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仮説実験授業 [授業研究・分析]

 20世紀前半のアメリカ関連で思い出すのが、仮説実験授業による「禁酒法と民主主義」の授業。小学生を対象にした授業の記録が、雑誌『たのしい授業』1988年12月号に掲載され、中学生を対象にした授業の記録は同じく1989年11月号と12月号に掲載された。仮説実験授業は故板倉聖宣先生が提唱した授業手法で、「授業書」と呼ばれるテキストを用いて進められる。所与の問題に対する自分の「仮説」を、討論という「実験」を通じて検証していくことから仮説実験授業とよばれ、このプロセスを他の問題にも応用できるようになることを目指している。そして、雑誌のタイトルにもなっているように「たのしい授業」であるべきだというのも仮説実験授業の大きな主張である。
 アメリカの禁酒法をテーマにした授業書は『禁酒法と民主主義』(仮説社)として1983年に出版されており、雑誌『たのしい授業』に掲載されている記録は、この授業書に基づいて行われたものである。『禁酒法と民主主義』の「はしがき」には、中学校や高校の社会、道徳、ホームルームなどで使用してほしいとあるが、「酒を飲んだりタバコを吸ったりするのはいいことだと思うか」という質問から始まる授業書を一読してみたものの、高校の世界史の授業ではあまり使えないのではないかと当時は思ったものである(読み物としては面白く感じたが)。

 仮説実験授業を知ったのは大学3年で受けた社会科教材研究の授業がきっかけだった。授業担当の河南一先生から、中学社会歴史分野を想定した縄文時代の授業が実際の授業形式で紹介された。「なぜ縄文時代は西日本よりも寒冷な東日本に人が多く住んでいたのか」という問いに基づく探究を通じて、社会的事象の説明ができるようになるという目標は森分先生の理論に基づくが、授業書という形式は仮説実験授業の手法である。この授業内容は、藤岡信勝・石井郁男編『ストップモーション方式による1時間の授業技術・中学社会歴史』(日本書籍)に掲載されているが、実際は大学4年のとき一緒に教育実習に行った河南先生のゼミ生が授業を行っていた。

 「問い」と「お話」で構成される仮説実験授業は誘導尋問との批判も受けそうだが、私自身は使える授業理論だと思っている。仮説実験授業はもともと理科の授業から始まった手法だが、『たのしい授業』1989年11月号(私が教員となって一年目)には板倉先生による高校世界史のインドとイギリスの綿工業関連の記事が掲載されていた。当時の私は、板倉先生がインドとイギリスの綿工業について書かれた文の中にある「子どもたちに<できる>と感動させてあげる」「自分たちの感動を子どもたちに伝えるために」という言葉に感銘を受け、勉強の楽しさを伝えたいと思って教師になったことを再認識させてもらった。今でも仕事が嫌になったときは、この記事を読み返す。

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 最近では、2013年に出版された田尻信壹先生の『探究的世界史学習の創造』(梓出版)では、先史時代の仮説実験授業が紹介されている。



探究的世界史学習の創造

探究的世界史学習の創造

  • 作者: 田尻信壹
  • 出版社/メーカー: 梓出版社
  • 発売日: 2017/04/01
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)



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