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モーターサイクル・ダイアリーズ(ウォルター・サレス監督、2003年、アメリカ/イギリス) [歴史映画]

【映画について】
 キューバ革命の指導者、チェ・ゲバラ[http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%BB%E3%82%B2%E3%83%90%E3%83%A9]が、若き日に友人と敢行した南米大陸縦断旅行を、彼らの回想にもとづいて映画化した作品。制作総指揮は、俳優のロバート・レッドフォード。監督は『セントラル・ステーション』でベルリン映画祭グランプリを獲得した、ブラジル生まれのウォルター・サレス。主演のゲバラ役を好演しているのは、「ラテンのブラピ」と言われているメキシコ生まれのガエル・ガルシア・ベルナル。彼の陽気な友人アルベルト役として、いい演技をみせるロドリゴ・デ・ラ・セルナは、ゲバラとは“はとこ”の関係にあたるらしい。

【スートリー】
キネ旬DB[http://www.walkerplus.com/movie/kinejun/index.cgi?ctl=each&id=34949]

【見所など】
 DVDに収録されている特典映像でロバート・レッドフォードが述べているように、一人の青年の変容の過程が見所。つまりカリスマ的英雄ゲバラの誕生、がテーマではありません。
 主演のゲバラ役ガエル・ガルシア・ベルナルは「ラテンのブラピ」と言われているそうですが、ブラピと違ってどことなく頼りなげでシャイな感じ(それがこの人の魅力だと思いますが)。旅の最初では、比較的裕福な家庭に育ったお坊ちゃん風だったのが、だんだんゲバラみたいな風貌に変わっていきます。いい演技です。ゲバラの相棒として一緒に旅をしたアルベルトは、「自分たちは古代ギリシアやローマの知識はあったが、マチュピチュのことなんか知らなかった」と言ってますが(DVD特典映像)、旅の過程で南米の現実に触れていくうちに、徐々に顔つきが変わっていくわけです。マチュピチュ遺跡に立ち遠くを見つめるエルネストの表情は、出発当初とは明らかに違っています。そして最後、ベネズエラのハンセン病療養所を離れる前日、誕生パーティでのエルネストのスピーチも自然な感じで気負うところなく、それが逆に感動的。
 南米の自然を織り交ぜた映像も素晴らしい。あるときはアンデスの雪山をバイクを押しつつ登り、バイクが壊れたあとは、アタカマ砂漠を徒歩で縦断する。その中で出会う人々が二人を成長させていくわけですが、砂漠で出会った共産主義の夫婦、チュキカマタ鉱山(地理の授業ででてきますね)でみた労働者の現実、地主に土地を追われたインディオとの出会い等々、彼らが出会った人々って、すべていい表情をしています。私が一番印象に残っているのは、クスコにあるインカの石積みの町並み(学校で使われる世界史の資料集には必ず写真がのってる)を案内するインディオの少年の明るい表情。そしてハンセン病の療養所で出会った元患者の人々。陽気なトラックの運転手とか、未公開シーンに出てきた人たちもいい感じでした(なぜ未公開になったんでしょう?)。
 一大スペクタクルではないし、派手さもありません。ゲバラという、いわば反体制のヒーローが主役なんだけど、政治的な主張を声高に叫ぶ映画でもありません。不惑を迎え、日々の生活に追われる今の私には若干眩しすぎる映画ではあるものの、心に残る味わい深い作品でした。最後、遠くを見つめる老アルベルトの目が実に印象的。

モーターサイクル・ダイアリーズ コレクターズ・エディション

モーターサイクル・ダイアリーズ コレクターズ・エディション

  • 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
  • 発売日: 2005/05/27
  • メディア: DVD


モーターサイクル・ダイアリーズ 通常版

モーターサイクル・ダイアリーズ 通常版

  • 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
  • 発売日: 2005/05/27
  • メディア: DVD


モーターサイクル・ダイアリーズ

モーターサイクル・ダイアリーズ

  • 作者: エルネスト・チェ ゲバラ
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2004/09
  • メディア: 文庫


トラベリング・ウィズ・ゲバラ

トラベリング・ウィズ・ゲバラ

  • 作者: アルベルト・グラナード
  • 出版社/メーカー: 学習研究社
  • 発売日: 2004/10/06
  • メディア: 単行本


チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記

チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記

  • 作者: エルネスト・チェ ゲバラ
  • 出版社/メーカー: 現代企画室
  • 発売日: 2004/09
  • メディア: 単行本


ゲバラ日記

ゲバラ日記

  • 作者: エルネスト・チェ ゲバラ
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 文庫


チェ・ゲバラ伝

チェ・ゲバラ伝

  • 作者: 三好 徹
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2001/01
  • メディア: 単行本


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コメント 2

今度は双頭の鷲を読み終えた一生徒

学校の図書室にも講談社の文庫本で「チェ・ゲバラのはるかな旅」という、ゲバラの一生をたどった本がありますよ、ゲバラ入門には最適かもしれません。
by 今度は双頭の鷲を読み終えた一生徒 (2006-11-05 00:30) 

zep

ゲバラの一生を追った本なのでしょうか。ゲバラの活躍は、この映画の後の方が有名なので、彼について知りたくなったら、「映画後」をみてみることも大切でしょう。『双頭の鷲』の主人公ベルトラン・デュ・ゲクランについて、私はこの本を読むまでその存在を知りませんでした。実に興味深い人物です。その後帝国書院の『世界の歴史教科書』のフランスを見たら、しっかり取り上げられていました。まぁこういった歴史小説を楽しめるのも、世界史を履修してよかった点かも(笑)。でも受験生があんな長編小説を読んで大丈夫なの!?と、ちょっと心配です。
by zep (2006-11-05 14:43) 

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