SSブログ

小沢郁郎『世界軍事史』(同成社) [歴史関係の本(小説以外)]

 私が常に手本としているウェブサイト「世界史講義録」[http://www.geocities.jp/timeway/]で推薦されていた本です。7000円という値段に躊躇しましたが思い切って買ったみたところ、ネタ本として本当に「おいしい」本でした。世界史の教師として、自分が知らなかったことがいかに多いかを思い知らされました。
 古今東西、世界史の教科書に出てくる戦争はすべて網羅されています。戦術や技術、そして社会との関わりまで、実によく調べ上げられており、また筆者の解釈も理路整然としています。ギリシアの三段櫂戦、重装歩兵の戦術、アルマダ海戦の実際等々、よくぞここまで調べてくれましたという本です。セポイの反乱で、反乱軍側がエンフィールド銃を使っていたというのには驚きました。著者の小沢郁郎氏は故人だそうですが、教科書にも載っているアヘン戦争の図版で、爆発の様子がおかしいと生前語っていたとのこと。一体どのような理由からでしょうか?
 以前紹介した『銃・病原菌・鉄』の中でもインカやアステカがなぜ征服されたのかという点の考察がなされていました。これについて、小沢氏は「知識であり判断力であり見通し」という点もあげています。これはジャレ・ド・ダイヤモンドが言う「文字を持っていた=情報」とほぼ同じことでしょう。「玉砕を敢えてする勇気は、ゲリラをする智力に、明らかに軍事的にも劣っている。」というのは、なかなか含蓄のある言葉です。モンゴル帝国の箇所ででてくる太平洋戦争中の日本軍が水牛で失敗した話など、所々に出てくる太平洋戦争中の日本軍のエピソードも面白い。
だまされたと思って読んでみてください。高校で世界史を教えているなら、買って損はない本です。色々な仕事に追われて授業の準備もままならないとき、この本の該当箇所を読んでいくだけでもいいと思います。

世界軍事史―人間はなぜ戦争をするのか

世界軍事史―人間はなぜ戦争をするのか

  • 作者: 小沢 郁郎
  • 出版社/メーカー: 同成社
  • 発売日: 1986/08
  • メディア: 単行本


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

nice! 1

コメント 2

オガピー

久々にお邪魔します。先生も金岡先生の「世界史講義録」を手本とされている由。私もかなり参考にさせていただいております。話は変わりますが、本年度も期末考査も終了し授業は終了しましたが、最後にいつも生徒たちにコメントをかかせておりますが、やはり実物(お金や現地で撮った写真、お土産など)を見せたことが印象深いとの声が多かったです。フィギュアも結構受けていました。少しでも生徒たちに楽しめ、かつ学べる授業を!を心がけていますがまだまだ工夫が必要です。もう少し議論したり歴史のダイナミズムのようなものを感じさせられることができれば…と思いながらまた来年度に臨むことになりそうです。
by オガピー (2007-03-07 21:49) 

zep

「世界史講義録」や「世界史なんか怖くない」(今はもう閉鎖されていますが)の二つは、私がインターネットを始めたころからあった老舗のサイトで、高校世界史の授業関係のウェブサイトでは、この二つを越えるものは未だにないような気がします(メールマガジンを含めて)。大学での歴史学研究とも、予備校の受験テクニックを伝授する授業とも異なる、高等学校での「世界史の授業」とはいかにあるべきか、ということを考えさせられたウェブサイトです。『世界軍事史』は「本当は、誰にも教えたくない」ほどの本ですが、「情報の共有」が私のウェブサイトのコンセプトなので、紹介してみました。この本をお読みになった方で、「この部分は授業でこのように使える」というネタがあったら、ぜひご紹介下さい。 ウチの学校も最後の試験が終わりましたが、授業はまだ続きます。はっきり言って「消化試合」なわけですが、最近はこの時期の授業で苦労するようになりました。この話は別の機会にまた。オガピー先生はご自分で撮影した写真をお使いとのことですが、教師本人が一緒に写ってると生徒にウケるのはなぜでしょうね(笑)。パワーポイントで、自分が撮った写真を使ったプレゼン資料でもつくっておくと、今声高に言われている「ICTを使った授業」としても提案できそうです。
by zep (2007-03-08 22:06) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。