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『段階式 世界史論述のトレーニング』(Z会出版) [大学受験]

 旧版『世界史論述のトレーニング』をリニューアルした問題集。感想ならびに気づいた点をいくつか。

(1)問題が別冊なのは使いづらい
 旧版もそうでしたが、問題が別冊なのは使いづらい。これは私の場合、問題と解説・解答を見比べながら読むからでしょう。実際の受験生諸君はどう感じているのでしょうか?

(2)「指定字数が少ない=書き易い」とは言えない
 少ない字数から多い字数へ、という編集は、かつて『世界史論述問題の解き方』(山川出版社)という問題集がありました。一般的には「指定字数が少ない=書き易い」というイメージがあるようです。指定字数が少ないという点は、書きやすいことの必要条件だとは思いますが、十分条件とは思えません。この問題集で取り上げられている問題で言うと、第3章の2(一橋大)、5(大阪大)はそれぞれ200字ですが、第4章の5(筑波大)よりも難しいような気がします。

(3)「知識の整理」は不要
 問題の最初に「知識の整理」という項目がありますが、論述試験を課す大学を受けようとする生徒であれば、これくらいは知っていて当然のことばかり。

(4)解答例を二つもつける必要はない
 解答例が二つあげられている問題がいくつかあります。大きく違うならばまだしも、たとえば177ページ、221ページ、251~252ページ、267ページに掲載されている二つ解答例は、それぞれほとんど変わらないように思えます。特に第4章3の問題は、これだけ指定語句が多いのですから、300字とはいえ解答はほぼ決まってしまうはず。「どこが違うのか?」と読者を混乱させるだけのような気がします。

(5)採点ポイントの根拠が不明
 これは旧版にもあったことです。221ページ、「モンゴル帝国が成立した」だけでなぜ3点なのですか?また268ページでは、「通信の発達は列強の植民地支配に大きな役割を果たした」が2点で、「運輸・通信手段の発達は、他方で植民地支配に苦しむアジア・アフリカ諸国の民族意識を高める役割も果たすことになった」も2点になっています。この合計4点分は、問題のリード文にある「運輸・通信手段の発展が、アジア・アフリカの植民地化を促し、各地の民族運動を高めたことについて」という文と同じことを言っているように思えます。リード文の内容を書くだけで4点というのは、どうも腑に落ちない。

(6)問題の選択基準が不明
 解説は旧版より詳しくなっていますが、その分問題数が減り、またあまり重要でないと思われる問題も少なくないように感じます。最近の問題を掲載するという編集方針のようですが、掲載されている問題は旧版の方がよかったのでは?一橋大・東大の受験生には、この問題集だけでは不安。

(7)解答例の妥当性
 細かいことを言えばきりがないのですが、まず212ページの生徒の答案についてのコメント①。首位権争いについて、書いたことはよかったのか悪かったのか、どちらでしょう。単に補足説明してあるだけなのでしょうか?158ページの①も同様。「口実に」という点を明記せよ、という指示なのでしょうか?次に167~168ページ。模範解答よりも「生徒の答案」のほうが、よりよい答案のような気がします。「革命的英雄」という側面なら「革命の成果の伝播」、「侵略者」という側面なら「対外戦争」を思いつくほうが普通だと思いますが?そして242ページ。これは以前取り上げた問題[http://blog.so-net.ne.jp/zep/archive/20051025]ですが、「今日の政治と文化の原型が確立された。」となぜ言えるのか、この解答例では見えてこない。

トータルでみると、旧版のようが良かった.....かな。
 


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