NHK「よみがえる第二次世界大戦 ~カラー化された白黒フィルム~」 [歴史ドキュメンタリー番組]
番組ホームページ:http://www.nhk.or.jp/frontier/warandpeace/0816.html
この番組は、残されている第二次世界大戦当時の白黒フィルムを1フレーム単位で着色し、よりリアリティーのある映像にしようという試みですが、実に自然ですばらしい仕上がりです。フランスのCC&C と国営フランス2チャンネルによる制作で、原題は「APOCALYPSE - The Second World War( 黙示録 -第二次世界大戦)」。興味深いフィルムをいくつかあげると、マジノ線、ダンケルクの撤退、スターリングラードの攻防、ミッドウェー海戦、ノルマンディー上陸作戦など。その他、ソ連の地雷犬、捕虜となったフランスの植民地兵(プロパガンダ)なども衝撃的。とてもよいドキュメンタリー番組だと思います。
DVD『映像で綴る 20世紀の記録』 [歴史ドキュメンタリー番組]
パッケージの説明によると、「イギリス国営BBC放送とフランスPath‘社の貴重な映像ライブラリーから ドキュメンタリーの第一人者として名高いゲイリー・ターピニアン総指揮による日本と世界の「激動の20世紀」の全貌を捉えた映像クロニクルの傑作」というもの。すべて実写フィルムが使用されており、関連の映像もこれまた実写で補足されるなど(例えば第3次中東戦争では、その後のカーター米大統領やクリントン米大統領による中東和平の様子など)編集も良いです。中には、マッキンレー米大統領を暗殺した犯人が、電気椅子で死刑になる動画というものまで収録されています。
この手のシリーズだと、何と言ってもNHK『映像の世紀』でしょう。私も世界史や現代社会の授業でビデオを見せてます。DVDを買おうと思っても、いかんせん値段が高い(済々黌高校では『映像の世紀』備品で購入してました)。アマゾンの『映像の世紀』のカスタマーレビューに、映像使用権が高いので値段が張るのは仕方ない、という趣旨のレビューがありますが、このDVDを見る限り、その指摘はあたっていないように思います。このDVDでは、『映像の世紀』に使われたのと同じ映像も使われていますから。何と言っても1本約500円という価格設定が魅力。全部買っても5000円ですが、楽天市場で一番安いショップだと消費税込みで4179円、さらにYahoo!のオークションにはディスカウント業者が1円スタートで多数出品しており、オークション統計ページで検索したところ、一番安いときには511円で落札されています(もちろん10本セットの値段ですよ)。平均でも2500円くらい。送料は別にかかりますが、オークションの方が安く入手できると思います。値段もさることながら、1本あたりの収録時間も約50分で、まさに「授業で見せるためにある」ようなシリーズ。先日紹介した『世界に衝撃を与えた日』よりも、はるかにこちらが優れています。
特によかったのは、1960年代をあつかったVol.7。ベルリンの壁やベトナム戦争、ケネディ暗殺、キング牧師暗殺、そしてプラハの春など。中でもビートルズの記者会見ぶりは、ユーモア&皮肉たっぷりの、かなりおもしろいものでした(ファンの間では有名な、代打ドラマーのジミー・ニコルが一緒の記者会見というレアな映像まで収録されています)。それにロバート・ケネディの演説も、なかなか感動的でした。
Vol.2には、トルコによるアルメニア人虐殺事件が詳しくとりあげられていました(Wikipediaの記事はこちら)。実際どうだったのか、という点になると私もよく知りませんが、DVDでは、ケマル=アタテュルクの時代になってもトルコはアルメニア人を迫害したことが述べられてました。ヨーロッパでは、この問題に対する関心は結構高いようですが、日本ではあまり高くないようです。高校の世界史での扱いでは、この時期のトルコについて「帝国主義列強の進出を受ける可哀想な国」というイメージが強く、またエルトゥールル号事件などの日本との友好的な側面がよく知られていることも作用しているかもしれません。
DVD『世界に衝撃を与えた日』 [歴史ドキュメンタリー番組]
所々で当時の映像もありますが、基本的には再現映像。『世界不思議発見!』なんかの再現映像を思い浮かべてもらうといいと思います。BBC制作だけによくできたドキュメンタリーだとは思いますが、『奇跡体験!アンビリバボー』を思い出してしまうせいか、イマイチ現実味に乏しい感じがします。2500円も出す価値はないでしょう。中古で送料込1000円くらいだったら、ちょうど授業1時間(50分)分ということで、とりあえず買ってみていいかも。
最近Yahoo!のオークションに中国の業者から日本の新品DVDが格安で出品されているのをよく目にします。実はこのDVDも中国からの発送でした。最初は海賊版かとも思ったのですが、そうでもなさそうです。私は結構利用しているのですが、これは一体どういうシステムになっているのでしょうか?
先日行われた公立高校の入試問題(社会)で、アヘン戦争の時の絵[http://www.yurindo.co.jp/yurin/back/426_ahen.html]
を使った問題が出題されていました。どっかで見たようなテーマだなぁと思ったら、帝国書院の『タペストリー』にある「清とイギリスのどちらが優勢であるかに着目しよう」という読み解きでした。そこで帝国書院の中学校社会歴史分野の教科書を見たところ、どれがイギリス船でどれが中国船か見分けようという問題が掲載されています。またこの問題は、数年前に某県立高校の前期選抜に出題された問題とかなり似ています。先日センター試験問題の再利用を検討するというニュースがありましたが、素材が限られる高校入試の問題もネタ切れなのかもしれません。
BBC 世界に衝撃を与えた日-2-~オーストリア皇太子暗殺とアドルフ・ヒトラーの最期~
- 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
- メディア: DVD
NHK教育テレビ『地球ドラマチック~失われた古代都市②ハットゥシャ』 [歴史ドキュメンタリー番組]
今朝午前10時から放送されていた教育テレビの番組ですが、たいへん興味深い番組でした。英BBCの制作です。概略は以下の通り。備忘録的に箇条書き。
・20世紀の初めめまで、古代のオリエントではエジプト・アッシリア・バビロニアの三大王国が知られており、ヒッタイトの存在は知られていなかった。
・古代オリエントで大王とはエジプト・アッシリア・バビロニアの3人の王であったが、発見された文書では、エジプトのラムセス2世がヒッタイト王を「大王」とよんでいる。
・山中に築かれたヒッタイトの首都ハットゥシャは、巨大な城壁に囲まれていた。高さは最大で30メートル、厚さは8メートルにもおよぶ。
・ヒッタイトではオリエントで広く使われていた楔形文字が使用されていたが、これはヒッタイト語を表記するためのものであり、ヒッタイト語そのものは解読されないままだった。ヒッタイト語がインド・ヨーロッパ系だとは思いつかなかったからである。しかしwaterに近い単語などが発見され、インド・ヨーロッパ系の言語であることがわかり、驚きをよんだ。(つまりアルファベットで英語やドイツ語、トルコ語を表記するのと同じですね。楔形文字を使っていたオリエント国家は、全部同じ言語を使用していたと思っていた私は、なんて無知だったのでしょう!)
・楔形文字以外に、ヒッタイトには象形文字も使用された。これを読める人は現在世界に数人しかいない。
・ヒッタイトには詳細な軍隊訓練マニュアルがあった。厳しい罰則が定められ、馬にも訓練をほどこした。
・カデシュの戦いでは、車輪の位置を兵士搭乗部の中央に移動した(それまでは後方にあった)改良型が使用された。この改良によって安定性が増し、戦車に乗ることができる戦闘員は2人から3人に増えた。
・ヒッタイトの強さの源泉は、強固な団結であった。しかしヒッタイト象形文字の解読によれば、ヒッタイトは内紛によって崩壊した。ヒッタイトの王は、重要な資料を運び出して自ら都に火を放ち、そこを放棄した。その後彼らがどこへ移動したか不明である。
CGを使った都とその城壁の再現、ヒッタイト語の解読(「今、あなたはパンを食べ、水を飲む」という一文がわかるまで)のプロセスなど、かなりおもしろい内容でした。教科書では3行程度しかでてこないヒッタイトですが、かなり興味をひかれる国家です。
鉄を生みだした帝国―ヒッタイト発堀 (NHKブックス 391)
- 作者: 大村 幸弘
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 1981/01
- メディア: 単行本
アナトリア発掘記 ~カマン・カレホユック遺跡の二十年 (NHKブックス)
- 作者: 大村 幸弘
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2004/05/30
- メディア: 単行本
NHKの番組から [歴史ドキュメンタリー番組]
昨夜たまたま教育テレビをつけると、『知るを楽しむ 歴史に好奇心』という番組が流れていました。西暦の話で、解説は池上俊一先生。ユリウス暦やAugustの由来は有名ですが、12月25日がクリスマスとなったのは、ニケーア公会議だったとは知りませんでした。ということで、番組ではカエサルとアウグストゥス、それにコンスタンティヌスの3人の胸像の写真が並べれられていました。デレビ画面にうつってたニケーア公会議の年号、325年ではなかったような気がするのですが......?
面白そうだったので、TSUTAYAにこの番組のテキストを買いに行きました。貞享暦の話も出てましたが、授時暦には触れてありません。
NHKテキストのコーナーには、『NHKカルチャーアワー 歴史再発見』という番組の「中世ヨーロッパ生活誌」というテキストもあり、一緒に購入。講師は堀越宏一先生(孝一先生のほうではありません、もちろん)。これは結構面白い本(テキスト)でした。封建社会の特徴からキリスト教から衣食住、消費生活、技術など平易ながら興味深い内容です。
こういう話だけしとけば済むんだったら、やる方も受ける方も、高校の歴史の授業はもう少し楽しめるかもしれません。まぁ「面白い授業」と「センター試験で9割以上とらせる授業」という二点をどう両立させるか、というのも腕の見せ所でしょう。
中世ヨーロッパ生活誌 (NHKシリーズ NHKカルチャーアワー・歴史再発見)
- 作者: 堀越 宏一
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2007/12
- メディア: 単行本
歴史に好奇心 2007年12月-2008年1月 (2007) (NHK知るを楽しむ/木)
- 作者: 中島 貞夫
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2007/11
- メディア: 単行本
NHK『偉大なる旅人・鄭和』 [歴史ドキュメンタリー番組]
15世紀に中国から海外に派遣された鄭和の遠征隊の説明として正しいものを、次の文①~④のうちから一つ選べ。
① 遠征隊は,明の太祖洪武帝によって派遣された。
② 遠征隊は,アフリカ東岸にまで達した。
③ 遠征隊は,2度にわたって日本を攻撃した。
④ この遠征後も,明は積極的に遠征隊を海外に派遣した。
(1993年度 追試験 世界史 第4問B )
NHKで今日放送された番組「偉大なる旅人・鄭和」はたいへんよいドキュメンタリーでした。最近中国では海外との交流を促進した鄭和について、「改革・開放」の先駆者として高い評価を与えているらしいです。鄭和の評価を高めたのは、改革・開放の旗手にして「中華人民共和国の不死鳥」こと鄧小平でした。鄭和の航海を大航海時代におけるヨーロッパ人の航海よりも高く評価すべきであるとの見方は以前よりありましたが、ヴィジュアルに分かりやすく伝えるという点で、いい番組でした。インドネシアにおいてイスラーム教徒と華僑の双方から尊崇されているという点、そして仏・ヒンドゥー・イスラームの3教徒が対立していたセイロン島に、3者の融和を図るために和が1409年に立てた石碑の話などを聞くと、国際感覚溢れた彼の姿が浮かび上がってくるようです。文化や宗教の壁を越えた、今で言うところの国際感覚溢れた人物像が浮かび上がってきます。 だいたいの内容は、宮崎正勝著『鄭和の南海大遠征』(中公新書)に載っているものではありましたが、映像で視覚に訴えられるとやはり桁違いに面白く感じます(誤解なきよう言っておきますが、宮崎先生の本がつまらんと言っているのではありません)。セイロン島の石碑発見のエピソードなど、『南海大遠征』では「溝をおおう石板」とありますが、番組では「ドブのフタ」と紹介されたことで、本では読み流した部分が印象に残った次第です。北京大学の和研究会の協力で作成したという、CGによる「宝船」の船内再現など、やはり受ける印象が違います。この和研究会の活動も、北京原人の骨発見計画同様に北京五輪向けのプロジェクトでしょうか?南京から北京まで3カ月かかったとか。DNA鑑定の結果中国人の血をひいていると確認されたアフリカの女性が中国政府の招きで南京に留学し、医者を目指して勉強中という話をきくと、そう感じてしまいますが。 鄭和の宝船とコロンブスのサンタ=マリア号とのCGによる大きさの比較や、疑問点を老師と弟子との会話形式で説明するというのも分かりやすかったと思います。センター試験で、鄭和がベトナムに達したときに存在した王朝は何かという問題がありましたが、チャムパーだということはこの番組見れば印象に残るでしょう。マラッカ海峡には現在でも海賊が出没しているというこですが、鄭和は海賊との戦闘の末これを制圧し、海上交通の要地マラッカ海峡に平和をもたらしたということです。カマールという位置測定の道具がでてきましたが、四角の板でした。映画『1492』でコロンブスが使っていた道具とは違いますね。やはり人気の中国商品は陶磁器。アラビアで作られたブドウ模様の陶磁器や、逆に中国でつくられたアラビア風燭台陶磁器(オリジナルの青銅製燭台には、パルティアン=ショットをする騎射の図が見えたように思いますが?)など、当時の交流を示して興味深いものでした。 鄭和艦隊で食された食事の再現も興味深いものでした。船内ではモヤシを栽培する一方で、豆腐をつくり鶏等も飼っていたとのこと。食材としてニガウリ等も使う、壊血病とは無縁だったとのこと。こうした食事が疫病の発生を防いだということで、まさに「医食同源」。鄭和艦隊が到達したアフリカの都市マリンディは、私大入試ではたまに見かけます。資料集にも載っている陶磁器を埋め込んだ墓も出てきました。旧課程の教科書には鄭和艦隊がアフリカからキリンを持ち帰った図が載っていました。キリンをアフリカから持ち帰った方法も予想されました。動物専用船の甲板に大きな穴を開けたのではないだろうか、ということです。 1421年に鄭和が新大陸に到達していた、という説は面白かったですね。提唱者が中国人だったらナショナリズムか?とも思ってしまうところですが、非中国人(元英海軍の潜水艦長)が主張しているで点が、なんか面白そうに思えます。同じアジア人ですからねぇ。もし鄭和の航海事業が後世に継承されていたら、ポルトガルのインド洋貿易参入は不可能であったかもしれませんね。砲艦外交を展開しない中国への支持は高かったはず。欧米によるアジアの植民地化もなかったかもしれません。『銃・病原菌・鉄』でジャレド・ダイヤモンドが指摘している点で、当時の中国がヨーロッパに劣っている点は皆無ですから。 テレビを見た人には『鄭和の南海大遠征』はオススメの本です。この本はネットワーク論の視点から書かれた本ですが鄭和の生い立ちや艦隊の構成など、番組で紹介された内容をより深く知りたい人には、よい本です。まあ「鄭和の故郷雲南の風土病ペストが世界の歴史を変えた」、などという、彼の航海とはまったく関係ない話をマクニールの本から引用してる点などは、ネットワーク論偏重というイメージを受けないでもないですが、「鄭和の大航海をネットワーク論の視点から見直す」というスタンスは、興味深いものでした。読んで損はないです。同じ著者の『イスラーム・ネットワーク』(講談社選書メチエ)もあわせて読むといいと思いますね(もっとも『文明ネットワークの世界史』は買って大後悔した、つまらない本でしたが)。 これだけ有名な人物でありながら、死亡時期や場所が確定されていないというのも不思議ですね。彼の死から40年後、軍の高官であった劉大夏によって鄭和の航海記録はすべて破棄されてしまいます。理由は莫大な費用がかかったためだそうですが、実に残念なことです。