキャサリン・ハワードはいとこ同士、ということになります。アンとキャサリン、ともにヘンリ8世によって処刑されるとは、なんとも皮肉な話。

 アン・ブーリンが1男2女の3人兄弟だったのは史実通りですが、出生の順番は正確には分かっていません。映画ではアンが姉、メアリーが妹となっていましたが、アンが妹とする説もあります。映画ではアンがフランス宮廷に行ったのは、ノーザンバーランド伯パーシー卿とあげた秘密裏の結婚のほとぼりをさますためとされていましたが、記録ではアンがフランス宮廷に渡ったのは、ヘンリ8世の妹メアリがフランスのルイ12世に嫁ぐときです。ノーザンバーランド伯との関係は、アンがフランスから帰ってきてからのことのようです。

 映画で私が最も注目したのは、アンの処刑です。以前コメントで指摘があったように、アンの処刑は、一緒に兄弟のジョージと異なりフランス式でした。処刑に際してフランスからわざわざ処刑人を呼び寄せたというのも史実のようです(森護『英国王妃物語』)。

 歴史的な背景を知っておくと、知らないよりも楽しめる映画だと思います。まずヘンリ8世の最初の王妃キャサリンは、コロンブスの航海を支援したカスティリャ女王イサベルとアラゴン王フェルナンド2世の間に生まれた女性で、スペイン王カルロス1世(神聖ローマ皇帝カール5世)の叔母にあたります。カール5世というとフッガー家の関わりもあってマルティン=ルターの宗教改革を弾圧した人物。当然ながらローマ教皇とは親密な関係にあり、当時の教皇クレメンス7世に対して、叔母の離婚を認めないように動いたのは当然のことでしょう。

 小説の映画化なので、重要な話が抜けているのは仕方がないところですが、トマス=モアに関しては扱ってもよかったかも。『わが命つきるとも』もあわせて見ると、よいと思います。その後、ケイト・ブランシェットの『エリザベス』『エリザベス・コールデン・エイジ』、ヘレン・ミレンの『エリザベス1世』などを見ると、うまくつながるでしょう。



 
ブーリン家の姉妹 コレクターズ・エディション [DVD]

ブーリン家の姉妹 コレクターズ・エディション [DVD]

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • メディア: DVD



ブーリン家の姉妹 [Blu-ray]

ブーリン家の姉妹 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • メディア: Blu-ray



BBC 世界に衝撃を与えた日―15―~英国王妃アン・ブーリンの処刑とエドワード8世の退位~

BBC 世界に衝撃を与えた日―15―~英国王妃アン・ブーリンの処刑とエドワード8世の退位~

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • メディア: DVD



エリザベス [DVD]

エリザベス [DVD]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • メディア: DVD



エリザベス1世 [DVD]

エリザベス1世 [DVD]

  • 出版社/メーカー: エイベックス・トラックス
  • メディア: DVD



エリザベス : ゴールデン・エイジ [DVD]

エリザベス : ゴールデン・エイジ [DVD]

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • メディア: DVD



ブーリン家の姉妹〈上〉 (集英社文庫)

ブーリン家の姉妹〈上〉 (集英社文庫)

  • 作者: フィリッパ グレゴリー
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/09
  • メディア: 文庫



ブーリン家の姉妹〈下〉 (集英社文庫)

ブーリン家の姉妹〈下〉 (集英社文庫)

  • 作者: フィリッパ グレゴリー
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/09
  • メディア: 文庫



薔薇の王朝  王妃たちの英国を旅する (知恵の森文庫)

薔薇の王朝 王妃たちの英国を旅する (知恵の森文庫)

  • 作者: 石井 美樹子
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/01/06
  • メディア: 文庫



英国王室史話〈上〉 (中公文庫)

英国王室史話〈上〉 (中公文庫)

  • 作者: 森 護
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2000/03
  • メディア: 文庫



英国王室史話〈下〉 (中公文庫)

英国王室史話〈下〉 (中公文庫)

  • 作者: 森 護
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2000/03
  • メディア: 文庫



アン・ブリンの生涯

アン・ブリンの生涯

  • 作者: キャロリー エリクソン
  • 出版社/メーカー: 芸立出版
  • 発売日: 1990/08/01
  • メディア: 単行本



エリザベス:ゴールデン・エイジ (ソフトバンク文庫)

エリザベス:ゴールデン・エイジ (ソフトバンク文庫)

  • 作者: ターシャ・アレグザンダー
  • 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
  • 発売日: 2008/01/17
  • メディア: 文庫



王妃の闘い―ヘンリー八世と六人の妻たち

王妃の闘い―ヘンリー八世と六人の妻たち

  • 作者: ダイクストラ 好子
  • 出版社/メーカー: 未知谷
  • 発売日: 2001/05
  • メディア: 単行本



王妃アン・ブリンの秘密の日記

王妃アン・ブリンの秘密の日記

  • 作者: ロビン マックスウエル
  • 出版社/メーカー: バベルプレス
  • 発売日: 2005/06
  • メディア: 単行本



英国王妃物語 (河出文庫)

英国王妃物語 (河出文庫)

  • 作者: 森 護
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1994/09
  • メディア: 文庫



nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

『娼婦ベロニカ』(マーシャル・ハースコヴィッツ監督、1998年、アメリカ) [歴史映画]

 16世紀末のヴェネツィアを舞台に、コーティザン(courtesan 高級娼婦)として生きるベロニカの姿を、当時の政治や社会を反映させながら描いた作品。原題は「A Destiny of Her Own」。邦題は誤解を受けそうなタイトルになってますが、公民科T先生の紹介で見てみたところ、楽しめる歴史ラヴ・ロマンスでした。当時の社会や風俗の再現も、よく出来ています。
 主演のベロニカ役は、メル・ギブソンの『ブレイブ・ハート』で、主人公ウォレスの妻を演じたキャサリン・マコーマック、ベロニカの恋人マルコ役は、『ロック・ユー』で、故ヒース・レジャー扮するウィリムのライバル、アダマーを演じたルーファス・シーウェル。脇役陣も演技派が多く、特にベロニカにコーティザンとしての「英才教育」を行う母親役のジャクリーン・ビセットの円熟した演技が素晴らしい。
 映画に出てくるフランス王アンリは、ヴァロワ朝最後の仏王アンリ3世。メティチ家出身のカトリーヌ・ド・メディシスの子で、ナントの勅令で有名なブルボン朝初代のアンリ4世と争った人物です。ユグノー戦争中の国王としても有名。
 映画の中で、オスマン帝国の艦隊がキプロス島周辺に出現という話が出てきます。キプロス島は1489年以後ヴェネツィア共和国領となりましたが、1571年にオスマン帝国に占領されますので、この映画の部隊となった1580年代はオスマン帝国の支配下にあったはず(この占領がレパントの海戦よりも後であることからも、レパントの海戦後もオスマン帝国が地中海の制海権を握っていたことがわかります)。映画『キングダム・オブ・ヘブン』に出てくるイェルサレム王ギイ・ド・リュジニャンがキプロスの統治権を保持していた時期もあります。


【解説】
 キネ旬DB
 公式サイト
 シネマトピックコム

実在の女性詩人ベロニカ・フランコについて(Wikipedia 英語)[http://en.wikipedia.org/wiki/Veronica_Franco]
コーティザンについて(Wikipedia 英語)[http://en.wikipedia.org/wiki/Courtesan]


娼婦ベロニカ

娼婦ベロニカ

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

『ブラザーフッド』(カン・ジェギュ監督、2004年、韓国) [歴史映画]

 原題は『太極旗を翻して』。チャン・ドンゴンウォンビンという韓流四天王のうちの二人が、朝鮮戦争に翻弄される兄弟を演じた作品。

【ストーリーなど】
  Wikipedia


 朝鮮戦争をテーマにした韓国映画だけに、重い作品です。戦闘シーンなどもリアルに描かれており、内蔵が飛び散ったシーンは豚の内臓が使われたそうです。二大俳優の演技もよく、韓国映画の底力を感じさせる作品に仕上がっています。
 米軍上陸や中国による義勇軍の派遣、その結果前線が半島を南北に移動するさまなど、朝鮮戦争の概要がよく分かります。映画の中で「補導連盟」という組織が出てきますが、この組織とこれにまつわる事件についてはWikipediaに詳しい記述があります。
 ジンテの婚約者ヨンシンを好演したイ・ウンジュ(『バンジージャンプする』のイ・ビョンホンの相手役)は、2005年に自殺、24歳という若さでこの世を去ってしまいました。



ブラザーフッド (ユニバーサル・ザ・ベスト2008年第2弾)

ブラザーフッド (ユニバーサル・ザ・ベスト2008年第2弾)

  • 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
  • メディア: DVD



ブラザーフッド プレミアム・エディション

ブラザーフッド プレミアム・エディション

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • メディア: DVD



ブラザーフッド スタンダード・エディション

ブラザーフッド スタンダード・エディション

  • 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
  • メディア: DVD



ブラザーフッド コレクターズBOX (完全予約限定生産)

ブラザーフッド コレクターズBOX (完全予約限定生産)

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • メディア: DVD



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。