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マスター・アンド・コマンダー(ピーター・ウィアー監督、2003年、アメリカ) [歴史映画]

【映画について】
 パトリック・オブライアンの人気小説シリーズ「ジャック・オーブリー・シリーズ」(邦訳は早川書房より)の映画化作品で、主人公ラッキー・ジャックことジャック・オーブリー船長を演じるのは、『グラディエーター』のラッセル・クロウ。ジャックの親友で船医のマチュリン役は、以前紹介した『ロック・ユー』でお調子者の詩人チョーサーを演じたポール・ベタニー(『ダ・ヴィンチ・コード』ではシラスを演じている)。

【ストーリー】
 1805年春、英国海軍の老朽船サプライズ号(船には1785年にジャック自身が残した落書きがある)の艦長ジャックは、フランスの私掠船アケロン号の太平洋進出を阻止せよとの指令を受ける。しかし圧倒的な火力と速力を誇るアケロン号に先制攻撃を受けたサプライズ号は大破し、かろうじて追跡を逃れた。リヴェンジを期すジャックは、知力を尽くして打倒アケロン号に闘志を燃やす。

【見どころ感想その他】
 設定が1805年の4月なので、ナポレオンの皇帝就任から約1年後という設定。この頃は鯨油を確保するために欧米諸国も捕鯨をやっていた時代ですが、それを狙う私掠船があったとは知りませんでした。私掠船というと、まず思い出すのは16世紀のドレークやホーキンスですよね。ペリーが日本に開国を求めたのも、捕鯨船の補給基地を求めたためというのは有名な話ですね。まず戦場での医療行為が興味深い。当然外科的な処置が多くなるのでしょうが、流れる血で滑らないように床に砂をまくというのはすごい。 船上で脳外科手術をするシーンがありますが、あのとき使ったコインは、何に使ったのでしょうか。
 映画を見ると分かるように、この時代はまだ帆船です(フルトンのクラーモント号は1807年)。サプライズ号の船首の像はブリタニアでしょうか。やはり食料は生きたまま(ニワトリとか)積んでるんですね。
 ガラパゴス諸島の映像もなかなか楽しい。嵐と戦闘のシーンで船長の、生物観察と手術のシーンでマチュリン医師の人物を表現させてる手法も成功しています。マチュリン医師と並んで、サブキャラの中でもいい味出しているのが緒戦で負傷して右腕を切断した少年士官候補生ブレイクニー。彼は最年少ながら(多分)、貴族として「サー」の称号で呼ばれ、白兵戦の場面では自分の祖父くらいの年齢の乗組員にも命令を出して、自ら敵艦に乗り込んでいきます。まさしく「ノブレス・オブリージュ」。他の士官候補生もミスターをつけて呼ばれ、一般船員が彼らにぶつかって敬礼しないとむち打ちの刑が課されるなど階級社会であることがよく分かります。艦長とマチュリン医師はバイオリンなんか弾いちゃってますが、一般の船員が踊っていたのは、アイリッシュ・ダンス?のように見えました。このあたりでも貴族と一般庶民との違いがうかがえます。
 映画に本人は出てきませんが、ジャックをはじめ皆が崇拝するのがネルソン提督。ジャックは右腕を切断したブレイクニーにネルソンの伝記を渡しますが、ブレイクニーが腕を切断したのはネルソンのイメージでしょう。ちなみにトラファルガーでネルソンが戦死するのは、この年の8月。
 会食のシーンに出てくる「One must always choose the lesser two weevils.」という言葉、何か特別な意味があるのでしょうか?嵐の中でやむなくウィリーを見捨てたジャックをマチュリンがなぐさめる時にも「the lesser two weevils」と言っていましたが。会食というと、面白い人物がコックの老人キリック。気むずかしそうで、何かいつもブツブツ言ってますが、彼が船長とマチュリン医師に出すのは紅茶ではなくコーヒー。彼はマチュリンにコーヒーを出すときに、「角砂糖を3個もいれてやったよ」言ってます。19世紀初頭、砂糖と紅茶はまだ高価だったのでしょうか。浜島書店の『新詳世界史図説』141ページに掲載されているグラフ「砂糖と紅茶の一人あたりの年間消費量」を見ると、19世紀初頭における砂糖と紅茶の消費量は、20世紀初頭の約4分の1です。砂糖も紅茶も、この時期はまだ高価だったようです。

マスター・アンド・コマンダー

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南太平洋、波瀾の追撃戦〈上〉―英国海軍の雄ジャック・オーブリー

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南太平洋、波瀾の追撃戦〈下〉―英国海軍の雄ジャック・オーブリー

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新鋭艦長、戦乱の海へ―英国海軍の雄ジャック・オーブリー (上)

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新鋭艦長、戦乱の海へ〈下〉―英国海軍の雄ジャック・オーブリー

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  • 作者: パトリック オブライアン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
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