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活版印刷術 [授業ネタ]

 第二次世界大戦中、アメリカ合衆国で新しい技術の開発が始められた。1980年代になると、この技術に基づいてインターネットなどを利用した新しい出版の形態が生み出された。この技術の名称を記せ。(東京大学 2004年)

 「活版印刷術は木版印刷術よりも優れている」という認識が、誤りではないけれども正しくもないということに気づいたのはつい最近のこと。『紙の歴史』という本を読んでからです。すなわち、

 ・英語の場合26文字しかないアルファベットに比べて、漢字の本は膨大な数の活字を必要とする。 (四書五経とその注釈書には、全部で6544種類の漢字が使われているという)
 ・活版印刷では、書体自体が芸術性を持つ漢字の本をつくれない。
  (アジアでは書の物質的・芸術的側面は文の意味内容と深く結びついている)

ということです。

 そしてさらに、金属活字でつくった原版の重さときたら、並のものではありません。Wikipediaには以下のような記述があります。

 「活版印刷で書籍を組んで刷るということは、単に版面を構成する文字を並べるだけでも膨大な数の活字が必要になる。これはアルファベットでもそうであるし、日本語や中国語など字種の多い文字言語においてはより顕著である。また、行間や余白は写植・DTPに於いては文字通り「何もない空間」であるが、活版ではインテルやクワタなどの込め物によって詰められた、まさに「充満した空間」なのであって、それらがまた金属(あるいは木)であるゆえにその分の重量も半端なものではない。さらに大量印刷の為には原版刷りではなく、紙型を取って複製する設備なども必要であるなどの特徴がある。これは、印刷機そのものよりも手前の工程において、大量の資材と人手を要することを意味する。  こういった理由のため、大型設備を用いた活版印刷を「技術の保存」を目的として保っていくことは極めて困難であり、それがいわゆる伝統工芸化を阻んでいる。そういった中でも、活版印刷を辞める印刷会社から道具・機材を譲り受け、プライベートプレスを行っている、という人もいる。」


 活版印刷を行う業者は激減し、最近では、使われなくなった印刷用活字は釣りのルアーの自作用材料として出回っています。

活字.jpg

 私がこれを実感したのは、使われなくなった名刺の原版を手にしてからです。まさに「充満した空間」で、ヨコ8.5センチ×タテ6センチの大きさながら、重さは文選箱((活字を拾う時に使う箱))にはいった状態でちょうど1キログラムにもなります。ゆずっていただいた方によると、B4の大きさの伝票の組版は18Kgにもなるそうです。百聞は一見にしかず、とはまさにこのこと。





紙の歴史―文明の礎の二千年 (「知の再発見」双書)

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コメント 2

papa

 こんにちは。かなり前に何度かコメントしたことがある者です。

 過去問の答えは何でしょうか?自分がネット上で見つけられたのは、河合塾の「電子出版」ですが、これでいいのでしょうか・・・。
by papa (2009-05-05 15:18) 

zep

第二次世界大戦中のアメリカ合衆国で開発が進められた新しい技術、なので、電子出版はまずいと思います。第二次大戦中アメリカで開発された、とはアタナソフ&ベリー・コンピュータ(ABC)のことで、答えとしては「コンピュータ」です。

1980年代、コンピュータはマイコン(マイクロコンピュータ)とよばれて個人に普及するようになりました。当時シャープのMZ-80Kという有名なマシンがあり、雑誌『ラジオの製作』では、その「実物大基盤写真」が付録についていたほどです。私はカシオの小さな計算機型を買ってもらいましたが、記録媒体はなんとカセットテープ。聞いてみたところ「ピロピロピロピロ~」という音でした。
by zep (2009-05-05 18:47) 

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