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『オフィサー・アンド・スパイ』(ロマン・ポランスキー監督、2019年、フランス・イタリア合作) [歴史映画]

 第三共和政下のフランスで起こったドレフュス事件を、巨匠ロマン・ポランスキーが監督が映画化した作品。全編フランス語。DVD/ブルーレイに日本語吹替は収録されていないが、内田樹氏が字幕の監修を行っている。



日本版公式サイト https://longride.jp/officer-spy/

 ドレフュス有罪の証拠がねつ造されたものであったことを知った、防諜部のピカール中佐が主人公。さまざまな圧力に抗して真実を告発しようとするピカールが、再審にもちこんだものの歯切れの悪い幕引きとなってしまうまでを描いている。

 ドレフュス事件そのものと当時のフランスの社会に対する予備知識がないと楽しめる作品ではない。歴史的に評価が定まった出来事を映画化するのは、なかなか難しいものだ。「オフィサー・アンド・スパイ」という邦題も微妙で、原題の「J'accuse」=「私は弾劾する」でもよかったかもしれない(が、これも微妙である)。ピカールやゾラのキャンペーンによって、次第に世論が二分されていく点をもう少し入れてもよかったのではないか。第一次世界大戦後にパリ講和会議を主催したフランス大統領クレマンソーが、ゾラ達とともにドレフュス擁護側して登場する。『戦場のピアニスト』(第二次世界大戦下のワルシャワ)や、『オリヴァー・ツイスト』(19世紀のロンドン)など当時の再現にこだわるポランスキー監督らしく、19世紀のフランスの再現度は極めて高い。

 ラスト、軍籍に復帰したドレフュスがピカールのもとを訪れ、(ピカールと違って)自分が収監されていた年月が軍籍に加算されていないため、昇進が遅れているので官位を上げて欲しいと申し入れるが、政府高官となったピカールはそれを拒否する。ユダヤ系でホロコーストを生き延びたポランスキー監督の思いが感じられるシーンだが、一方で児童への性的虐待で現在も罪に問われている自分自身を投影しているようにも感じる。



オフィサー・アンド・スパイ Blu-ray

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