SSブログ

新保良昭『ローマ帝国愚帝列伝』(講談社新書メチエ) [歴史関係の本(小説以外)]

 かなり面白い本。「淫蕩帝」としてカリグラとエラガバルス、「放埒帝」にはネロコンモドゥス、そして「残虐帝」にドミティアヌスとカラカラを取り上げ、それぞれのエピソードが紹介されています。この本の面白い点は、エピソードを紹介した第2~4章のほか、第1章では愚帝との関わりでローマ皇帝についての解説(強力な権限を有したにもかかわらず、クーデタや暗殺等個々の皇帝の地位は脆弱だった理由、皇帝の財産など)、第4章ではローマ帝国の構造(愚帝が国を治めたにもかかわらず、ローマ帝国がつぶれなかったのはなぜか)等にも説明されており、大変興味深い一冊です。  アマゾンのレビューでは批判的な文が目立ちますが、それは内容に関わるものではなく多くは「同性愛」についての表現にかかわるものです(ローマにおける正しい同性愛の作法:69ページなどは、私には授業で話すネタとしてたいへん興味深い)。また「情報源が信頼できない」という批判は、研究者には重要なことでしょうが、「とにかく何でもいいから、手当たり次第にオモシロ授業ネタをかき集めたい」という高校の世界史教師の私にとっては、あまり気にならない批判です。逆に、出典が明らかという点を評価しています。  アマゾンでのこの本のレビューは、やや「炎上」気味ですが、「西洋中心史観」を批判する一方で、「まともな先進国」という表現(「先進国」とそれに対比された「発展途上国」という概念は有効ではない、という見方はコンセンサスを得つつあるように思うのですが?.....もっとも世界システム論では中国の発展を明快に説明できないという欠点もありますけど)やジョン・ボズウェルが引き合いに出されている点にも首をかしげてしまいます。

ローマ帝国愚帝列伝 (講談社選書メチエ)

ローマ帝国愚帝列伝 (講談社選書メチエ)

  • 作者: 新保 良明
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2000/04
  • メディア: 単行本


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。