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DVD-BOX『ブリティッシュ・キングダム』 [歴史映画]

 ヘンリ2世とその妻子との確執を描いた『冬のライオン』、ヘンリ8世の生涯を描いた『キング・オブ・ファイヤー』、そしてメアリ・ステュワートとジェームズ1世親子を描いた『レジェンド・オブ・サンダー』の3作セット。それぞれプランタジネット朝、テューダー朝、ステュワートの代表的な王を描いた作品で、それぞれDVD2枚の計6枚で10時間という見るのにとても疲れるボックス。定評ある英ホールマークの製作でイギリスの歴史に関心がある人なら楽しめるけど、そうでない人には何がなんだかさっぱり分からないという、実に困った?大作セット。このボックスを観るときは、『英国王室史話』(大修館)でも読んで知識の補強をしたいところ。
 『冬のライオン』は、以前紹介した ピーター・オトゥール主演映画のリメイク。アリエノール・ダキテーヌを演じているのは、『危険な情事』のアレックス役がインパクト強いグレン・クローズ。愛憎半ばする見事な演技で、映画版のクールなキャサリン・ヘップバーンとはまた違った名演。キャサリン・ヘップバーンは映画版『冬のライオン』でアカデミー賞主演女優賞受賞をとりましたが、グレンはこの作品でゴールデン・グローブの主演女優賞をとったらしい。『キング・オブ・ファイヤー』はそれなりの作品。可もなく不可もない。3つの中では3番手。トマス・モアを描いた『わが命つきるとも』の方がいい。
 3本の中で一番面白いのは、『レジェンド・オブ・サンダー』かな。前半はメアリ・ステュワート、後半はジェームズ1世がそれぞれ主役。スコットランドとイングランドとの関係がよく分かるし、当時の議会の様子も実に興味深い。亡命してきたスコットランド女王メアリ・ステュワートの処刑をめぐるエリザベス1世の対応をもう少し描いて欲しかったところではありますが、この作品でのエリザベスはヒールっぽい役柄なので、まぁ仕方ないでしょう。目がちょっとイってる感じのボスウェル伯と、王位のために母を見殺しにしたジェームズ1世(ロバート・カーライル)の王位への執着ぶりと逡巡がよく伝わってきます。ガイ・フォークスによる「火薬陰謀事件(Gunpowder Plot)」や、王妃がデンマーク出身だったのは史実。「ナイス・ガイ(いい奴)」なんていうときの「ガイguy」はこのガイ・フォークスが語源らしいですね。色々と陰謀をめぐらすメアリの異母兄マリ伯ジェームズについてはWikipediaの記述が詳しいです。ガイ・フォークス事件については、こちらのサイト【シネマでUK&Irelamdを感じよう】をどうぞ。[http://britannia.cool.ne.jp/cinema/topic/0-guyfawkes.html]

 『世界の歴史教科書・イギリス3』(帝国書院)では、ジェームズ1世について以下のような記述があります。

 「このステュアート王家初代の国王は、決して雄々しくもなければ、愛嬌のある人物でもなかった。小柄で丸まると太り、貧弱な足、きょろきょろ動くどんぐり眼に長すぎる舌、外見からはどう見ても実際の年齢37歳よりは老けて見えた。おそらくこれはジェームズが病弱であったためであろう。というのも、彼は痔と鼻カタル、それに下痢を長い間患っていたからである。彼の癖も、よだれをたらし、鼻をほじり、食べすぎて始終気分が悪いと訴えるなど、気分の悪くなるものばかりであった。また、だれかが襲ってくるかもしれないからといって、必ず衣服におおぎょうな詰め物をする臆病者でもあった。まったくのところ、あの美しい母と勇敢で堂々たる風采の父ダ一ンリ卿を両親としているとは、信じがたいほどであった。
 しかしながら、このような醜い容姿と不潔な癖があったにせよ、ジェ一ムズにはそれなりの利点もあったのは、幸運であった。母の逃亡と投獄にあって、ジェ一ムズはその生涯のほとんどをずっとスコットランド国王として送ってきた。両親もなく、教師たちには打たれ、権力抗争にいとまのない貴族に脅かされた幼少のころの生活は、寂しく不幸なものであった。こうして彼は、徐々にではあるが、力によってではなく人をだますことで、残虐な貴族と偏狭な聖職者たちを抑えるようになった。スコットランドの歴史は古いが、ジェ一ムズの治世ほどうまく統治された時代はなかった。
 それ以外の面からみれば、ジェ一ムズはエリザべスの後継者としては適任であった。このテューダー家の女王と同様、ジェームズも高い教養を身につけており、聖書の研究に関しては玄人はだしであったばかりでなく、君主政や魔術、スポーツ、喫煙に関する書物も著している。ただこれほどの知識人にしては、妖術をひどく恐ろしがったことだけは、どうもいただけなかった。当時の人ぴとはこんなジェームズを笑わすにはおれず、また実際よく笑いものにした。こういうわけで、ジェ一ムズは「キリスト教徒のうちで最も聡明な愚か者」といわれた。」

 どんぐり眼や長すぎる舌って、王たるにふさわしくない条件なんですかね。

ブリティッシュ・キングダム DVD-BOX

ブリティッシュ・キングダム DVD-BOX

  • 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
  • 発売日: 2005/05/27
  • メディア: DVD


英国王室史話〈上〉

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  • 作者: 森 護
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2000/03
  • メディア: 文庫


英国王室史話〈下〉

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  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
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