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チンギス=ハンの切手 [モノ教材(切手)]

 ついに見つけたモンゴルのチンギス=ハン切手。いわゆる幻の切手の一つ。といっても最近ではけっこう頻繁にebayで見かけるようになりました。この切手の数奇な運命についえは、雑誌『しにか』2003年2月号の内藤陽介氏による「切手で見る中国偉人列伝11~チンギス汗(下)」に詳しいですが、大まかに概要を紹介しておきます。もともとこの 切手は1962年にチンギス=ハン生誕800周年記念として4枚組で発行される予定でした。この年、モンゴルではチンギス=ハン生誕800年を記念して各種の行事が開催される予定でした。しかし当時はモンゴルの社会主義政権がソ連の影響下にあった時代です。ソ連政府はこのモンゴルの記念行事に対し、チンギス=ハンはかつてロシア地方を征服した人物(「タタールのくびき」)であるとして(またモンゴル民族主義の象徴ともなりかねない)、不快感を表明しました。モンゴル政府としては、旧ソ連のチンギス=ハンに対する評価は理解していたでしょうが、1956年にフルシチョフがスターリン批判を行い「雪どけ」ムードがあったため、純粋に学術的な分野に限れば大丈夫との読みがあったのかもしれません。しかしソ連の姿勢に恐れをなしたモンゴル政府は、記念行事の責任者を粛清し、当然切手も発行中止となりました。しかしこの切手はすべてが廃棄されたわけではなく、モンゴルの郵政関係者がその一部を秘匿していたのです。そして1989年、廃棄されずに保管された切手が、「CHINGGIS KHAN CROWNATION 1189」の文字を加刷して再発行されました。この時の発行数は限定1万セットだったということです。
 今回入手した切手には、この加刷文字がありません(ちなみに加刷版の画像は、内藤陽介氏のブログにあります)。したがってオリジナルのまま残されていたものです。これはどうも旧ソ連の高官がモンゴルから持ち出したものの一部のようで、この切手の売り主はウクライナの人でした。ebayなどに出品されているものを見ても、売り主の多くは旧ソ連の人々がほとんどです。 値段は$11.95(総支払いは$16.45)でした。これらの切手、よくみるとキリル文字(ロシア文字)が見えます。このころはソ連の命令で、モンゴル語もキリル文字で表記するようになっていたのです。 こうしたことを考えると、この切手はむしろ現代史の教材として使う方がよいでしょうね。ちなみに4枚のウチ、チンギス=ハンとジャムチの牌符は分かりますが、あとの2枚は何でしょうか?ご存じの方フォローをお願いします。

※内藤陽介氏から教えてもらったところによると、
20m Military Field Emblem
30m Tablets with Inscriptions
50m Stone Column
60m Genghis Khan  ということでした。左端が戦場での旗印、左から二番目が何かの石碑というところでしょうか。


 もう1種は1997年発行のチンギス=ハン切手。モンゴル軍の兵士と行軍の様子が描かれています。 こちらは$4.99(総支払い $7.94 )。

 ところで、チンギス=ハン、チンギス=ハーン、ジンギス=カン、どの呼び方が一番妥当なんでしょうか。私はこれまで「ジンギス」は中国風の呼び方かと思ってましたが、これはペルシア風の呼び方らしい。そして「カン」と「ハーン」は意味が違って、「ハーン」は唯一無二の君主という意味であり、国の王や部族の長を意味する「カン」よりも高いランクにある最高位の称号とのこと。そうすると「ハーン」と呼ぶのが妥当な気がしますが、そう簡単ではありません。現在では彼を「ハーン」で呼ぶのが一般的らしいですが、そう呼ばれるようになったのは彼の死後かなり時間が経過したあとのことで、生前は「カン」と呼ばれていたとのこと。存命中から「カーン」称号で呼ばれたのは、第2代のオゴタイかららしいです。この話が載っているのは、白石典之『チンギス=カン』(中公新書)。最初に本のタイトルを見たとき、「チンギス」と「カン」の組み合わせに違和感を感じましたが、なるほどそういうことですか。ちなみにこの本の著者の専門は考古学。発掘のエピソードは面白いです。

チンギス・カン―“蒼き狼”の実像

チンギス・カン―“蒼き狼”の実像

  • 作者: 白石 典之
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2006/01
  • メディア: 新書


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熊高生徒

ロックユー”が8/18に金曜ロードショーであるので是非見ようと思います☆
熊本城で無料映画上映がありますが【有頂天ホテル、Always三丁目の夕日、男たちの大和etc...】
やっぱり先生、見に行かれる(敬語あってるか自信がないです…)んですか?
by 熊高生徒 (2006-08-10 16:14) 

zep

『ロック・ユー』はおもしろいですよ。チャーサー演じるポール・ベタニー(『マスター・アンド・コマンダー』の船医さんとか、『ダ・ヴィンチ・コード』のシラスとか)がいい味出してます。でも勉強のじゃまにならないようにね。有頂天ホテル、Always三丁目の夕日、男たちの大和.....みたい映画ばかりです。が、「暑さに弱い・人が多いと気分が悪くなる・長い待ち時間には耐えられない」と3拍子そろった私にはちょっと無理そう。そもそも、子どもつれていきたくはないし、連れて行かなかったら非難を浴びるに決まってます(笑)。ということで、断念。子どもたちは、地元であってた『名探偵コナン』最新版の無料上映会に行ってましたが。子どもは元気なものです。たぶん敬語はそれであってると思いますが。「れる」って「受け身」っぽい感じが強いですよね。
by zep (2006-08-10 21:39) 

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