川北 稔・村岡 健次『イギリス近代史―宗教改革から現代まで [改訂版]』(ミネルヴァ書房) [歴史関係の本(小説以外)]
イギリス革命で、絶対王政をとる国教徒の王に対して「ピューリタンが多い議会が反発」してピューリタン革命が起こり、旧教の擁護をはかる国王に「国教徒が多い議会が反発」して名誉革命が起こったのはなぜかという点が常々疑問でした。つまり、改宗がすすんだのか、それとも構成する議員の多くが入れ替わったのか、という点です。
この疑問に答えてくれたのがこの本。王政復古の前と後では、議会の中身がかなり違っていることが説明されています。世界史の教科書ではふれられていませんが、王政復古後に議会が審査法とともに制定したクラレンドン法の内容をみると、王政復古後の議会の中心となった国教徒が、それ以前に議会の中心だったピューリタン系非国教徒に報復しようとしていることがよくわかります。もっとも、この本でもふれてありますが、初期のピューリタンはカルヴァン派とイコールではなかったようです。当初は国教徒の中に多くのカルヴァン派もいたようですが、国教会におけるアルミニウス主義の台頭にともない、徐々にピューリタンというとカルヴァン派という感じになっていったようです(このことは今井宏編『世界歴史大系 イギリス史2』(山川出版社)でも補説「ピューリタンとピューリタニズム」で説明されています)。
この本のよい点は、政治史だけではなく多くのデータを用いて社会経済面の変化にも焦点をあてているところにあります。この点、政治史を中心に詳細な解説を加えた、『世界歴史大系 イギリス史』(山川出版社)とは好対照。記述もわかりやすいので、世界史の教科書よりもより深くイギリスの近代を勉強してみたいけど専門書はちょっと......という人には最適の本でしょう。コラムも興味深く、特に「アジア物産への憧れが生んだ産業革命」は目からウロコです。その他「タイタニック号事件」や「コレラの流行」など授業の素材として使えそうなテーマが紹介されています。「イギリス商業革命」に関する記述など、この本の内容は来年度用の帝国書院の教科書『新詳世界史B』に反映されいているようです。
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