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『山川デジタル指導書 世界史』(山川出版社) [授業研究・分析]

 昨年の実教出版に続いて[http://zep.blog.so-net.ne.jp/2017-11-18]、今年度は山川出版社がパワポ授業用のICT教材をリリースした。パッケージの名称は『山川デジタル指導書世界史 改訂版』で、「デジタル素材集」と「デジタル教材集」の2枚のDVD-ROMで構成されている。価格は3万8千円。「教材集」にはPDF形式の指導書が収録されているため「教科書の指導書」扱いとなり、基本的には教科書を販売している店でしか購入できない。「素材集」単体なら教科書販売店以外でも購入することが可能で、価格は2万円である。

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 2枚のうち、パワポ教材が収録されているのは「教材集」(「指導書」扱いの方)で、内容は以下の通り。
 ①教科書と指導書のPDFデータ(テキスト抽出可能)
 ②パワポ授業用スライドデータ
 ③デジタルマップ
 ④黒板投影用白地図
 山川出版社は、世界史ABそれぞれ3点計6点の世界史教科書を発行しているが、「教材集」には6点すべての指導書が収録されている。山川の指導書は6種類とも「授業実践編」と「研究編」の2冊セットであるが、「研究編」は6点とも同一なので、「授業実践編」が6点と「研究編」が収録されている。個人的には読むときには紙媒体の方が好みだが、これだけの分量がROM1枚に入っていることを思えば、持ち運びにはデジタルメディアの方が便利なのは言うまでも無い。
 大いに注目だったのがパワポ授業用のスライドデータ。実教よりも後発という点で「王者山川だけに、もっとすごいものを出してくるに違いない」と期待したのだが、実教とはコンセプトが全く異なるものを出してきた。実教版のパワポ教材は、基本的に「板書代わり」である。クリックすると重要事項がアニメーションで表示されていくもので、同内容の書き込みプリント(ワード形式)や一問一答、テスト問題、教科書本文まで用意されており、世界史の授業を初めて担当するという教員も、このスライドに沿って進めていけばだいたい授業の形になる。しかし、そのままだと一方的な説明による講義がメインとなる可能性が高く、工夫が必要である。一方、山川のパワポスライドは、より理解を深めるための説明用であり、テキストが主体の実教版とは異なり、地図や図版が大きなウェイトを占めている。このため教師の語り(説明)が重要な役割を果たすことになり、また生徒に対する問いかけも山川版の方が行いやすい。大まかなイメージとしては実教版よりも経験を積んだ教員向けという気がする。
 「素材集」は、「教材集」のパワーアップキットと考えてよい。「教材集」収録のパワポスライドのデータに、自分でつくったスライドを挿入したり既存のスライドをカスタマイズするときに活用できる素材集である。収録されている素材は、前述の山川出版社が発行している世界史教科書6冊に収録されている図版や表、グラフなどの画像データで、自作のプリントやパワポスライドに挿入できる。画像データは、教科書別、種類別(地図・年表・図・表・グラフ・史料・系図の7種:複数選択可)で関連するデータを検索してPCに保存して使用する。例えば、「すべての教科書」から「アヘン戦争」をキーワードに「すべての種類の画像データ」を検索すると、「三角貿易の概念図」や「アヘンの流入量と銀の流出量の折れ線グラフ」など22種のデータがヒットする。使いたい素材にチェックを入れて、「選択した画像をパソコンに保存」をクリックすれば、任意の場所に画像を保存できる。ただし、同じデータや類似のデータが異なる教科書に掲載されていることもあるため、実際の種類は22よりも少ない。また、肖像画をはじめとする絵画は収録されていない(ウィキメディアをはじめとするフリー素材がネット上で入手できるからであろう)。個人的な感想だが、「素材集」は、かつて株式会社ゼータ(https://www.zeta.co.jp/)が発売していたPCソフト「プリントメーカー」とほぼ同じである。余談だが「プリントメーカー」は収録データに間違いが多く、なかなか困ったソフトであった。指摘するたびに修正はしてくれたが、何度も間違いを指摘したお礼なのか、私の似顔絵画像データを3種類つくってくれた。
 最後に地図ソフトについて触れておく。「教材集」収録データのうち「黒板投影用白地図」は、黒地に白ラインの海岸線がはいった画像データで、国境線がはいっているものとそうでないものが用意されており、西アジアや東アジアなど地域ごとの地図も用意されている。黒板に投影して教師が黄色のチョークでデータを記入していくことができそうだが、活躍する場面はあまりないようにも思われる。また山川版「デジタルマップ」については、特筆すべき点はない。私の使用方法が良くないのか、画面上で線を引こうと思ったら二点間を結ぶ直線になってしまう。第一学習社の「世界史図表DVD-ROM」収録のデジタルマップも線をひくことはできないが、浜島書店の「デジタルアカデミア世界史」はフリーハンドで自在に線を引くことが可能である。黒板に投影すればチョークで線を入れることは可能だが、黒板ではなく大型テレビに投影している場合はチョークを使えないため、やはりアプリ上で線が引ける方が便利だろう。私の場合、世界史のICT教材として活用する機会が最も多いのは、「デジタルアカデミア世界史」になりそうだ。
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