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今年の九州大学と東京外国語大学の問題 [大学受験]

 今年の入試で、私がいちばん注目していたのは九州大学文学部で、今年から課せられることになった地歴の二次試験。
 受験生のゾーンから、名大や北大、阪大等のイメージかなと想像していたが、[1]が大論述(600字、30点)、[2]が中小の論述(240字、60字)と単問の組み合わせ(40点)、[3]が単問(30点)。構成は東大とほぼ同じ感じ。大論述が600字というボリュームなのは意外だった(私の予想は400~450字)。[3]が平易なレベルなので、[3]はできて当たり前、[2]は確実にとって[1]で勝負という東大のパターン通り。東大文Ⅲ受験生が流れてくることを見込んでる?


[1]
 近年よく話題となる「グローバル化」は、実際には15~16世紀の西欧による「地理上の発見」以来、絶え間なく続いてきた現象である。そこでは人・モノ・文化が政治・経済・宗教など様々な理由で移動し、現在ある世界の姿を形作ってきた。
 その中で特に激しい変化が生じてきたのが、現在のアメリカ合衆国にあたる地域である。17世紀から20世紀半ばにかけて、その地域の住民構成がどのように変化してきたか、その背景とともに600字以内で説明しなさい。なお、下記の語句を一度は使用し、下線を付すこと。
     大陸横断鉄道   メイフラワー号   ジャガイモ飢饉   タバコ
     奴隷解放宣言   先住民の強制移住  アインシュタイン  ホームステッド法



 リード文中の「人・モノ・文化が政治・経済・宗教など様々な理由で移動し、現在ある世界の姿を形作ってきた」という一文は、今年の東大の第1問のリード文にある「人・モノ・カネ・情報がさかんに行きかうようになった」「交流の諸相について、経済的・および文化的(宗教を含む)側面に焦点を当てて」とい文言と奇しくも通じる。受験生の中には、東大の2013年の問題を思い出した人も多かったのではないだろうか(東大では2002年に中国系の人口移動を扱った問題も出題されている)。
 ただ「住民構成がどのように変化したか」という問い方はちょっと不親切なような気がする。住民構成というなら、「先住民が100%だったのが、ヨーロッパ系が○%を占めるようになり...」のように割合に言及しないといけないが、割合を述べるのは不可能。したがって、出題者が要求しているのは、アメリカの人口構成にどのような要素が加わっていったのかということまでだと思われる。今年の九大は指定語句から、先住民の他イギリス系、アイルランド系、中国系、ユダヤ系、アフリカ系と書くべき内容は十分判断できる。

 各予備校が発表した解答例をみてみた。「変化」を要求しているのだから、他地域から人口が流入する前のアメリカ大陸の先住民について言及しないわけにはいかないだろうが、これを書いているのはKだけ。しかしKの解答例は「奴隷解放宣言」の使い方がよくない。YとSは「奴隷解放宣言で奴隷制が廃止されたので、安価な労働力としてアジア系を導入」というスムーズな使い方をしている。Kは公民権法についても言及しているが、これは「住民構成の変化」とは関係ないだろう。19世紀末の新移民に言及することは当然として、Sが第二次大戦後の中南米からの移民やキューバ革命に言及しているのは目を引く。

 今年の問題を見る限り、九大の世界史対策としては東大の過去問演習がベスト。


 今年の国公立二次の問題で良問だと思ったのが、東京外国語大学の問題。ウィーン体制のもとでイギリスがポルトガルに奴隷制度の廃止を要求した理由を、統計資料(折れ線グラフ)をみながら、人道的理由ではなく経済的な理由から説明せよという問題。指定語句に「安価な労働力」という語句があるのもユニーク。問題の別のページに「イギリスの奴隷制度が廃止された」という説明がある「1807年」が指定語句となっている。内容ももちろんだが、ヒントの出し方も面白い。
 東京外国大学の世界史は、近現代がおもに出題され、これまでは要項にもそのように書いてあったが、今年度は要項にそのような記述は見あたらず、「ヴェーダ」が出題されていた。
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