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1988年の一橋大学の問題 [大学受験]

 今日から二次試験に向けての特別授業が始まりました。論述世界史は全12回シリーズですが、これからが本番。
 第一回目は過去問を3題ほど解説しましたが、そのうちの一つが1988年の一橋大の問題です。

 アメリカ合衆国とロシアの近代化において1860年代の奴隷制と農奴制の廃止は、重要な画期であった。それぞれについて廃止までの経過とその意義について述べなさい。その際、アメリカでは奴隷制が国内の戦争を経て廃止されたのに対して、ロシアでは農奴制が大きな政治的混乱もなく廃止された理由についても言及しなさい(400字以内)。

 この問題は『世界史論述練習帳』(旺文社)と『詳説世界史論述問題集』(山川出版社)に解答例と解説が掲載されており、両者を比べてみると大変興味深いです。
 理由については『練習帳』の方が明快です。書き方も、最後にもってくるほうがいいと思います。違ってるのは、「意義」の部分。アメリカの場合は『練習帳』の方がいいように思いますが、ロシアの場合は『詳説』に軍配をあげたい。『練習帳』で、「都市にに移って工場労働者となった」を「間違い」としていますが、『興亡の世界史14 ロシア・ロマノフ朝の大地』(講談社)を読む限りでは、間違いとも言い切れません。東書の『世界史B』では「工場労働者を創出して工業化への道を開こうとするものであった」とあります(実際そうなったかどうかまでは言及されてませんが)。『練習帳』では「地主貴族を説得して」も間違いとしていますが、これも前掲書を読む限りでは間違いとも言い切れません。「土地を失った農民」というのは確かに間違いです。「人格的自由を得た」くらいにしておくべきでした。
 北部が奴隷制度に反対した理由として、山川の『詳説世界史』では人道的理由しかあげてありませんが、同じ山川の『新世界史』では「自由な労働力確保のため」という記述があります。いずれにせよ、生産意欲が低い奴隷は資本主義になじまないということでしょう。彼らを解放して賃金労働者とし、消費者としての役割をも担わせるほうがメリットは大きいはず。


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