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原田智仁『「歴史総合」の授業を創る』(明治図書) [授業研究・分析]

 2022年度から高校地歴科の新科目「歴史総合」が始まる。「準備しないといけないな」とは思っているが、なかなか手に付かない。手に付かない理由としてはいくつかあるが、まず時間的な余裕が年々なくなってきていること。学年主任5年目で、今は2年生の学年主任をしているが、英語民間試験導入中止など振り回された一年だった。保護者対応やら学校徴収金やら授業以外の仕事は増えこそすれ、減ることはない。二つ目として、自分にとって「歴史総合」はさほど魅力的な科目とは思えなかったことがある。私は勉強が好きで、その楽しさを教えたいと思って教師になった(もっとも、志望した英語科ではなく社会科にまわされたが)つもりだが、対話的というラベルのもとで生徒が苦し紛れに出した思いつきや、KP法などで歴史を学ぶ楽しさがわかるのだろうかという疑問を感じていたのである。しかし地方公務員の定年も延長されると、状況次第では私も65歳まで働くことになる。これまで「歴史総合」に対してとってきた「見て見ぬふり」や「様子見」はできない。

 新科目「歴史総合」を扱った本として、本書はとてもまとまっている印象を受ける。第1章で「歴史総合」に必要な視点と方法論、これを受けて第2章では具体的な授業モデルが提示されるが、一読して「使える」内容だと思う。というのも、第2章の冒頭で、授業時数年間60時間程度とし(3つの大項目はそれぞれ20時間、さらにその20時間の内訳は「導入:2時間-展開1:8時間-展開2:8時間-終結:2時間」と配分)、第2章で提示された授業プランはこの年間計画に準じている。しかも3つの大項目すべての授業プランが提示されているため、この本通りにやればとりあえず「歴史総合」の授業を行うことも可能である。これまで「歴史総合かくあるべし」というものは多かったが、実際の授業プランはあまり多くなく、あっても単発のものが多かった。掲載されている授業プランを一通り読んでみると、「歴史総合の授業」の具体的なイメージが頭の中に浮かんでくると思う。こうしたプランをもとに、教師個人がそれぞれによりよく改善していこうというスタンスが授業改善につながっていくと感じている。たとえば、72~81㌻に掲載されている福井を題材とした「地域→日本→世界」と広げていく授業で、自分たちが生活している地域を題材にするならばどのような題材がよいか、という感じで、自分たちの改善案を教員同士で話し合うことができれば最高だろう。

 第1章の内容も、よいと思う。「コモン・グッド」「SDGs」「レリバンス」「メタヒストリー」といったキーワードをもとに、授業改善の視点が提示されている。教育改革の動きに対して私が距離を置いていたのは、関連する文章や講演に「ルーブリック」「コンピテシー」「チェックイン」といったカタカナ用語がやたら多かったのも理由の一つである。今どきの教員ならば「わかっていて当然」なんだろうけど、説明もなしにそうした用語を使っている人をみると、尊敬すると同時に浅学さに卑屈になってしまい、とりあえずそのカタカナの意味内容をスマホで検索してみるものの、ついには「日本語で説明しろよ、気取りやがって、お前教師だろ」と逆ギレ暴走老人と化してしまうこともあった。この本ではそうした用語もキーワードとして解題してあり、すんなり頭にはいってきた。全体的に読みやすい一冊であり、「歴史総合」事始めにはオススメの本である。




高校社会「歴史総合」の授業を創る

高校社会「歴史総合」の授業を創る

  • 出版社/メーカー: 明治図書出版
  • 発売日: 2019/11/28
  • メディア: 単行本



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