『ムッソリーニとお茶を』(フランコ・ゼフィレッリ監督、1998年、アメリカ) [歴史映画]
【映画について】
第二次世界大戦前~中のイタリアを舞台に、英米女性たちの生き方を、イタリア人少年との交流を軸に明るく描いた作品。戦争がモチーフながら、流血シーン一切なし、という異色作です。監督は『ロミオとジュリエット』『永遠のマリア・カラス』のフランコ・ゼフィレッリ(彼はフィレンツェの出身)。出演は007ジェームス・ボンドの上司Mを演じ、『恋に落ちたシェークスピア』でアカデミー助演女優賞を獲得したジュディ・デンチ、『ミス・ブロディの青春』でアカデミー主演女優賞を受賞し、ハリー・ポッターのシリーズでマクゴナガル先生を演じているマギー・スミスほか、合計で22もアカデミー賞候補&受賞した豪華女優たちの名演技が堪能できます。
【ストーリーその他】
キネ旬報DB[http://www.walkerplus.com/movie/kinejun/index.cgi?ctl=each&id=31883]
【見所その他】
それぞれの女優たちの存在感が強く、あえて主役をおかなかった点が成功しています。名だたる女優陣の中で、前半のルカ少年(子供時代)の演技がすばらしい。そしてなにより映画の大部分を占めるフィレンツェとその芸術。ブルネレスキが設計したサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂(花のサンタマリア大聖堂)が、たびたび登場します。フィレンツェ出身の監督らしい作品です。
歌手としても有名なシェールは「煙が目にしみる」を歌いますが、さすがにいい感じですね。ジュディ・デンチはシェークスピア俳優として有名で、ケネス・ブラナーの『ヘンリィ5世』にも出演していましたが、オーストリアの学校にはいるためにイタリアを離れるルカ少年を励ますため、女性たちが皆で口にするセリフは、シェークスピアの『ヘンリー5世』でアジンコートの激戦前にヘンリー5世がイングランド兵を激励するとき行った演説!「ロミオとジュリエット」や、登校途中に「遅刻してもこれを見なきゃ」と美術館に寄り道をする女性たちの教育も素晴らしい。ボッティチェリの「春」が収められているのは、かのウフィツィ美術館。ここでお茶を飲むなんて......。他にもピカソの「アヴィニョンの娘たち」や、キリコの「不安を与えるミューズたち」といった名作も登場し、絵画に詳しいと数倍楽しめる作品。
特に素晴らしいのは、女性たちが強制移住させられたサン・ジミニャーノ(San Gimignano)[http://www.sangimignano.com/]の町。私はこれまでこの町のことを全く知らなかったのですが、「ギルランダイオ(Ghirlandaio)のフレスコ画がある100の鐘楼の町」で、映画で女性たちが守ろうとするのが、ギルランダイオの「聖フィーナの葬儀」です。
映画の中には、かの黒シャツ隊が登場しますが、イタリアでもユダヤ人狩りが実行され、ドイツ軍が駐屯していた事実は知りませんでした。
冒頭には、フィレンツェに縁の深い詩人、エリザベス・ブラウニング(ロバート・ブラウニングの夫人)の詩も登場します。イタリアで美術館めぐりをしたくなる映画でした。
機会があればこの映画見てみたいと思います。さて、「墨攻」の映画見られたでしょうか?漫画を全て映画化したわけではありませんでしたが、戦争の空しさ感じさせられました。ところで最近の戦争モノの映画で「トロイ」や「キングダム・オブ・ヘブン」の城攻めのシーンがよく似ているような気がします。今回ちょっとびっくりなのは気球に乗って城攻めしていたことです。本当にあったのかしらん…。あと時間があれば見ようと思ったのですが、「マリーアントワネット」は歴史的に見る価値なし…との隣りの同僚に言われパンフのみの購入となりました。
by オガピー (2007-02-06 23:10)
おお、『墨攻』をごらんになったのですか!予告編を観たところでは、とてもおもしろそうです。観てみたい......のですが、例によってDVDリリース後の鑑賞となりそうです。漫画を読んだ後に小説を読むと、あまりのあっけなさにちょっと拍子抜けします。酒見賢一氏の『後宮小説』、買ったきり読んでないので、早く読もうと思っているところです。
by zep (2007-02-07 20:53)