惣領冬実『チェーザレ』(講談社、モーニングKC) [マンガ]
ルネサンス期のイタリアにおける「悪の華」的なイメージが強いボルジア家。その中でもひときわ有名なのがチェーザレとルクレチアの兄妹ですが、この作品はタイトル通りチェーザレ・ボルジアを主人公とした物語。本邦未訳のサチェルドーテ版チェーザレ・ボルジア伝(チェーザレの伝記では、最も評価が高いらしい)をもとに、かなり細かい部分にまで考証されている作品です。現在『モーニング』(講談社)にて連載中。コロンブスやレオナルド・ダ・ヴィンチ、そしてマキャヴェリという世界史の教科書に登場する「大御所」たちも登場します(浜島書店の資料集『NEW STAGE 世界史詳覧』では、マキャヴェリの『君主論』がチェザーレを念頭において書かれたというエピソードが、宝塚(月組)公演「チェザレ・ボルジア」の写真とともに載っています)。
(現段階で)最も印象深いのは、イスラーム文化を受容したスペイン人を避難するフランス人に対して、チェーザレが反論する場面(第3巻)。名シーンです。第2巻で、コロンブスがミゲルに対してともに航海に行こうと誘うシーンの会話は、イベリア半島におけるユダヤ教徒を語る上で使えそう。
最初読んだときは、「こんな作品が一般の読者に受け入れられるのかなぁ?」という思いを抱きましたが、読者の評判もよろしいようです。サブキャラのアンジェラが「世間知らず」ゆえに、読者の代わりに当時のフィレンツェの状況を勉強してくれますから、詳しい歴史的な知識がなくても楽しめます。テレビドラマ『ガリレオ』みたいに、ストーリーとは無関係な部分で細かい描写をすることも、支持される要因かもしれません。サブキャラが魅力的なのもいいです。先日NHKで放送された『プロフェッショナル~仕事の流儀』は、、魅力あるキャラクターについて語っておられました。この漫画に登場するチェザーレ・ボルジアも面白いキャラクターです。それを際だたせるアンジェロやミゲルのキャラクターもいい感じ。
チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (塩野七生ルネサンス著作集)
- 作者: 塩野 七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/07
- メディア: 単行本
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