SSブログ

『キングダム・オブ・ヘブン』(リドリー・スコット監督、2005年、アメリカ) [歴史映画]

【映画について】
 『エイリアン』『ブレードランナー』『1492』『グラディエーター』の巨匠リドリー・スコット監督による、十字軍を描いた歴史超大作。戦闘シーンも見所ですが、「文明の衝突」が指摘される現在、諸民族の融和をはかろうとする登場人物に、メッセージ性を感じる作品です。私は「ディレクターズ・カット」版をDVDで観ました。劇場公開版より50分以上長いということですが、私は劇場版を観ていないので、どこが違うかは不明。DVDでは冒頭に監督からのメッセージがはいりますが、それによると劇場版にはシビラのこどもがでてこなかったらしい。とすると、シビラがなぜギーに王位を譲ったかぼやけるような気がするので、これはDC版のほうが正解。
 主役のバリアンを演じるのは、『ロード・オブ・ザ・リング』のオーランド・ブルーム。『トロイ』でみせたヘタレ役とは違ってカッコいいこと。エルサレムの攻防における彼の指揮ぶりは、『墨攻』の革離もかくやという活躍ぶり。その他のキャラも実によくて、ハンセン病をわずらいマスクをかぶったボードワン4世は、目だけしか見えないにもかかわらずその気持ちが伝わってきて、マスクが動いているような錯覚すら感じました。助言者ホスピタラーもよかった。その他バリアンの父は『シンドラーのリスト』リーアム・ニーソン、イェルサレム王国の重臣でバリアンとともに王を支えるティベリアスは『仮面の男』で三銃士の一人アラミスを演じたジェレミー・アイアンズ。

【ストーリー】
 Wikipediaの解説[http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%80%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%BB%E3%83%98%E3%83%96%E3%83%B3]

 日本語公式サイト[http://www.foxjapan.com/movies/kingdomofheaven/]

【見所その他】
 サラディンはもちろんのこと、主役のバリアン(ゴトフリート・オブ・イベリン)をはじめ、ボードワン4世、シビラ、ルノー・ド・シャティヨン、ギー・ド・リュジニャンら実在の人物か、あるいはモデルが存在します。アミン・マアルーフ『アラブがみた十字軍』の第10章「サラディンの涙」に登場する人々です。この本でバリアンは、バリアン・ディブランという名で登場しています。この部分の記録を残したイマード・ウィディーン・アル=アスファハーニが、イマド(海岸でバリアンを助け、最後に馬を与えるサラディンの重臣)のことでしょう。ティベリアスはトリポリ伯レイモン。ルノーがサラディンに成敗されるシーンは、この本に書かれている部分と似ていますね。ルノーとギーが、テンプル騎士団(フィリップ4世によって財産没収・解散させられた)を使ってイスラーム側を攻撃したのも事実のようです。この本の記録によるとイェルサレムの住民たちは身代金を支払った上で解放されたそうで、バリアンは貧困層の金策に奔走したとのこと。しかしサラディンの命により、老齢者は全額免除、未亡人と孤児には全額免除のうえに贈り物まで与えたとされています。

 2年8室での今年最後の授業で、ヨーロッパ中世をテーマにした映画をいくつかハイライトシーンで紹介しました。紹介したのは、『ロビン・フッド』(ケビン・コスナー主演)、『薔薇の名前』(ショーン・コネリー主演)、『ロック・ユー!』(ヒース・レジャー主演)、『ジャンヌ・ダルク』(ミラ・ジョヴォビッチ主演)。本当は『ヘンリー5世』(ケネス・ブラナー主演)を見せたかったのですが、生徒がよく知っている『ジャンヌ・ダルク』に変更。『ヘンリー5世』での泥海のアジンコートの大激戦をみせて、『ジャンヌ・ダルク』でラ・イールが「アザンクールで俺を守ってくれた」お守りをジャンヌに渡そうとするシーンをみると、ピッタリはまるんですけどね。中世映画を時系列で並べると、
  ①『冬のライオン』:皇太子リチャード1世登場
  ②『キングダム・オブ・ヘブン』:十字軍に行くリチャード1世登場
  ③『ロビン・フッド』:十字軍から帰ってきたリチャード1世登場
  ④『薔薇の名前』:ベルナール・ギー(1261~1331)登場
  ⑤『ロック・ユー』エドワード黒太子登場
  ⑥『ヘンリー5世』
  ⑦『ジャンヌ・ダルク』
といったところでしょうか。
 
 

キングダム・オブ・ヘブン ディレクターズ・カット

キングダム・オブ・ヘブン ディレクターズ・カット

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日: 2006/12/01
  • メディア: DVD


キングダム・オブ・ヘブン

キングダム・オブ・ヘブン

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日: 2007/01/26
  • メディア: DVD


キングダム・オブ・ヘブン (2枚組 プレミアム)

キングダム・オブ・ヘブン (2枚組 プレミアム)

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日: 2006/04/28
  • メディア: DVD


キングダム・オブ・ヘブン 公式完全ガイド

キングダム・オブ・ヘブン 公式完全ガイド

  • 作者: リドリー・スコット
  • 出版社/メーカー: アスペクト
  • 発売日: 2005/05/10
  • メディア: 大型本


アラブが見た十字軍

アラブが見た十字軍

  • 作者: アミン マアルーフ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2001/02
  • メディア: 文庫


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

nice! 1

コメント 2

まろ

この作品、『クルセイダース』と一緒に何の予備知識もなしに借りて観たのですが、大正解でした。
 実に面白かったです。
 さすが、りドリー・スコット。
 史実もきちんと押さえられていますし、メッセージも伝わってきました。
by まろ (2007-01-23 21:47) 

zep

私は『クルセイダース』という作品、知りませんでした。調べてみたら、『グラディエーター』のスタッフも関わっているようで、面白そうですね。リドリー・スコットは大好きです。『グラディエーター』『エイリアン』『ブラック・レイン』『ハンニバル』等々、中でも『ブレードランナー』が大好きです。ヴァンゲリスの音楽も良かったし、レプリカントのルトガー・ハウアーも(あのころは)カッコよかった!この『キングダム~』も、良い作品でした。メッセージ性もわかりやすく、名作だと思います。
by zep (2007-01-23 23:09) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

しばらくお休みします十字軍 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。