海禁 [授業ネタ]
東大の文系を受ける場合、「地歴は世界史と地理、センターの理科は地学が有利」という話はよく聞く話ですが、今年文Ⅰに合格したMくんはあえて日本史と世界史を選択して文Ⅰに合格した優秀な生徒(理科は何を選択したのか聞き忘れた)。Mくんは一年生の時に現代社会を担当しただけですが、時々世界史に関する質問をメールで送ってきてくれてました。彼のような生徒から受ける質問はなかなか勉強になるのですが、私としても調べる猶予時間が与えられるので、結構ありがたかったかも(笑)。でも試験前日に東京から送信された質問メールを、翌朝学校で気づいたときにはあせりました。以前紹介した『東大合格への世界史』(データハウス)という本を読んでみようという気になったのは彼の質問がきっかけ。もらった質問から類推するに、Mくんもこの本の解答には違和感をもっていた様子。
以前彼からもらった質問関係で、確認したくなったのが中国の海禁のこと。東京大の2002年の第1問で指定語句になっていますが、明末清初の解禁について説明してくれという質問です。このわかりにくさは、ウチの学校で使っている山川の『詳説世界史』の記述にもあらわれています。具体的に言うと、163ページ11行目「清朝は海禁を解除し.....」の「海禁」と、16行目「清朝の禁令をおかして東南アジアに住みつき....」の「禁令」とは具体的にどう違うのかという点です。私も自信がなかったので、山川出版社の編集部に問い合わせをしてみたところ、丁寧に文書で回答をいただきました。以下概略を示します。
「海禁」には広い意味での海禁と狭い意味での海禁とがあり、教科書で「清朝は海禁を解除し」とあるのは狭い意味である。この狭い意味での海禁は、人民の海上交易を一切禁止するもので、「明代中期までの海禁」とか「清初の海禁・遷界令」がごれにあたる。これに対して「清朝の禁令をおかし」の禁令は、広い意味の海禁である。これは海上交通や交易、海を通っての出入国などに関わる様々な規定を指している。狭い意味の海禁が行われておらず、民間人の海上交易・海上交通が許されている時期にも、広い意味での海禁は続いていた。
いただいた回答によると、広い意味の海禁(教科書でいう「禁令」)には、「軍需物資を他国に売ってはいけない」「海賊と結託してはいけない」「手続きをせずに出国してはいけない」「民間人が海上貿易を行う際には登録して許可を得、一定年限(三年など)の間に帰ってこなければならない」といったものがあるそうです。東南アジアに住み着いてしまった人々は、こうした広い意味での海禁に違反していたということになります。つまりどちらも海禁ということはできるものの、別物ということになります。勉強になりました。ということで、東大の20002年の第1問は華僑の問題なので、海禁の指定語句は教科書の記述「清朝の禁令をおかして」の部分をそっくり拝借して、「清朝の海禁をおかして」と使うのがいいと思います。
デアゴスティーニの『週間古代文明』ですが、授業で使えそうなのは第1号だけ。ツタンカーメンの復元CGは、授業で生徒に回すと使えるが、2号以降はちょっと使えない。ヒエログリフのスタンプは欲しいなぁ。
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