SSブログ

今年の大阪大学の問題 [大学受験]

 今年の大阪大学二次試験世界史は、(Ⅰ)で昨年出題された問題を会話文の形式で振り返っているところが面白い。高校生と先輩との会話という形式は2007年の3で、過去の問題を振り返るという形式は2011年の(Ⅲ)でそれぞれ使われていますが、2011年の例から考えると、昨年の(Ⅰ)はグラフを読み違えた受験生が多かったものと思われます。実際、昨年ウチの学校から受験した生徒も読み違えたということで、と自嘲気味に語っていました(英語が得意だった彼女は無事に合格しましたが)。まぁTさんの予想的中.....と言いたいところですが、2011年のときとはかなり意味合いが違う気がします。2011年のリード文は、問題の本質とは関係が薄い取り上げ方でしたが、今年の取り上げ方は「意味のある振り返り」だと感じました。昨年の問題について、私はこの場で批判的な意見を述べたところでしたが、それに対して阪大の先生から「たぶんいちばん気づいてほしかったであろう点(中国のGDPの巨大さ)について、もう少し仕掛けが必要だったのでしょうね。」というメッセージをいただきました。ということで、「昨年の出題の意図が伝わっていない、このままだといたずらに受験生を惑わせたという誤解を招きかねない」という大学側の思いが、今年の会話文にある「現代の中国を理解するのにも、18世紀から続いた人口増はものすごく大事だよね。」という一文にあるのではないでしょうか。
 大阪大学の問題全般について概観してみると、(Ⅰ)問2の8~18世紀における中国の税制に関する問題は、基本的理解を問う良問であったと思います。京大の第一問、官吏任用制度を問う問題とともに、最初の段階の論述問題指導に使いたい良問です。(Ⅱ)では問3の15~17世紀におけるヨーロッパと南アジア・東南アジアとの関係を書かせる問題が、阪大受験者ならぜひとも出来て欲しい問題です。15~17世紀は、東京書籍の教科書では「大交易時代」という呼称が使われています。問い方は異なりますが、今年は東大・京大ともに「マラッカ」が答えとなる問題が出題されました。東大と京大の問題文を足すと、19世紀までカバーできて、ちょうどいい感じになりそう?
 伝染病の流行をとりあげた(Ⅲ)では問1のペストとスペインかぜに関する問題が、少し難しかったのではないでしょうか。以前にも触れましたが、ペストとモンゴルの遠征との関係は、マクニールが『疫病と世界史』の中で提示している説で、ジャネット=アブー=ルゴドも『ヨーロッパ覇権以前』の中で賛意を示していますが、杉山正明氏 は否定的な見解を示しています。同じく(Ⅲ)問2は、黒死病の流行が社会に与えた短期的影響と長期的影響を問う問題。今年の一橋大のⅠでは、ヨーロッパにおける封建社会の解体に関わる問題が出題されましたが、黒死病の流行によって生じた労働力の不足も農民の地位向上も封建社会解体の一因となった、ということで今年はけっこう各大学でつながる問題が多かったように感じました。




疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

  • 作者: ウィリアム・H. マクニール
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 文庫



疫病と世界史 下 (中公文庫 マ 10-2)

疫病と世界史 下 (中公文庫 マ 10-2)

  • 作者: ウィリアム・H. マクニール
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 文庫



nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学校

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。