『仮面の男』と『王妃の離婚』 [歴史映画]
デカプリオの『仮面の男』のDVDが来たので観ました。未開封品(3300円という値段の旧盤)だったので得した気分?バスティーユに鉄仮面の囚人が収監されていたという話は記録があるようで、映画の冒頭でナレーションに出てくる囚人番号「64389000」は、佐藤賢一『二人のガスコン』で鉄仮面をかぶせられていたユスターシュ・ドゥ・カヴォワの囚人番号と同じですな。『二人のガスコン』と違って、アンヌ・ドートリッシュはとても綺麗だったけど。ジョン・マルコヴィッチ扮するアトスがよかったなぁ。デカプリオの二役ぶりもよかったけど、私が一番好きなのは、迷うフィリップが夜空の月を見上げて決心するシーン。月を見上げる彼、いい表情でした。
今月9日に義弟の結婚式で福岡に行った際、天神のブック・オフで何冊か本を買いました。セールス中で、文庫本が100円とか安かったもので。
①佐藤賢一『王妃の離婚』
②本宮ひろし『赤龍王』②
③岩明均『ヘウレーカ』
④青池保子『サラディンの日』
②~④はコミック。岩明均氏の『寄生獣』に昔ハマりましたねぇ。『サラディンの日』というタイトルにもかかわらず、サラディンが主人公ではありませんでした。
で、『王妃の離婚』を読み終えたのですが、さすが直木賞をとっただけに面白かった。活劇ではないけど、サスペンス感にあふれ、オーエンなど人物描写も素晴らしい。最後に王妃がフランソワに告げる「あなたの過去なら素晴らしい未来につながっている」という言葉、エピローグでぐっと生きてくる。読後感もさわやか。
佐藤作品に私がひかれるのは、エンターティメントとしての面白さもさることながら、時折はさまれる言葉が心に響くから。
「エマニエルは知っていた。人生の喜びとは、そんなものじゃない。容易ならざる困難にぶつかり、それを乗り越えようと死に物狂いで頑張り、血が滲むような奮闘が実を結んだ果てにこそ、本当の喜びとはあるものだ。」(『双頭の鷲』)
「情けなくて涙が出てくる。それでも歯を食いしばって続けるうちに、あれ、という感じで自然に、すらすら理解できるようになるのだ。そこまでの忍耐力が勝負というわけだが、元が教養程度の語学力では、冒頭から五頁までを真黒にしたくらいの奮闘では、まるで実を結んでいないはずだった。実際、ジャンヌ王妃の試訳らしいフランス語は、ただの一文もまともに訳せていなかった。これを大学者の学識と比べられようか。フランソワが感嘆するのは、むしろ無力な人間の底力だった。わからなくても、わからなくても、ジャンヌ王妃は独り、投げずに諦めなかった。報われない、ひたむきな努力に触れてこそ、人は戦慄するのでなかろうか。」(『王妃の離婚』)
一生懸命になることはあまり流行らない昨今のようですが、共感する言葉です。
関係ない話で恐縮です。ちょっと先の話ですが、11月16日(水)10時に熊高に伺うことになりました。お忙しいところ恐縮ですが、当日お会いできれば幸いです。とりいそぎ。
by 小田中直樹 (2005-10-24 16:26)
はい、承っております。世界史担当者3人で、色々とお話をうかがうべく、楽しみにしております。『歴史学って何だ?』と『歴史学のアポリア』をN先生には貸しておきました(笑)。
by zep (2005-10-24 19:52)
おお、予習までしていただくことになったんですか…。申し訳ありません。
by 小田中直樹 (2005-10-24 20:44)
いえいえ、申し訳ないなんてとんでもないです(笑)。全員楽しみにしています。よろしくお願い致します。
by zep (2005-10-25 21:09)
初めまして。『仮面の男』で検索していてこちらに参りました。
そうしたら『サラディンの日』が!私もこれを最近読みました。
『キングダム・オブ・ヘブン』と比べると、よりおもしろいです。
佐藤賢一作品では『オクシタニア』が好きです。
zepさんは世界史の先生でいらっしゃるのですね!
私は高校のとき世界史が1番好きでした。
歴史そのものが好きなのもありましたが、先生がとてもおもしろい素敵な方だったのです。
こちらのブログを少し拝読させていただいて、きっとzepさんの生徒さんの中にもかつての私のような生徒がいるだろうと思いました。
TBいただいていきます。
by maya (2005-12-17 09:02)
mayaさん、初めまして。『仮面の男』、とても面白かったですね。実はDVD買う前、VHSの「コレクターズ・ボックス」なるものを買ってたんですが(笑)。私は残念ながら『キングダム・オブ・ヘブン』『オクシタニア』を未見なので、今度ぜひ見たいと思います。
by zep (2005-12-17 15:09)