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『エリザベス・ゴールデン・エイジ』(シェカール・カプール監督、2007年、イギリス) [歴史映画]

 1998年に公開された『エリザベス』の続編で、監督・キャストは前作と同じ。今回の続編は、無敵艦隊の撃破やスコットランド女王メアリ・ステュアートの処刑、ウォルター=ローリーのヴァージニア植民など、「教科書で有名なエピソード」が多数出てくるため、前作よりは楽しめました。先日発表された第80回アカデミー賞では、衣装デザイン賞を受賞した作品です。ローレンス・オリヴィエ主演の『無敵艦隊』(ウィリアム・K・ハワード監督、1937年、イギリス)よりも楽しめます。
 エリザベス1世を演じた主演のケイト・ブランシェットは、1969年生まれで今年39歳。間もなく第3子を出産ということですが、女王という立場と一人の女性との立場との間で揺れ動くエリザベスを巧みに演じていました。いい女優です。彼女はこの作品でアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされていましたが、残念ながら受賞はなりませんでした。ケイトは別の作品(『アイム・ノット・ゼア』)で助演女優賞にもノミネートされており、前哨戦のゴールデングローブ賞では受賞していたので大本命だったのですが、こちらも受賞はなりませんでした。

 見所は、エリザベスの演説を含めたアルマダ海戦。かなり迫力がありました。歴史の知識がなくてもそれなりに楽しめますが、ウォルター=ローリーや、アルマダ海戦のシーンに登場するドレーク、そしてスコットランド女王メアリ=ステュアートフェリペ2世と、エリザベスとの関係など知っておくとより一層楽しめるでしょう。バビントン事件や、侍女のベス=スロックモートンがローリーと結婚していたというのは、史実に即してます。
 エリザベスの死後、テューダー朝の血統が絶えたため、メアリ・ステュアートの息子がジェームズ1世としてイングランドの王位を継承し、ローリーがジェームズによって死刑となったのは、歴史の皮肉と言えるかもしれません。ジェームズが母メアリの処刑に対して形式的な抗議しかしなかったのは、エリザベスに子どもがいなかったため、いずれ自分のもとにイングランド王位が継承されることが確実だったためと言われています。

 私が映画館に見に行った日では、30名ほどの観客のうち、男性は私を含めて2人だけ。あとは女性でした。一人の女性の生き方として、関心が高かったのでしょう。

allcinema [http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=329147]
公式サイト [http://www.elizabeth-goldenage.jp/]

 なお、エリザベスの生母アン=ブーリンを描いた映画『The Other Boleyn Girl』が間もなく公開予定です。アンを演じるのは、『スター・ウォーズ』のアミダラ女王ナタリー=ポートマン、ヘンリ8世を演じるのは、『トロイ』のヘクトル、『ミュンヘン』では暗殺チームのリーダー、アヴナーを演じたエリック・バナ!いつも憂鬱な顔をしているエリック・バナに「陽気な王様」はちょっとそぐわない気も.....

『The Other Boleyn Girl』公式サイト[http://www.sonypictures.com/movies/theotherboleyngirl/]

エリザベス:ゴールデン・エイジ (ソフトバンク文庫 ア 3-1)

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  • 作者: ターシャ・アレグザンダー
  • 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
  • 発売日: 2008/01/17
  • メディア: 文庫



エリザベス

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KE007

米国に住むKE007と申します。更新を楽しみにしている歴史好き読者です。

先週金曜日に公開となったジ・アザー・ブーリン・ガールの映画版を観てきました。

原作が大変面白く、分厚い本にもかかわらずどんどん読み進むことができたため映画も随分と楽しみにしていましたが、全くの駄作で映画料金わずか4ドルさえももったいないと思ったほどです。

原作はアン・ブーリンの姉(原作では妹となっています)メアリー・ブーリンが主人公で、アン・ブーリンやヘンリー8世たちはメアリーの目を通して一歩置いて語られているのですが、映画は誰が主人公なのかが完全に混乱し、収拾の付かない昼メロとなってしまっていました。

唯一、アンの処刑方法が史実の通りフランス式断頭だったことによい印象を持ったぐらいです。

ヘンリー8世やアン・ブーリンやエリザベス1世は今までに映画や舞台にしつくされているいわゆる有名どころですから、新たに違った角度で取り組むのは難しいのかもしれません。

ところで、エリック・バナのヘンリー王は、先生も言っておられるように、大きな間違いでした。まるで、ケビン・コスナーのロビンフッドを観ているような印象を持ちました。
by KE007 (2008-03-07 04:28) 

zep

KE007さん、はじめまして(ですよね?KE007さんのハンドルネームを見て、アメリカで活躍中の方を思い出したもので)。

「ジ・アザー・ブーリン・ガール」の感想を早速ありがとうございます。アメリカで公開されたばかりなんですね。このブログを読んでいただいている方々にも興味深い感想だったことでしょう。
おっしゃるように、歴史上のエピソードを題材にする場合は「結末が分かっている」だけに脚本など相当考えないと退屈な話になってしまいますよね。感想をうかがった限りでは、「奇をてらいすぎた」感じもします。原作本(原作本があるとは知りませんでした)を読まれたとのこと(英語が堪能な方はうらやましい!)、「原作よかったけど映画は.....」というと『ダ・ヴィンチ・コード』を思い出しますね。やはりエリック・バナのヘンリー8世はイマイチでしたか(笑)。ナタリーのアン・ブーリンは、個人的にはナットクのキャストでしたが。

ところで「フランス式断頭」とは、いったいどのようなものでしょうか?私は今まで、ドラローシュの「レディ・ジェーン・グレイの処刑」に描かれたようなやり方を想像していたのですが。

それにしても映画料金が4ドルとは......アメリカの映画は安いですねぇ。日本じゃ1800円ですよ。
by zep (2008-03-08 12:55) 

KE007

映画「レディー・ジェーン」でも見られるように、通常は、枕木のようなものの上に頭を載せ、斧が上から振り下ろされるのですが、アンの処刑はわざわざフランスから断頭者を呼んでフランス式でやったということをどこかで読んだ事があります。

フランス式は、枕木に頭を載せるのではなく、目隠しをしたらそのままひざまずきます。そして、斧ではなく、大きな剣のような刃物で後ろから振り落とすというものだそうです。

映画を見る前に「アンはフランス式断頭」という話を読んでいましたので、映画でその通りになっているのに感心した次第です。

「ジ・アザー…」は2001年に発表され、ベストセラーにもなったフィリパ・グレゴリー女史の小説です。多少史実無視の場面があるものの、お話としては大変興味深く500ページ以上ある分厚い本ですが、時間を忘れてどんどん読めてしまいます。グレゴリー女史はチューダー朝系が得意なようで、同じような時代のお話をほかにもいくつか書いています。

ところで、「エリザベス・ゴールデン・エイジ」がすでにDVDになっていますので、安くなったときを見計らって購入(10ドルぐらい)し、衣装やセットをじっくり見ようと思っています。劇場ではストーリーに集中していましたので。

では、また、お邪魔させていただきます。
by KE007 (2008-03-11 03:37) 

zep

どうもありがとうございました。「ゴールデン・エイジ」をはじめ、私がこれまで見た映画中のメアリ・ステュワートの処刑は、すべて「枕木のようなものの上に頭を載せ、斧が上から振り下ろされる」方法でした(「ゴールデン・エイジ」や「エリザベス1世」では、メアリは赤い服を着て処刑されますね)。
なるほど、フランス式では跪くのですね。確かにこれだと失敗の確率が高そうな気がします。フランスではギロチンが必要とされた理由が、やっと分かりました。
DVDはアメリカで10ドルですか!これまた驚きです。先日アマゾンUSで「ブレードランナー」のボックスを買ったら、日本じゃ24800円の商品が、送料入れても7000円でした。うらやましい!
by zep (2008-03-11 19:27) 

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