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香辛料を授業でどう使うか [授業ネタ]

 インド・東南アジア産の香辛料の中で、胡椒をヨーロッパの人々が必要とした理由を述べた文として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
  ① 火薬の製造に用いられたため。
  ② 染料の一種として重用されたため。
  ③ 宗教儀式において使われることが多かったため。
  ④ 肉を食べる際、その腐敗防止と調味に利用されたため。
                           (1999年度 センター追試験 世界史B 第4問C )

 香辛料への欲求が大航海時代到来の一因となったのは有名な話。世界史の資料集には、大航海時代の箇所で必ず出てきます。前々回で紹介した「TOSSランド」にも、「胡椒を使って大航海時代を授業する」という実践が紹介されています。山川出版社の『世界史写真集(第Ⅰ期)』にも取り上げてある(No.85)マルテルスの地図[http://www.yamada-kj.com/oversea/over_zatsu/map_hi/1490_mar/1490_mar.html]を使った意欲的な実践ですが、この実践を手がかりに授業ネタとしての香辛料をどう使うか、考えてみましょう。

 この実践で気になった点は、説明1で「『胡椒』や『唐辛子』を「香辛料」といいますが、これらはアジアの特産物であり、」とある点です。トウガラシは新大陸原産というのが、現在では通説だと思います。ウチの学校で使っている浜島書店の『新詳世界史図説』にも、「アメリカ大陸からもたらされたもの」の一つとして掲載されています(127ページ)。星川清親著『栽培植物の起源と伝播』(二宮書店)によると、トウガラシはすでにBC6500~BC5000年ころのメキシコ中部ラワカン渓谷の遺跡から出土しているので、このあたりが原産地だろうということです。そもそも唐辛子を「チリペッパー Chili pepper」と呼ぶのは、南米の国チリに由来します(リュシアン・ギュイヨ著『香辛料の世界史』白水社、128ページ)。『栽培植物の起源と伝播』によると、トウガラシは1493年(コロンブス新大陸到達の翌年。)にはスペインに伝わり、1548年にはイギリス、そして16世紀には中欧諸国に伝わっています。インドには1542年、中国へは明朝末期の1640年に伝わり、わが国へは天正11年(1542年、鉄砲伝来の前年)にポルトガル人がもたらし、その後文禄・慶長年間にも伝来しています。キムチの本場朝鮮には、16世紀末にはいったとのこと。したがってトウガラシは、大航海時代のオープニングではなく、世界商業の展開というテーマで使うのがいいのではないでしょうか?トウガラシの教材化で参考になるのは、『世界史のなかの物』(千葉県歴史教育者協議会世界史部会編、地歴社)という本。この本の「嗜好」という章でトウガラシが取り上げられており、トウガラシの受容の仕方から文化の違いをみるという興味深い視点です。私が住んでいる菊池市のお隣、大津町にある「キムチの郷」では「倭播椒」という商品を売っていますが、「播椒」(「蕃椒」とも書くらしい)とはトウガラシのことだそうです。

 次にコショウですが、ビン入りのコショウではどうしてもインパクトに欠けます。ここはぜひ原型をとどめたコショウを教室に持ち込みたいところ。楽天市場では、黒コショウも白コショウ共にもとの固まりの状態で売っています。楽天市場のトップページから、「食品・スイーツ」→「調味料」→「スピアス」と進むと、「ブラックペッパー(黒コショウ)」「ホワイトペッパー(コショウ)」という項目があります。黒コショウで500グラム714円、500グラムで882円。会わせて1キロ教室に持ち込めば、インパクト大でしょう。黒コショウと白コショウはどう違うのでしょうか?違いについては、Wikipediaを参照のこと[http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%82%A6]。ウーロン茶と緑茶、紅茶の違いとにてますね。もし楽天市場から購入する場合、↓下のリンクから購入していただくととてもうれしいです。アフリエイトだから(笑)。

 TOSSの趣旨には賛同しますが、掲載されている授業は玉石混淆。中でも歴史関係の授業に限れば、詰めの甘さが目立ちます。特に今回のように、高校生にも分かるような初歩的誤りはいただけません。向山洋一という高名な方が主宰されているのですから、掲載しようとする人もそれをチェックする人も、もう少し向山氏に配慮して気を配っていただきたいものです。

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