青池保子『修道士ファルコ』 [マンガ]
これはかなりの快作。中世の修道院を舞台に(といっても主人公は修道院の外で活躍することが多いのだが)、いたって真面目でありながら、本人の意志とは無関係に俗世との関わりが続いてしまうシトー派修道士の活躍を描いた作品。綿密に取材されていて考証も確かなうえ、謎解き&活劇の要素もあって楽しめます。短編集的なところも、読みやすさの理由でしょう。修道院が舞台のミステリーというと、『バラの名前』ですが、この作品は暗くなく、明るくてコミカル。登場人物のキャラクターも個性的です(主人公とその周辺の美形キャラの顔は皆似ている.....というか同じだけど:それが青池作品の真骨頂だというのが伊東比呂美さんの弁)。
作者の青池保子さんにはヨーロッパ中世を舞台にした作品が多く、どれもよくできています。青池さんといえば最近『アルカサル~王城』が完結したばかりですが、アルカサルの主人公、カスティリャ王ドン=ペドロもこの『修道士ファルコ』Chap.1に客演しています。
藤子不二雄『ひっとらぁ伯父サン』(朝日ソノラマ) [マンガ]
「藤子不二雄ブラックユーモア傑作集」と題されている短編集に収録されている「ひっとらぁ伯父サン」と、その続編「ひっとらぁ伯父サンの情熱的な日々」に登場するキャラクターが、ひっとぁ伯父サンです。風貌がアドルフ・ヒトラーに似ており、そのためヒトラーに傾倒する、という男。藤子不二雄Ⓐはヒトラーに深い関心を寄せていたようですが、短編2本だけというのは、なんとも惜しいのがこの「ひっとらぁ伯父サン」です。
(ストーリー)
ある日フォルクスワーゲンビートルに乗り町に引っ越してきたひっとらあ伯父サンは、藤子漫画ではおなじみの小池さんの2階の四畳半に下宿することになった。ワグナーを愛し、肉を食べず、酒を「毒水」と呼んでちかづけないストイックな彼は、町内の少年たちを集めてヒトラー・ユーゲントを模倣した組織をつくり、ついには野良犬で突撃隊まで編成してしまう。
その他「笑ゥせえるすまん」のプロトタイプである「黒イせえるすまん」、香港旅行で横暴な行動をとる旧日本軍兵士を題材にした 「北京填鴨式」など、かなりの傑作が収録されています。
『チェーザレ』の4巻をようやく読みました。いよいよルクレツィアが登場。サスペンス的な要素も強まって、さらに目が離せません。先日授業で第2巻に出てくるミゲルとコロンブスの会話の部分を使いましたが(オスマン帝国の宗教的寛容性の部分)、残念ながら反応はほとんどなし。3年生には読んでいる生徒がいるようです。私はチェーザレよりもミゲルのほうにひかれますが。
昨日でジョージアミッションが終了。獲得報酬は以下の通り。なかなか当たらないものですね。当たったデジタルムービカメラは、性能的にはたいしたものではありません。私は「音楽も聴けるデジカメ」として使ってます。
ブラックユーモア短篇集ひっとらぁ伯父さん (Chuko コミック Lite 37)
- 作者: 藤子 不二雄A
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2002/07/04
- メディア: コミック
惣領冬実『チェーザレ』(講談社、モーニングKC) [マンガ]
ルネサンス期のイタリアにおける「悪の華」的なイメージが強いボルジア家。その中でもひときわ有名なのがチェーザレとルクレチアの兄妹ですが、この作品はタイトル通りチェーザレ・ボルジアを主人公とした物語。本邦未訳のサチェルドーテ版チェーザレ・ボルジア伝(チェーザレの伝記では、最も評価が高いらしい)をもとに、かなり細かい部分にまで考証されている作品です。現在『モーニング』(講談社)にて連載中。コロンブスやレオナルド・ダ・ヴィンチ、そしてマキャヴェリという世界史の教科書に登場する「大御所」たちも登場します(浜島書店の資料集『NEW STAGE 世界史詳覧』では、マキャヴェリの『君主論』がチェザーレを念頭において書かれたというエピソードが、宝塚(月組)公演「チェザレ・ボルジア」の写真とともに載っています)。
(現段階で)最も印象深いのは、イスラーム文化を受容したスペイン人を避難するフランス人に対して、チェーザレが反論する場面(第3巻)。名シーンです。第2巻で、コロンブスがミゲルに対してともに航海に行こうと誘うシーンの会話は、イベリア半島におけるユダヤ教徒を語る上で使えそう。
最初読んだときは、「こんな作品が一般の読者に受け入れられるのかなぁ?」という思いを抱きましたが、読者の評判もよろしいようです。サブキャラのアンジェラが「世間知らず」ゆえに、読者の代わりに当時のフィレンツェの状況を勉強してくれますから、詳しい歴史的な知識がなくても楽しめます。テレビドラマ『ガリレオ』みたいに、ストーリーとは無関係な部分で細かい描写をすることも、支持される要因かもしれません。サブキャラが魅力的なのもいいです。先日NHKで放送された『プロフェッショナル~仕事の流儀』は、、魅力あるキャラクターについて語っておられました。この漫画に登場するチェザーレ・ボルジアも面白いキャラクターです。それを際だたせるアンジェロやミゲルのキャラクターもいい感じ。
チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (塩野七生ルネサンス著作集)
- 作者: 塩野 七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/07
- メディア: 単行本