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今年の東大の問題 [大学受験]

今年の東大の大論述(第1問)は、以下のような問題。

 近代世界は主に、君主政体や共和政体をとる独立国と、その植民地からなっていた。この状態は固定的なものではなく、植民地が独立して国家をつくったり、一つの国の分裂や解体によって新しい独立国が生まれたりすることがあった。当初からの独立国であっても、革命によって政体が変わることがあり、また憲法を定めるか、議会にどこまで権力を与えるか、国民の政治参加をどの範囲まで認めるか、などといった課題についても、さまざまな対応がとられた。総じて、それぞれの国や地域が、多様な選択肢の間でよりよい方途を模索しながら近代の歴史が進んできたといえる。
 以上のことを踏まえて、1770年前後から1920年前後までの約150年間の時期に、ヨーロッパ、南北アメリカ、東アジアにおいて、諸国で政治のしくみがどのように変わったか、およびどのような政体の独立国が誕生したかを、後の地図Ⅰ・Ⅱも参考にして記述せよ。解答は、解答欄(イ)に20行以内で記述し、以下の8つの語句を必ず一度は用いて、それらの語句全てに下線を付すこと。


アメリカ独立革命  ヴェルサイユ体制  光緒新政  シモン=ボリバル
選挙法改正*  大日本帝国憲法  帝国議会**  二月革命***


*イギリスにおける4度にわたる選挙法改正
**ドイツ帝国の議会
***フランス二月革命



 問題の要求は、「1770年前後から1920年前後までの約150年間の時期に、ヨーロッパ、南北アメリカ、東アジアにおいて、諸国で政治のしくみがどのように変わったか、およびどのような政体の独立国が誕生したか」。同じ地域の時代が異なる地図を並べた点で、1992年東大の第1問(この問題を取り上げていない論述問題集はないと思われる)を思い出した人も多かったのではないだろうか。

 構成は、時系列か地域に分けるかのどちらかになるが、地図が出ているので地域ごとに「ヨーロッパでは~、南北アメリカでは~、東アジアでは~」と書いていきたい。600字なので、ヨーロッパ200字+南北アメリカ200字+東アジア200字をベースとして、多く書くことができる部分は字数を多くするなどの調整していく。なお各予備校が公開した解答例をみると、代ゼミと河合塾が時系列で、東進が地域ごとになっていた。発表が遅れた駿台の解答例から歯切れの悪さを感じるのは、作成者が時系列で書くかそれとも地域別に書くかで迷ったからか?駿台と代ゼミは指定語句からスタートしているが、いきなり指定語句からの書き始めは、これから論述を練習しようという人にはちょっとハードルが高い。目にした予備校の解答例では、東進の解答例がよかった。

指定語句を3つの地域に分けてみると、以下のようになる。
・ヨーロッパ・・・・ヴェルサイユ体制、選挙法改正、帝国議会、二月革命
・南北アメリカ・・・・アメリカ独立革命、シモン=ボリバル、
・東アジア・・・・光緒新政、大日本帝国憲法

 ヨーロッパに関する指定語句が、他の二つの地域に比べると多いので、書けることが多いはず。なので、この段階で時数配分はヨーロッパを多めにしたい。ヨーロッパ300~350字+南北アメリカと東アジアで300~250字程度か。

地図から読み取れる変化。
・ヨーロッパ・・・・立憲君主政の国が増えているが、フランスは共和政となっている
(フランスが目立っているので、フランス革命に触れないわけにはいかない)
・南北アメリカ・・・・アメリカ以外はほとんど植民地だったのが、成文憲法を持つ共和政の独立国が大勢となっている
・東アジア・・・・多くが君主政の国だったのが、日本が立憲君主政、朝鮮が植民地、中国が共和政となっている

【私の解答例】
ヨーロッパの多くは君主政国家であったが、フランスは18世紀末に共和政となった。その後君主政が復活したが、二月革命後は男性普通選挙を採用した第二共和政となり、第二帝政を経て成立した第三共和政以降は共和政が定着した。イギリスは君主政が続いたが伝統的に議会の力が強く、選挙法改正を通じて選挙権が拡大し、第一次世界大戦後には女性参政権も実現した。これに対してドイツ帝国は君主権が強く、男性普通選挙を導入した帝国議会の力は弱かった。第一次世界大戦後、男女普通選挙を定めた憲法を持つドイツ共和国となった。第一次世界大戦でヨーロッパの帝政諸国家は解体し、ヴェルサイユ体制の下、民族自決の原則により多くの共和政国家が生まれた。北アメリカではアメリカ独立革命後に合衆国が共和政国家として成立し、19世紀前半には男性普通選挙が実現したが、対象は白人だけであった。同じころ南アメリカでは多くの国がシモン=ボリバルらの指導によってヨーロッパの宗主国から独立し、共和政となった。東アジアでは、日本が1889年に大日本帝国憲法を制定して立憲君主政国家となったが、ドイツ同様に君主権が強かった。日本は清朝を日清戦争で破り、台湾を植民地とした。一方敗れた清朝は日本にならって立憲君主政をめざす光緒新政を断行したが、辛亥革命によって清朝は倒れ、共和政の中華民国が成立した。朝鮮は大韓帝国として清朝から独立したが、日本の植民地となった。(595字)

 日本の普通選挙法にも触れたいところだが、「1920年前後」に1925年ははいるのだろうか?書けるネタはかなり多いので、600字とはいえ書きすぎると字数オーバーになりかねない。宮崎市定先生の「歴史学における要約の重要性(特徴が見えてくる)」という指摘を改めて実感。


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