星乃治彦・池上大祐監修『地域が語る世界史』(法律文化社) [歴史関係の本(小説以外)]
本書は以前紹介した『学生が語る 戦争・ジェンダー・地域』(法律文化社)に続く、福岡大学人文学部歴史学科西洋史ゼミ所属の学生による研究成果集。「身近な地域」「せめぎあう地域」「つながる地域」の三部から構成されていますが、いずれもナショナル・ヒストリーを越えて、地域と世界との関係へ着目しようというスタンスが共通しています。
私もコラムを書かせてもらった岩波ブックレットの一冊『世界史なんていらない?』の中で、著者の南塚信吾先生は、世界史を構想するヒントとして自分の視角から構成する世界史を提唱しています。そのヒントとして「地域から出発する方法」など6つがあげられていますが、本書『地域が語る世界史』はそうした方法論をより具体化したものと言えるでしょう。
私もコラムを書かせてもらった岩波ブックレットの一冊『世界史なんていらない?』の中で、著者の南塚信吾先生は、世界史を構想するヒントとして自分の視角から構成する世界史を提唱しています。そのヒントとして「地域から出発する方法」など6つがあげられていますが、本書『地域が語る世界史』はそうした方法論をより具体化したものと言えるでしょう。
高校の世界史でも、グローバル・ヒストリーの視点は徐々に取り入れられつつあります。たとえば第1章「世界をかけめぐる銀」などは、東京書籍の教科書の記述や東大の2004年の問題などでも取り上げられましたが、こうしたテーマを自分が現在住んでいる地域に重ね合わせることで、南塚先生がいう「自分の世界史」をつくることになるのだと思われます。
本書には、研究の過程で考えたことや体験したことなどを書いたコラムが、3編掲載されています。学生の方々の考えを知る上でたいへん興味深く読ませていただきました。
学部生の時期に、自分が書いた文章が活字となり出版されるという経験は、かなり珍しいこと。これからの研究活動にとっても相当な励みになることと思います。一方で、指導に当たられた先生方や院生方も相当なご苦労があったに違いありません。さらに出版に至るまでの道のりを考えると、気が遠くなりそう。学部生の方々には、他の章と自分が担当した章との関わりを考察するなど、さらなる研究を期待しています。
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