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木村靖二『第一次世界大戦』(ちくま新書) [歴史関係の本(小説以外)]

 山川出版社の『歴史と地理』No.704では、「神奈川県における高大連携と授業実践」(中山拓憲先生)が面白かった。なかでも第一次世界大戦の授業は面白く、板書の写真が掲載されているが、よく工夫されている。

 この中山先生の授業のモトネタになったのが、木村靖二『第一次世界大戦』(ちくま新書)。わが国では、第二次世界大戦に比べると第一次世界大戦の扱い方が小さい。参戦国ではあるものの、当時の日本では第一次世界大戦を「欧州戦争」とよんでおり、なんとなく「人ごと」観が強く、高校日本史では「天佑」的な扱いである。しかしNHK総合で放映されていた『ダウントン・アビー』を見ていると、イギリスでは社会と経済に大きな影響を残したことがわかる。この本は、現段階における第一次世界大戦の研究を整理し、第一次世界大戦がおもにヨーロッパでどのようにとらえられてきたかを示した本である。したがって、研究史の整理という側面も強いが、『歴史と地理』掲載の授業のヒントになったことからもわかるように、結構なネタが色々と掲載されている。
  ・航空機パイロットの高い死傷率(104㌻~)
  ・鉄かぶとによる死傷率の低下(108㌻~)
  ・ルシタニア号は禁制品の武器弾薬を積載していた(122㌻)
  ・塹壕での生活(159㌻~)
  ・過酷なブレスト=リトフスク条約(182㌻)
 これまで私は、「ロシアが戦線離脱したとはいえ、米英仏VS独なのだから連合国側の圧勝」というイメージを持っていたが、そうではなく「ぎりぎりで連合国が勝った」という方が正しいようである。ブレスト=リトフスク条約がソヴィエト=ロシアにとって過酷な条件での講和だったことは、そのことを示している。死傷者は連合国側の方が多い(213㌻)。アメリカ参戦については兵士募集のポスターがよく知られており、大戦後の繁栄とも相まって「大きな貢献」というイメージを持っていたが、一概にそうとも言えない(176㌻~)。

 「マルヌの奇跡」は出ているが、「マルヌのタクシー」(フランス軍はマルヌの闘いでパリ市のタクシー600台を使い、4000人の予備役兵士を前線へ送った)のエピソードは出てこない。「総力戦」にふさわしい話だと思うが。


第一次世界大戦 (ちくま新書)

第一次世界大戦 (ちくま新書)

  • 作者: 木村 靖二
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2014/07/07
  • メディア: 新書



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