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今年の東大の問題 [大学受験]

 今年の東京大学の第1問、テーマは「人の移動」。定番のテーマなので(名古屋大1996年、筑波大1997年、一橋大2003年)、東大の問題としては書きやすかったと思います。昨年の阪大の(Ⅲ)と類似の問題で、ちょっとビックリ。

 対象の時期は17~19世紀、地域はカリブ海と北アメリカ。両地域における非白人系の移動と、移動の要因となった開発を論ぜよ、という要求。副次的な要求として、「奴隷制廃止前後の差異に留意しながら」とあります。

 「17世紀には....」「18世紀には....」「19世紀には....」と時系列に沿ってメモをつくっていくのがいいと思います。指定語句をそれぞれの時期に振り分けてみると、19世紀に使う語句がもっとも多くなりそうです。結果的に、17世紀や18世紀よりも、19世紀について書くことがずっと多くなりそう。

 17世紀・・・・「大西洋三角貿易」
       アフリカからの黒人奴隷
       カリブ海のサトウキビ、北アメリカのタバコプランテーション
 18世紀・・・・「リヴァプール」→奴隷貿易の拠点
       奴隷貿易の利益=「産業革命」に必要な資本
 19世紀・・・・①カリブ海
       黒人奴隷の反乱→「ハイチ独立」=奴隷貿易廃止の契機
       奴隷貿易の廃止→代替労働力として中国人「年季労働者」導入
      ②北アメリカ
       英の産業革命→南部で黒人奴隷を使役する綿花プランテーション発展
       英仏の奴隷制廃止→北米でも奴隷制反対運動
            →南部の「奴隷州」と北部の自由州の対立 
       カリフォルニアのゴールドラッシュ・・・・中国人「年季労働者」流入
→南北戦争後、北米でも奴隷制度廃止
            →代替労働力としてて中国人「年季労働者」増加
       「白人下層労働者」(アイルランド、東欧、南欧など)
         ・・・・低賃金の中国人に対する反感→「アメリカ移民法改正」

 「奴隷制廃止前後の差異」というのは、奴隷制度が維持されていた時期の労働力は黒人だったのが、廃止以後は奴隷の代替労働力としてアジア系肉体労働者が導入された、ということでしょう。

 今年の問題で興味深かったのは、「ハイチ独立」が奴隷制廃止の文脈で指定語句となっている点。ハイチ独立というと、これまではラテンアメリカ諸国の独立のスタートとして、ウィーン体制の動揺の始まりとして語られてきましたが、山川の『詳説世界史』新課程版は、「ハイチ革命の成功は、諸国の奴隷制廃止運動に大きな影響を与えた」という点を強調しています。確かに、クリオーリョの指導によって独立した、他のラテンアメリカ諸国と同列に語るのはムリがあるように感じます。
               
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