SSブログ

ブレイブハート (1995年アメリカ、メル・ギブソン監督・主演) [歴史映画]

 先日上二人が映画『ハリー・ポッター』を観に行ったので、下二人に自分たちも連れて行けとせがまれ見に行ったのが『セイザーX&ムシキング』の二本立て。驚いたのはセイザーXで昔懐かしの海底軍艦「轟天」が出てきたこと。故小松崎茂画伯デザインのままで登場。主砲もビームではなくて大砲ですよ、大砲。おまけに司令官は神宮寺って....『海底軍艦』と同じですな。いやはや。そしてニセケンライザーを艦首のドリルで粉砕、いいぞぉ轟天!
 ということで映画ネタは『ブレイブハート』であります。『マッドマックス』や『リーサル・ウェポン』のメル・ギブソンが監督・主演で、史実に基づいた映画化は好感が持てます。

ブレイブハート

ブレイブハート

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日: 2005/11/12
  • メディア: DVD


 この作品、よくできています。主人公のウィリアム・ウォレス(1272~1305)は実在の人物です。『西洋騎士道事典』にも結構詳しくでています。映画ではもともと農民で、スターリング・ブリッジの戦い(1298)の後でナイトに叙されますが、もともと貴族の生まれであったようですね。

新版 西洋騎士道事典―人物・伝説・戦闘・武具・紋章

新版 西洋騎士道事典―人物・伝説・戦闘・武具・紋章

  • 作者: ポーリン ベインズ, グラント オーデン
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2002/08
  • メディア: 単行本
スコットランド王国史話

スコットランド王国史話

  • 作者: 森 護
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2002/03
  • メディア: 文庫
 この映画での一番の見所は戦闘シーンでしょう。特にウォレスがイングランドの騎兵を打ち破ったスターリング・ブリッジの戦い(映画では川と橋は出てこず、平原での戦闘で「スターリングの戦い」となっている)は圧巻。『西洋騎士道事典』によると、このときスコットランド側がとった戦法は「シールトロン」(楯隊)と呼ばれるもの。楯を並べて密集隊形をとり、ハリネズミのように長槍を林立させ、屈む者・膝立ちの者・一番後方に立った者の三段構成が基本らしい。このときウォレスたちが顔にペイントしていたのはスコットランドの国旗であるセント・アンドリュース・クロスがモチーフですかね?  アザミにも注目。アザミはスコットランドの象徴で、紋章にもスコットランドを象徴するバッジとして使用されます。『MASTER キートン』にはズバリ「アザミの紋章」というエピソードがありますが、キートン氏も、「アザミと言えばスコットランドの紋章です!」と言ってますね。父の葬儀で悲しむウォレスに、幼きミューロンがアザミの花を手渡すシーンや、二人が再会した時にも使われてます。二人が密かに結婚するときミューロンが持っていたハンカチにされている刺繍が映りますが、これも多分アザミだろう。なぜアザミがスコットランドの象徴になったかというと、「紋章の授業」でも紹介してますが、その理由は、1263年のスコットランドとノルウェーの間で戦われたラーグズの戦いに由来します。スコットランド西部のラーグズに兵員を配置していたスコットランド軍に対し、ノルウェー軍は夜襲を企図しました。しかし暗闇のなかで素足のノルウェー兵がアザミを踏みつけ、刺さったとげの痛みで大声をあげてしまい、夜襲を察知したスコットランド軍は先制攻撃をかけ大勝することができました。これ以来、アザミはスコットランドのバッジとして定着することになります(森護著『スコッチ・ウイスキー物語』46~47ページ)。
スコッチ・ウィスキー物語―ラベルに読む英国の歴史

スコッチ・ウィスキー物語―ラベルに読む英国の歴史

  • 作者: 森 護
  • 出版社/メーカー: 大修館書店
  • 発売日: 1990/07
  • メディア: 単行本
 ウォレスを裏切ったロバート・ドゥ・ブルースですが、この人も有名。イギリスで発行された、英国4偉人切手で、スコットランド代表として登場しているくらいです。スコットランドではお札にも登場しています。1318年には全イングランド軍をスコットランドより駆逐し、完全独立を勝ち取った人物です。が、映画通りの優柔不断な人物で、イングランド側についたかと思うと反旗を翻し、はたまた教会内でライバルを殺害するなどその行動については森護氏も「果たして彼は真の英雄といえる人物であっただろうか」と述べています。ロバートはハンセン病で亡くなったとのことですが、映画では黒幕である彼の父がハンセン病患者として描かれています。  ウォレスのお相手役がソフィ・マルソー演じるイザベラ王妃。彼女は、三部会招集やアナーニ事件などで知られるフランス王フィリップ4世ル・ベルの娘であります。ただ史実ではイザベラがイングランドに輿入れするのは、夫のエドワードがイングランド王エドワード2世として即位した翌年1308年1月ですから、ウォレスは処刑されたあとですな。だからウォレスとイザベラの関係は完全なフィクション。このイザベラ、実は「フランスの雌狼」と異名をとった女傑で、1326年には愛人マーチ伯モーティマーと組んで夫エドワード2世に謀反を起こしている。エドワード2世は、王位を息子のこれまたエドワード(百年戦争を始めた3世)に譲らされたあと、1327年に死んでいますが、暗殺されたという話です。一説によると、肛門に焼けた鉄棒を差し込まれて殺されたらしい。王様は体に傷を残してはいけないからだって.....  あとエドワード1世は、模範議会で有名ですね。彼の「矢は金がかかる、安いアイルランド兵を出せ」ってのもスゴイなぁ。そういえば『タイタニック』でも、この船はアイルランド人がつくったっていうセリフが出てきますね。
英国王室史話〈上〉

英国王室史話〈上〉

  • 作者: 森 護
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2000/03
  • メディア: 文庫
英国王室史話〈下〉

英国王室史話〈下〉

  • 作者: 森 護
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2000/03
  • メディア: 文庫
 この作品を授業で使ってみようという話は、山川出版社の『歴史と地理』492号に掲載されていますが、やはりストーリーではなく当時の生活描写の部分を使ってみようという話でした。以前ミラ・ジョヴォビッチの『ジャンヌ・ダルク』を使うという話がウェブ上で出てましたが、あの映画の場合も当然当時の生活描写でしょうね。


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(2) 
共通テーマ:映画

nice! 1

コメント 2

choppino

おはようございます。おおみそかなのに早起きですね☆
やっぱり世界史とか勉強するときに、映画を観たりすると印象に残るしイメージがつかみやすくなったりしますよね。
ただ興味を持ち始めるのって、だいたい勉強して内容がわかってきたときだから、さああの時紹介してもらった映画を見てみよう!って思うのは、
もうそんなことしていられる余裕がないときなんですよね。受験生は。
高校1,2年のときにそーゆうのは観とかなきゃ。
by choppino (2005-12-31 10:45) 

zep

新年明けましておめでとうございます。choppinoさん、昨年は何度もniceをいただきありがとうございました。今年もよろしくお願いします。昨年末はいろいろ大変だったようですが、今年はchoppinoさんにきっといいことがありますように!
by zep (2006-01-02 18:27) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。