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マルセイユ版①~グリモー版とカモワン版 [コレクター道⑦タロットカード]

 マルセイユ版タロットとは、17世紀ころからヨーロッパで大量生産されはじめたタロットカードで、現在のタロットカードのモデルとなったセットである。様々なヴァリエーションがあるが、なかでもメジャーなのが「グリモー版」と「カモワン版」の二つ。いずれもニコラ・コンヴェル(ニコラス・コンヴァー)が18世紀後半に作ったとされるセットをもとにしている。

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「魔術師」「愚者」の比較。左からグリモー版、カモワン版、ニコラス・コンヴァー版。


「グリモー版」
 フランス・カルタ社から発売されているタロット。20世紀に入り、機械印刷にふさわしいデザインのセットとして同社のポール・マルトーによってつくられた。創業者の名前ポール・グリモーから「グリモー版」と呼ばれる。

「カモワン版」
 フランスのカモワン社から発売されているタロット。婚姻によってニコラ・コンヴェルの版木を継承したカモワン家の末裔フィリップ・カモワンが、タロット研究家である映画監督のアレハンドロ・ホドロフスキーとともにつくったセット。完成は1997年である。描かれた人物の視線を重視するなど、独特の占い方法がある。


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「グリモー版」と「カモワン版」はよく似ているため、私はすぐにわかるように「Grimaud」「Camoin」というタグを作った。



【タロットの古典“グリモー版”】マルセイユタロット(仏文)

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  • 出版社/メーカー: FRANCE CARTES/France
  • メディア: おもちゃ&ホビー



【タロットの古典“グリモー版”】マルセイユタロット(英文)

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  • 出版社/メーカー: France Cartes/FRANCE
  • メディア: おもちゃ&ホビー



【カモワン家の秘伝タロット】カモワンタロット(カードのみ)

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  • 出版社/メーカー: Lo Scarabeo/ITALY
  • メディア: おもちゃ&ホビー









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ヴィスコンティ・スフォルツァ版②~キャリー・イェール・パック [コレクター道⑦タロットカード]

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 アメリカのイェール大学(コネチカット州)のベイネック図書館が所有しているデッキ。キャリー家のトランプ・コレクションのひとつだったことから、「キャリー・イェール・パック」ともよばれる。このパックはミラノ公フィリッポ・マリア・ヴィスコンティ(1392~1447)の依頼で作られたという説があり、彼は「ピアポント・モルガン・パック(ベルガモ・パック)」を作らせたとされるフランチェスコ・スフォルツァ(1401~1466)の舅にあたる。フィリッポ・マリア・ヴィスコンティの娘ビアンカ・マリア・ヴィスコンティとフランチェスコ・スフォルツァが結婚したことで「ヴィスコンティ・スフォルツァ」となった次第。以上の来歴から、「キャリー・イェール・パックは、ピアポント・モルガン・パックよりも古い」という説もあり、だとするとこの「ヴィスコンティ・スフォルツァ版のキャリー・イェール・パックが最古のタロット」ということになる。しかし大アルカナは11枚しか残存せず、全67枚がすべてで、私が持っているU.S.GAME社製も別のカードを補ってある。キャリー・イェール・パックとピアポント・モルガン・パックを並べてみると、同じヴィスコンティ・スフォルツァ版でも「似てるけど違う」という感じが興味深い。

イェール大学ベイネック図書館のキャリー・イェール・パック
http://beinecke.library.yale.edu/collections/highlights/visconti-tarot


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キャリー・イェール・パックとピアポント・モルガン・パックの「魔術師」と「恋人」。いずれも左側(若干サイズが大きい方)がキャリー・イェール・パック。魔術師の服のデザインや、恋人の頭上のクピド(キューピッド)などはよく似ている。 キャリー・イェール・パックの「恋人」には、パラソルにヴィスコンティ家の紋章ピジョ-ネ(人を飲み込む大蛇)が見える。このピジョーネの紋章はスフォルツァ家に受け継がれ、ミラノに本社を置く自動車メーカー、アルファロメオの社章にも使われている。





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ヴィスコンティ・スフォルツァ版 [コレクター道⑦タロットカード]

 最初にタロットに触れたのは、大学時代に天野喜孝の画集で彼が描いたタロットのシリーズを目にしたときで、最初に買ったタロットも天野氏がデザインしたカードセットだった。

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 本格的な占いをやるわけではないが、タロットの不思議な図柄には魅了される。タロットには様々なヴァリエーションがあるが、現在手元にあるのは大きく分類すると以下の3種類。

(1)ヴィスコンティ・スフォルツァ版
 イタリアのミラノ公フランチェスコ・スフォルツァ(ヴィスコンティ家の娘を妃に迎えた)の注文によって作られたとされるタロットで、現存する最古のタロットとされる。十数個のセットが残されているが、いくつかのヴァリエーションがあり、また現在のデッキと比較するといずれも欠落がある。

(2)マルセイユ版
 16世紀頃からフランス・マルセイユを中心に生産されていたタロット。古典的なタロットであるが、もともとは賭博用であり、占いに使われるようになったのは後のことだと言われている。

(3)ウェイト版(ウェイト=スミス版、ライダー版)
 魔術研究家アーサー・エドワード・ウェイト(1857~1942)がデザインし、パメラ・コールマン・スミス(1878~1951)がイラストを描いたタロット。1909年にロンドンのライダー社から発売されたことから、ライダー版とも呼ばれる。最も広く普及しているタロット。


 「現存する最古のタロット」とされるヴィスコンティ・スフォルツァ版を作らせたミラノ公フランチェスコ・スフォルツァの名を最初に知ったのは、高階秀爾氏の『ルネッサンス夜話』(平凡社)であった。フランチェスコ・スフォルツァは傭兵隊長から身を興し、ミラノ公にまでのし上がった人物である。傭兵隊長というと三十年戦争や佐藤賢一氏の小説などで、粗野な荒くれ者というイメージが強いが、彼は武勇に優れたのみならず、人間としても魅力的な英雄だったという。高階氏曰く「傭兵隊長の花の時代の最後をを飾る存在」だった。「ルネサンス」という言葉を定着させたブルクハルトや、マキャヴェリも『君主論』で彼を高く評価している。フランチェスコ・スフォルツァの息子ルドヴィコ(1452〜1508)の時代にミラノでは文芸がおおいに栄え、レオナルド=ダ=ヴィンチもルドヴィコの宮廷に招かれた。ダ=ヴィンチはルドヴィコの依頼で、フランチェスコの偉業をたたえる騎馬像を作成しようとしたが、未完成におわり現存していない(名古屋国際会議場に復元された象がある)。このような文芸を好む雰囲気が当時は強かったので、アートとしてのタロットが作られたことも頷ける。

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 現存するヴィスコンティ・スフォルツァ版は3種類あるが、アメリカのモルガン図書館(ピアポント・モルガン・ライブラリー)などが収蔵してる「ピアポント・モルガン・パック(ピエールポント・モルガン・パック)」を復刻したデッキ。この版は「フランチェスコ・スフォルツァ・パック」とか「ベルガモ・パック」とも呼ばれており、「悪魔」など4枚のカードが失われている。現在「ヴィスコンティ・スフォルツァ版」と称して売られているタロットは、このデッキがモデルになっており、欠落した4枚のカードも別デザインで補填されているため実際の占いにも使用可能である(しかしサイズが大きく実用向きではない)。復刻したのは、イタリアのIl Meneghello社。823/1000というナンバーがはいっている。


モルガン図書館に収蔵されているヴィスコンティ・スフォルツァ版データ
http://www.themorgan.org/collection/tarot-cards

Il Meneghello社のフェイスブック
https://www.facebook.com/IlMeneghello/

名古屋国際会議場のフランチェスコ・スフォルツァ像
http://www.nagoya-congress-center.jp/organizer/about_us/



【最古のタロットカードの復刻版】ヴィスコンティ・スフォルツァ版タロット

【最古のタロットカードの復刻版】ヴィスコンティ・スフォルツァ版タロット

  • 出版社/メーカー: U.S. GAMES SYSTEMS, INC./U.S.A.
  • メディア: おもちゃ&ホビー









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