樺山 紘一著『地中海』(岩波新書) [歴史関係の本(小説以外)]
6つのテーマにそれぞれ2人ずつの人物を取り上げ、地中海世界の歴史的特質と展開を探ろうという本。とりあげられたテーマと人物は、「歴史」でヘロドトスとイブン・ハルドゥーン、「科学」でアルキメデスとプトレマイオス、「聖者」で聖アントニウスと聖ヒエロニムス、「真理」でイブン・ルシュドとマイモニデス、「予言」でヨアキムとノストラダムス、「景観」でカナレットとピラネージ、で計12人。
著者と書名にひかれて買ったのだけれど、う~む今ひとつ期待はずれ。面白くないわけではないのだけれど、歴史エッセイなので、浅学な私は読んでいるうちに意識が拡散してしまう。第1章の「歴史」は面白く興味深く読めたのだけれど、あとが続かなかった。これは私が「授業に役立つに違いない」と思って買ったら、使える話がほとんどなかったということによるもの。ですから全面的に私の責任です。私の場合歴史の本が面白いと感じるのは、中途半端に知っていたことに新しい事実が付け加わるとか、これまでの認識がくつがえされるとかいった場合なんですが、そういったことがこの本に関してはほとんどありませんでした。これまで読んだ本に書いてあったとか、名前も初めて聞くような人(マイモニデスとか、ヨアヒムとか)か、のどちら。この本の面白さは、6章をトータルで捉えて、その中から自分なりの「地中海像」を造りあげるところにあると思いますが、私はまだそこまでのレベルにはありません(-_-)。『フランス史10講』のような解説本は、私好みなんですがねぇ。
地中海大いに興味のあるところです。私にとっての
歴史ものの視点はやはり現在です。現在なくして
歴史なしといったところでしょうか。それとヴィヴィドさ
といったようなものでしょうか。この樺山さんの地中海
を読んでみたいと思います。
by yoku (2006-10-05 04:40)
ヴィヴィッドさ、という点では『地中海』はかなりオススメですが、現在的な視点という点では、少々物足りなさを感じるかもしれません。すこしかたく、かつ古くなりますが、西洋中世史家の筆になるもので古典的名著としては、増田四郎『ヨーロッパとは何か』(岩波新書)、木村尚三郎『西欧文明の原像』(講談社学術文庫)、堀米庸三『西欧精神の探求』(日本放送出版協会)、鯖田豊之『肉食の思想』(中公新書)といったところでしょうか。いずれも通史ではありませんが、中世史家によるヨーロッパ文化論として優れた作品です。最近でた本では、小田中直樹(専門はフランス近代史)『フランス七つの謎』(ちくま新書)が面白いですが、これは現代文化論です。まだ他にもあると思いますが、私が読んだことのあるものではこういったところです。
by zep (2006-10-05 17:14)
いろいろあげていただきありがとうございます。
是非、参考にさせていただきます。
by yoku (2006-10-07 09:24)