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インドネシアの宗教 [授業ネタ]

【1994年度 本試験 世界史 第4問D】
 今日の①東南アジアの宗教分布は複雑であるが、②イスラム教は島嶼部地域を中心に広く信仰され、数百年の歴史をもつ。なかでもインドネシアは、今日世界一のイスラム教徒人口を誇る国で、全人口の88%、1億6095万人がイスラム教を信仰している。インドネシアでは、建国五原則の第一に唯一神への信仰が掲げられているが、イスラム教のほかにも③四つの宗教が公認されている。一方、マレーシアでは、イスラム教は、マレー人を中心に全人口の50%、846万人に信仰され、国教とされている。このほか、フィリピンの南部、タイの南部、ビルマ(ミャンマー)の西部などにも、イスラム教徒が多数居住し、それぞれの国の全人口の4~7%を占めている。(数値は1989~1990年の統計に基づく)


問1 下線部①に関連して述べた次の文①~④のうちから、波線部の正しいものを一つ選べ。
 タイやビルマで広く信仰されている上座部仏教は、菩薩信仰を中心思想としている。
② インドネシアの植民地独立運動の過程では、サレカット=イスラム(イスラム同盟)などイスラム勢力が大きな役割を果たした。
③ フィリピンで広く信仰されているキリスト教の宗派は、アメリカ合衆国の統治下で伝えられたカトリックである。
④ 宋代に安南都護府の支配下にあったヴェトナムでは、今日でも大乗仏教・道教・儒教が入り混じった宗教が広く信仰されている。

問2 下線部②に関連して、東南アジアのイスラム教の歴史について述べた次の文①~④のうちから、正しいものを一つ選べ。
① ヨーロッパ諸国が東南アジアに進出したとき、すでに東南アジアにはイスラム王国が存在した。
② バンコク(チャクリ)朝では、イスラム教が広く信仰された。
③ ビルマでは、イスラム教を国教としたアラウンパヤー朝が栄えた。
④ 第二次世界大戦後、イスラム教徒の多いカリマンタン(ボルネオ)島全域がインドネシア領となった。

問3 下線部③に関連して、四つの宗教とインドネシアの歴史的関係について述べた次の文①~④のうちから、誤りを含むものを一つ選べ。
① ボロブドゥール遺跡は、ジャワ島でのかっての仏教の隆盛を伝えている。
② ジャワ島では、キリスト教(カトリック系)の布教方針をめぐって典礼問題が起こった。 ③ バタヴィアに根拠地を置いていたオランダ人の本国では、キリスト教(プロテスタント系)が広く信仰されていた。
④ マジャパヒトは、ジャワ島を中心とするヒンドゥー王国であった。

【1999年度 本試験 世界史B 第1問C】
 ジャワの伝統文化の形成に影響を与えた宗教の組合せとして最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① ヒンドゥー教――仏 教――イスラム教
② ヒンドゥー教――仏 教――キリスト教
③ 仏 教――イスラム教――キリスト教
④ ゾロアスター教――ヒンドゥー教――仏 教
                               

 東南アジア関係の続き。今年の阪大の問題でも問われていたように、東南アジアの宗教を考えることは東南アジア史理解上で大きな助けとなります。「宗教は海から」ということで、インド化の時代の名残で仏教・ヒンドゥー教が、そしてムスリム商人がもたらしたイスラーム教が混在しています。

 東南アジア関係で有名人というと、「根本七保子(ねもとなおこ)」さん。いわゆるデヴィ夫人です。今の高校生には、彼女が日本人だと知らない生徒もいて、ちょっとビックリ。彼女がスカルノの第3夫人ということで、インドネシアにはイスラーム教徒がいることを示すことが可能です。
 一方、インドネシアの国営航空会社は、ガルーダ航空。このガルーダとは、ヒンドゥー教のシヴァ神の乗り物である鳥のことです。アニメ『デジモン』に登場するピヨモンは、バードラモンへ、そしてさらにガルダモンへとエヴォリューションしますが、このガルダモンも、もちろんガルーダが起源。2003年から2004年にかけてテレビ東京で放映された特撮ヒーローもの『超星神グランセイザー』にもガルーダという飛行形態が鳥型のロボットが登場してましたが、特撮やアニメにこの「鳥型キャラはとりあえずガルーダ」というネーミングは数多く見受けられます。もう一つハヌマーンも要注意。帝国書院の『タペストリー』では、ムガル帝国のところでラージプート絵画に描かれていますが、『ラーマーヤナ』でラーマ王子を助ける猿ですが、仏教国タイで特撮ヒーローであり、なんとウルトラ兄弟や仮面ライダーと共演したことも。手塚治虫はこのハヌマーンを題材にした作品を描いており、小品ながら味わい深い手塚作品に仕上がっています。


ガルーダ飛行形態(超星神グランセイザー)

 私はサッカー部以外に写真部とディベート部の係をしているので、昨日は高校文化連盟写真部会の後期研修会に生徒を引率して行ってきました。場所は崇城大学の映像研修センター。白黒フィルムの現像から焼き付けまでを実習しました。昼休み、特撮やマンガ、アニメなどの話で部員と盛り上がったのですが、別の高校の生徒が変な目で見ていたような......


最近の戦利品


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人類の進化 [授業ネタ]

 日曜日が体育祭だったので、今日は代休。学校のホームページへの写真のアップはもう終わっているので、承認を受けたらすぐに公開します。今年の体育祭の仮装は、なかなか凝ってました。私がいちばん良かったと思うのは、ギニュー特戦隊。ホームページではすべてを紹介できないので、見たい人は社会科準備室までどうぞ。

 ここ数日読んでいるのが、先史時代関係の本。
   ①三井誠『人類進化の700万年』(講談社現代新書)
   ②河合信雄『ネアンデルタール人と現代人』(文春新書)
   ③ブライアン・サイクス『イブの七人の娘たち』(ソニー・マガジンズ)
   ④エレイン・モーガン『人は海辺で進化した』(どうぶつ社)

 かつて私が座右の書としていたのが、今西錦司他『人類の誕生』(河出文庫)という本でした。今読んでも授業にはたいへん役立つ本ですが、いかんせんその後の発見に関しては、①②など最近の本を読まなければなりません。①のほうが新しいですが、2冊とも同じ内容を違う視点で述べてあります。新書で安価ですから両方読むと理解が深まると思います。この2冊、今まで気づかなかった、知らなかった点がいつも出てきました。
  ・アウストラロピテクス属とホモ属は、脳の容積で分ける。
  ・白石隆信『歴史モノ教材で授業を変える』(地歴社)には、「最初に石器をつくったアウストラロピテクス」とあるけども、少なくともアフリカヌスはつくった証拠がない。アウストラロピテクス属の中でも後期のアウストラオピテクス=ガルヒは、石器を作った可能性がある。
  ・ネアンデルタール人は、音楽を楽しんだ可能性がある。
  ・ネアンデルタール人を風呂に入れ、散髪してひげを剃り、スーツを着せてニューヨークの地下鉄に乗せても、誰も気づかないだろう。
  ・アウストラロピテクスは我々の祖先だが、北京原人やジャワ原人は我々の祖先ではない。

 ①②で紹介されていて、面白そうなので買ったのが③と④。③は骨そのものではなく、骨からDNAを取り出して調べようという試みで、女性だけに継承されるミトコンドリアDNAを解析することで、我々の祖先がわかるという話。つきつめると我々のルーツは、「ミトコンドリア・イブ」と命名されたアフリカ人の女性にたどりつく。そして、彼女の7人の娘のうち誰かが我々一人一人の先祖なのだという[http://www.sonymagazines.jp/mmt/200111080750]。著者が設立したオックスフォード・アンセスターに申し込むと、自分のミトコンドリアDNAを解析してくれ、誰がご先祖様なのかを教えてくれる。
  ・オックスフォード・アンセスター[http://www.oxfordancestors.com/]

 ④はいわゆる「アクア説」の本。面白いが、学会で広く支持されているわけではない。

世界の歴史〈1〉人類の誕生 (河出文庫)

世界の歴史〈1〉人類の誕生 (河出文庫)

  • 作者: 今西 錦司, 河合 雅雄, 池田 次郎, 伊谷 純一郎
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1989/06
  • メディア: 文庫


人類進化の700万年―書き換えられる「ヒトの起源」 (講談社現代新書)

人類進化の700万年―書き換えられる「ヒトの起源」 (講談社現代新書)

  • 作者: 三井 誠
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/09
  • メディア: 新書


イヴの七人の娘たち

イヴの七人の娘たち

  • 作者: ブライアン サイクス
  • 出版社/メーカー: ソニーマガジンズ
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 単行本


歌うネアンデルタール―音楽と言語から見るヒトの進化

歌うネアンデルタール―音楽と言語から見るヒトの進化

  • 作者: スティーヴン ミズン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 単行本


人は海辺で進化した―人類進化の新理論

人は海辺で進化した―人類進化の新理論

  • 作者: エレイン モーガン
  • 出版社/メーカー: どうぶつ社
  • 発売日: 1998/03
  • メディア: 単行本


ヒトの進化 (シリーズ進化学)

ヒトの進化 (シリーズ進化学)

  • 作者: 斎藤 成也, 颯田 葉子, 長谷川 眞理子, 諏訪 元, 山森 哲雄, 岡ノ谷 一夫
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2006/08
  • メディア: 単行本


われら以外の人類 猿人からネアンデルタール人まで (朝日選書 (783))

われら以外の人類 猿人からネアンデルタール人まで (朝日選書 (783))

  • 作者: 内村 直之
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2005/09/09
  • メディア: 単行本


ネアンデルタールと現代人―ヒトの500万年史 (文春新書)

ネアンデルタールと現代人―ヒトの500万年史 (文春新書)

  • 作者: 河合 信和
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1999/08
  • メディア: 新書


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帝国書院が発行している「世界史のしおり」は使える [授業ネタ]

 帝国書院が発行している「世界史のしおり」は毎号面白い記事が掲載されていますが、今年の5月号と6月号は面白かったです。5月号では、読者からの質問とその回答が実に興味深いものでした。こういう企画は、われわれにとってまさに「絵から鱗が落ちる」的なものが多く、本当にありがたい。まず目を引いたのが最初の「8世紀にペルシア湾が栄えていたのが、10世紀に紅海に変化したのはどうしてでしょうか」という質問。この質問をした方は、『東大合格への世界史』(データハウス)の16~18ページを呼んでこの質問をしたのだと思います。この本の16~18ページの記述が「使えない」ことは以前にも指摘したところですが、やはりあの解答例に疑問を持った方は多かったみたい.....。そのほかの質問と回答も、一読の価値あり。

東大合格への世界史―東大文I生が教える日本語力で解く論述テクニック (東京大学への道)

東大合格への世界史―東大文I生が教える日本語力で解く論述テクニック (東京大学への道)

  • 作者: 山下 厚
  • 出版社/メーカー: データハウス
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 単行本


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帝国書院『新詳世界史B』(平成20年度用) [授業ネタ]

 以前から独特のつくりで異彩を放っていた帝国書院の世界史教科書がリニューアル。今回も意欲的なつくりになっています。
 色々と新発見があるのですが、中でも目を引くのは明清関係の記述の充実ぶり。いくつか興味ひかれた記述をあげてみると、
  ・明朝の、モンゴル帝国を継承する側面(104ページ)
  ・北元のその後と、オイラトとモンゴルの違い(105ページ)
  ・チベット仏教と世俗勢力の関係(110ページ)
  ・清朝のモンゴル支配(112ページ)
といったところ。


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クリミア戦争 [授業ネタ]

 クリミア戦争(1853~56)というと、私が高校生の頃は「東方問題」の一つという点が大きくクローズアップされていたような気がしますが、最近では「ウィーン体制の崩壊を決定づけた」という記述が教科書にも載るようになってきました。帝国書院の『新詳世界史B』(平成20年度用、173ページ)、東京書籍の『世界史B』(平成19年度用、285ページ)といった、最近の強化にはいずれも触れられています。山川出版社の『詳説世界史』にある「これ(クリミア戦争)によって、ロシアとイギリスが支えてきたヨーロッパの国際秩序は大きく動揺し、以後70年代初頭まで戦争が頻発し、.....」という記述(225ページ)もこれを受けてのことだと思われます。勢力均衡によって平和を維持しようとしてきたウィーン体制ですが、「ウィーン体制成立以来の最初の大戦争」(『新世界史』260ページ)であるクリミア戦争によって、最終的に息の根を止められたということでしょう。ウィーン体制は、メッテルニヒの失脚で崩壊したというわけではないようです。
 意外に思ったのが、『新世界史』の記述です。ルーマニアの事実上の独立に尽力したナポレオン3世の国際的威信が高まったことが2カ所に渡って強調されています(260・264ページ)。「ルーマニアの事実上の独立」が太字になっていますが、なぜでしょう?そんなに重要なことでしょうか?このことは東京書籍の『世界史B』でも、「ナポレオン3世は、モルダヴィア・ワラキアの自治権承認に尽力し、国際政治での発言権を強めた」と書かれています。

 この戦争でナイチンゲールが活躍したのは有名な話。イギリス発行ナイチンゲール生誕150年の初日カバーです。

 またWikipediaによると、カーディガン目出し帽が生まれたのもこの戦争がきっかけだとか。Wikipediaには、「この戦争でヨーロッパに紙巻きタバコが広まるきっかけとなった」ということも書かれていますが、直接の関係は不明。もしかすると、この話が関係しているかもしれません[http://www.jti.co.jp/sstyle/museum/culture/mind/20.html]。


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19世紀前半の音楽 [授業ネタ]

 毎年授業で使っていた、チャイコフスキーの「1812年」(ナポレオンのロシア遠征で使用)と、ショパンの「革命」(七月革命で使用)が収録されたCDとが行方不明になってしまいました。前者は100円ショップのダイソーで購入したもので、後者は「週間グレートコンポーザー」のCDなのでさほど惜しくはないのですが、必要なときに見あたらなくなっていたのでかなり困りました。仕方がないので、Yahoo!のオークションで購入。


 「1812年」収録のCDは500円。ロリン・マゼール指揮のベルリン・フィルで、ベートーヴェンの「ウェリントンの勝利」が収録されているのがグッド。ショパンのほうはディアゴスティーニの製品で、チャイコフスキー、モーツァルト、ベートーヴェンとともに4枚で400円。200円スタートだったのですが、400円が即決価格だったので400円で購入しました。それぞれ支払いは800円程度だったので、投資額としてはマァマァというところでしょう。ナポレオンや七月革命のところで使うことができなかたので、今年は「19世紀の欧米文化」のところで使うことになりそうです。文化史はとかく単調になりがちなので、むしろ文化史のところで使うほうがいいかもしれませんね。

チャイコフスキー:1812年

チャイコフスキー:1812年

  • アーティスト: ドラティ(アンタル), ミネアポリス交響楽団, ミネソタ大学ブラス・バンド, チャイコフスキー, ディームズ・テイラー, ロンドン交響楽団, ベートーヴェン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
  • 発売日: 1999/09/15
  • メディア: CD


ドイツ行進曲集&ウェリントンの勝利

ドイツ行進曲集&ウェリントンの勝利

  • アーティスト: ベルリン・フィルハーモニー・ブラス・オーケストラ, ベートーヴェン, カラヤン(ヘルベルト・フォン), スッペ, リンデマン, モルトケ伯爵
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
  • 発売日: 1997/04/09
  • メディア: CD


1812年序曲~オーケストラ・スペクタキュラー

1812年序曲~オーケストラ・スペクタキュラー

  • アーティスト: バイエルン放送交響楽団, チャイコフスキー, マゼール(ロリン), ガルミッシュ山岳軍楽隊, オイラー(ミヒャエル), ベートーヴェン, リスト
  • 出版社/メーカー: BMG JAPAN
  • 発売日: 1997/12/17
  • メディア: CD


グリーク:「ペール・ギュント」組曲、チャイコフスキー:「1812年」序曲&ベートヴェン:ウェリントンの勝利

グリーク:「ペール・ギュント」組曲、チャイコフスキー:「1812年」序曲&ベートヴェン:ウェリントンの勝利

  • アーティスト: オーマンディ(ユージン), チャイコフスキー, フィラデルフィア管弦楽団, フィラデルフィア・ブラスバンド, エレクトリック・キャノン, テンプル大学合唱団, ペイジ(ロバート), ベートーヴェン, グリーグ, ブレゲン(ジュディス)
  • 出版社/メーカー: BMG JAPAN
  • 発売日: 2001/04/25
  • メディア: CD


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『文藝春秋』4月号 [授業ネタ]

 「小倉侍従日記」、実に興味深いです(詳しい出所が書かれていないのは、少々気になりますが)。以前同じく『文藝春秋』(1990年12月号)に掲載された「昭和天皇独白録」は、昭和天皇が戦後(昭和20年)に語った回顧的内容のものでしたが、今回発表された「小倉侍従日記」は、リアルタイムの記録です。それだけに生々しさが伝わってきます。昭和15年の満州皇帝来訪に関する記述、親しいオランダが同盟国ドイツに降伏して対応に苦慮する様子、三国同盟の締結、昭和16年の日ソ中立条約の締結から独ソ戦の開始、そして太平洋戦争の始まりまで 、世界史の授業ネタに使えそうな記述が並んでいます。昭和17年以降のミッドウェー海戦から戦況が悪化し、日本が降伏するまでの推移も興味深い。中でも興味深いのが、昭和17年12月11日(金)、昭和天皇が京都で語った戦争観。
 その他、今月の『文藝春秋』は世界史の教師にとっては色々と興味深い記事が並んでいます。カラー写真のインド特集と硫黄島、カストロに関するエッセイ(檜垣博紀氏)、「周恩来は毛沢東に殺された」など。周恩来の話は、『周恩来秘録』の著者へのインタビュー。数年前、日曜の朝にラジオを聴いていたら、「周恩来は江青の策略でガンの手術を受けさせてもらえなかった」という話を聞いたような気がしますが、今月の『文藝春秋』によると、それは毛沢東の指示によるものだたとのこと。

 『昭和天皇独白録』は、当時の御用掛だった寺崎英成氏(1900~51)が書き残した記録です。NHKでドラマ化され、日本テレビの『知ってるつもり』でも紹介された「マリコ」のマリコ=テラサキ=ミラーの父親、といった方が有名かもしれません。 太平洋戦争開戦直前、アメリカのワシントンに赴任した外交官の寺崎英成は、外務省に勤務していた兄から、アメリカ政府の対日態度を伝えるように命令されます。寺崎はアメリカ人の妻グエンとの間に生まれた娘「マリコ」(名付け親は当時中国南京政府の特命全権大使の重光葵)を暗号に、アメリカ側の反応がよければ「マリコは元気」、悪ければ「マリコは病気」と電話で伝えることにしました。具体的には、「マリコの具合はいかがですか?」=日米関係はどうですか?、「マリコは大変悪いです。どんどん悪くなる一方です」=見込みが薄くなりました、「それはいけない。 荻窪のオヤジが生きているうちに、良い医者に診てもらわないと」=近衛首相が辞職させられそうです、首相であるうちに改善しないと危ない、 という具合。「マリコ」の状況は日を追う毎に悪化し、寺崎は日米開戦を避ける最後の望みとして、ローズヴェルト大統領から昭和天皇宛の親書を出してもらうことに成功します。大統領の親電が打診されたのは1941年12月7日午前10時。だが、この親電は日本軍部の情報撹乱によって大幅に遅れ、駐日大使ジョセフ=グルーの元に届いたのが7日午後10時。その親電が翻訳され天皇の手に渡ったのが8日午前3時すぎ、真珠湾攻撃が開始されるわずか30分前であり、結局真珠湾攻撃は敢行されてしまいます。
 戦後、寺崎は吉田茂首相から宮内庁御用掛を命じられ、天皇とマッカーサーの通訳担当官となりますが、彼は自分の記録を日記に残しており、彼の死後40年たってから発表されたのが『昭和天皇独白録』です。昭和天皇はローズヴェルトからの親書について「親電がくるであろうことはあらかじめ知っていた。待ち受けていたが一向にこない。私はこの親電に答えたいと思っていたが…」と語っていたそうです。

昭和天皇独白録

昭和天皇独白録

  • 作者: 寺崎 英成, マリコ・テラサキ・ミラー
  • 出版社/メーカー: 文芸春秋
  • 発売日: 1995/07
  • メディア: 文庫


マリコ

マリコ

  • 作者: 柳田 邦男
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1983/01
  • メディア: 文庫


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海禁 [授業ネタ]

 東大の文系を受ける場合、「地歴は世界史と地理、センターの理科は地学が有利」という話はよく聞く話ですが、今年文Ⅰに合格したMくんはあえて日本史と世界史を選択して文Ⅰに合格した優秀な生徒(理科は何を選択したのか聞き忘れた)。Mくんは一年生の時に現代社会を担当しただけですが、時々世界史に関する質問をメールで送ってきてくれてました。彼のような生徒から受ける質問はなかなか勉強になるのですが、私としても調べる猶予時間が与えられるので、結構ありがたかったかも(笑)。でも試験前日に東京から送信された質問メールを、翌朝学校で気づいたときにはあせりました。以前紹介した『東大合格への世界史』(データハウス)という本を読んでみようという気になったのは彼の質問がきっかけ。もらった質問から類推するに、Mくんもこの本の解答には違和感をもっていた様子。

 以前彼からもらった質問関係で、確認したくなったのが中国の海禁のこと。東京大の2002年の第1問で指定語句になっていますが、明末清初の解禁について説明してくれという質問です。このわかりにくさは、ウチの学校で使っている山川の『詳説世界史』の記述にもあらわれています。具体的に言うと、163ページ11行目「清朝は海禁を解除し.....」の「海禁」と、16行目「清朝の禁令をおかして東南アジアに住みつき....」の「禁令」とは具体的にどう違うのかという点です。私も自信がなかったので、山川出版社の編集部に問い合わせをしてみたところ、丁寧に文書で回答をいただきました。以下概略を示します。

 「海禁」には広い意味での海禁と狭い意味での海禁とがあり、教科書で「清朝は海禁を解除し」とあるのは狭い意味である。この狭い意味での海禁は、人民の海上交易を一切禁止するもので、「明代中期までの海禁」とか「清初の海禁・遷界令」がごれにあたる。これに対して「清朝の禁令をおかし」の禁令は、広い意味の海禁である。これは海上交通や交易、海を通っての出入国などに関わる様々な規定を指している。狭い意味の海禁が行われておらず、民間人の海上交易・海上交通が許されている時期にも、広い意味での海禁は続いていた。
 
 いただいた回答によると、広い意味の海禁(教科書でいう「禁令」)には、「軍需物資を他国に売ってはいけない」「海賊と結託してはいけない」「手続きをせずに出国してはいけない」「民間人が海上貿易を行う際には登録して許可を得、一定年限(三年など)の間に帰ってこなければならない」といったものがあるそうです。東南アジアに住み着いてしまった人々は、こうした広い意味での海禁に違反していたということになります。つまりどちらも海禁ということはできるものの、別物ということになります。勉強になりました。ということで、東大の20002年の第1問は華僑の問題なので、海禁の指定語句は教科書の記述「清朝の禁令をおかして」の部分をそっくり拝借して、「清朝の海禁をおかして」と使うのがいいと思います。

 デアゴスティーニの『週間古代文明』ですが、授業で使えそうなのは第1号だけ。ツタンカーメンの復元CGは、授業で生徒に回すと使えるが、2号以降はちょっと使えない。ヒエログリフのスタンプは欲しいなぁ。

東アジアの「近世」

東アジアの「近世」

  • 作者: 岸本 美緒
  • 出版社/メーカー: 山川出版社
  • 発売日: 1998/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


明清と李朝の時代

明清と李朝の時代

  • 作者: 岸本 美緒, 宮嶋 博史
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1998/04
  • メディア: 単行本


中国歴史研究入門

中国歴史研究入門

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 単行本


中国史

中国史

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 山川出版社
  • 発売日: 1998/06
  • メディア: 単行本


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オスマン帝国の軍楽、「トルコ行進曲」、そして「異邦人」 [授業ネタ]

 昨日はもう一つ音楽CDを聴かせました。オスマン帝国の軍楽(メフテル)です。

 ウチの学校で使っている浜島書店の資料集『新詳世界史図説』には、オスマン帝国の頁にイェニチェリの紹介があり、軍楽の説明がついています。曰く「ラッパ・各種の太鼓・鳴物を主とする楽隊と共に進軍し、西欧軍はその音を聞くだけで戦意を喪失したという」。ということで、わが国でもよく知られている「ジェッディン・デデン」を聴かせた次第(時代的にはオスマン帝国の最盛期ではありませんが)。古くはNHKドラマ「阿修羅のごとく」(向田邦子原作、数年前アーカイヴスで再放送された)やビートたけしが出演した中外製薬の「グロンサン」のCMで使用された曲です。
 関係で聴かせたのは、モーツァルトの「トルコ行進曲」。100円ショップのダイソーで買ったCDです。オスマン帝国と西欧との力関係が大きく変化した18世紀には、トルコの音楽は西欧にも取り入れられるようになります。ついでにオマケで、昔なつかし久保田早紀の「異邦人」も聴かせてやりました。イントロのリズムは「ジェッディン・デデン」、転調する部分は「トルコ行進曲」、だと思うんですがどうでしょうか?『手に取る世界史教材』(地歴社)には、庄野真代の「飛んでイスタンブール」を世界史の授業で聴かせたという話が載ってますが、それよりまだマシだと思います(笑)。数年前にもCMで使われたので、2年前の卒業生たちはこの曲を知っていました。「ジェッディン・デデン」をパクった印象的なイントロは流れてませんでしたが。CDつきクッキー「Jポップスの巨人たち」(ブルボン)より。

音の世界遺産 トルコの軍楽

音の世界遺産 トルコの軍楽

  • アーティスト: 民族音楽, オスマン・トルコ軍楽隊
  • 出版社/メーカー: キングレコード
  • 発売日: 1999/08/06
  • メディア: CD

神秘のブルーモスク ~トルコの音楽

神秘のブルーモスク ~トルコの音楽

  • アーティスト: オムニバス, オスマン・トルコ軍楽隊, ウミット・トクジャン, メフメット・オズベック
  • 出版社/メーカー: キングレコード
  • 発売日: 1996/07/24
  • メディア: CD

100曲クラシック=ベストが10枚3000円=

100曲クラシック=ベストが10枚3000円=

  • アーティスト: アントルモン(フィリップ), ヴィト(アントニ), ウィーン室内管弦楽団, ホック(ベルタラン), ビレット(イディル), ポーランド国立放送交響楽団, グレムザー(ベルント), オムニバス(クラシック), チャイコフスキー, メンデルスゾーン, ショパン
  • 出版社/メーカー: エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ
  • 発売日: 2005/12/07
  • メディア: CD

トルコ行進曲~サイ・プレイズ・モーツァルト

トルコ行進曲~サイ・プレイズ・モーツァルト

  • アーティスト: サイ(ファジル), モーツァルト
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2004/03/24
  • メディア: CD

手に取る世界史教材―入手と活用

手に取る世界史教材―入手と活用

  • 作者: 綿引 弘
  • 出版社/メーカー: 地歴社
  • 発売日: 1989/11
  • メディア: 単行本

夢がたり

夢がたり

  • アーティスト: 久保田早紀
  • 出版社/メーカー: ソニーミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 1990/09/15
  • メディア: CD

DREAM PRICE 1000 久保田早紀 異邦人

DREAM PRICE 1000 久保田早紀 異邦人

  • アーティスト: 久保田早紀, 萩田光雄, 山川啓介, 若草恵
  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
  • 発売日: 2001/10/11
  • メディア: CD

青春歌年鑑 80年代総集編

青春歌年鑑 80年代総集編

  • アーティスト: オムニバス, もんた&ブラザーズ, 久保田早紀, 寺尾聰, クリスタルキング, 近藤真彦, あみん
  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
  • 発売日: 2004/11/03
  • メディア: CD

CD&DVD THE BEST 久保田早紀シングルズ(DVD付)

CD&DVD THE BEST 久保田早紀シングルズ(DVD付)

  • アーティスト: 久保田早紀
  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
  • 発売日: 2005/06/29
  • メディア: CD


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ビートルズは好き?じゃあダライ=ラマの名前は知ってて損はないかも [授業ネタ]

 世界史Bの教科書でビートルズに関する記述があるものは少ないようですが(山川の『B用語集』では③)、Aの教科書では数多く取り上げられています。山川から出ている3種類のA教科書ではすべて取り上げられており、その他帝国書院や実教、東京書籍のA教科書にも記述と写真があります。「ビートルズが好き」という生徒も多いと思うので、授業ネタとしては使えると思いますが、教科書に書いてあることくらいは誰もが持っている認識でしょうから、「教科書といかに差別化をはかるか」ってことでしょうね。

 先日チベットのダライ=ラマが出てきたので、今日生徒に聴かせたのがビートルズの「トゥモロー・ネバー・ノウズ」(Tomorrow Never Knows)。この曲は1966年に(彼らが来日公演を行った年)にリリースされた7枚目のアルバム『リボルバー』(Revolver)のラストを飾る曲で、最近ではクラブ系アーティスト、ケミカル・ブラザースの「SETTING SUN」(96年の全英No.1で、オアシスのノエルがヴォーカルで参加している曲。ドラムのリズムから甲高いギターの雰囲気、そしてヴォーカルに被さっているエフェクトまで似ている)に真似されたことで有名な曲。この曲におけるジョン・レノンのヴォーカルには、1分30秒くらいから独特のエフェクトがかけられていますが、これはハモンド・オルガン用のロータリー・スピーカー(レスリー・スピーカー)を通してつくられた声です。これがなぜ世界史の授業に関係あるのかというと、プロデューサーのジョージ・マーティンによれば、このときジョン・レノンは「ダライ・ラマが山のてっぺんから歌っているみたいなサウンドにしてほしい。それでいて歌詞の一語一語がちゃんと聴き取れるようにね。」という要求をしたとのこと(マーク・ルウィソーン著『ビートルズ・レコーディング・セッション』シンコー・ミュージック刊、1966年4月7日の項)。この結果できあがったのが、この声。というわけで、ごじつけですが、許してください。

 エンジニアは、昨年ビートルズとのレコーディング秘話を出版してビートルマニアの話題をかっさらったジェフ・エメリック(エマリックと表記されることも)。『レコーディング・セッション』には、ジョンはこの曲で「4000人の修行僧がバックで歌っているような感じを出してくれ」と言ったという説も紹介してあり、また『リボルバー』の日本盤ライナーでは「ラマ教の僧によるお経の大合唱を意図していたと言われている。」という説も紹介されています。
 『レコーディング・セッション』によればテイク1~3までがレコーディングされ、公式にリリースされたのはテイク3にテープ・ループのSE(サウンド・エフェクト)をSI(スーパー・インポーズ)したもの。1996年にリリースされた2枚組『アンソロジー2』にはテイク1が収録されていますが、ジョンのヴォーカルはすでにレスリーを通っており、しかもリリース版ではダブル・トラッキングのみの最初の部分も、レスリーを通っています。一方、『Unserpassd Masters Vol.3』(Yellow Dog)に収録されているテイクは、SEははいってますが、ジョンのヴォーカルの最初の部分がダブル・トラッキングになっていません。あとから加えられたジョージのシタールもはいっていることから、テイク3がもとになっていることは確かですが、どの時点での状態なのか不明。不思議なトラックです。

 という話をしたのですが、反応は今ひとつ(今ふたつ?)。まぁこんな日もあるでしょう......マニアックすぎたか?最近は以前に比べると「この話題ならおそらく生徒も興味を持つはず」と思っても、はずしてしまうことが増えてきました。ジェネレーション・ギャップ、ってやつ?

 『リボルバー』では最初の曲、ジョージ・ハリスン作の「タックスマン」も、ヒースとかウィルソンとかの名前が出てきて、授業に使える曲です。

先日イギリスで発売されたビートルズ切手。

 リヴァプール郵便局発行の特別消印つき初日カバー。ebayで£8.80(総支払い£10.80)。

 プレゼンテーション・パック。ebayで£6.50(総支払い£9.45)。

国内では楽天の「たんぶる」という切手ショップで売っています。海外から取り寄せるよりも安いみたい。下のバナーをクリックして買ってくれると、アフィリエイトなのでうれしいです。


リボルバー

リボルバー

  • アーティスト: ザ・ビートルズ
  • 出版社/メーカー: 東芝EMI
  • 発売日: 1998/03/11
  • メディア: CD
ビートルズレコーディングセッション

ビートルズレコーディングセッション

  • 作者: マーク ルウィソーン
  • 出版社/メーカー: シンコーミュージック
  • 発売日: 1998/12/10
  • メディア: 単行本
ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実

ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実

  • 作者: ジェフ・エメリック, ハワード・マッセイ
  • 出版社/メーカー: 白夜書房
  • 発売日: 2006/12/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
ディグ・ユア・オウン・ホール

ディグ・ユア・オウン・ホール

  • アーティスト: ケミカル・ブラザーズ
  • 出版社/メーカー: 東芝EMI
  • 発売日: 2005/07/06
  • メディア: CD


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