『エリザベス1世』(英国カンパニー・ピクチャーズ制作:2005年) [歴史映画]
エリザベス1世の映画、というとケイト・ブランシェットの『エリザベス』がすぐに思い出されるわけですが、史実に即しているのはこちらのほう。史実ではアルマダ海戦の時のエリザベス1世は55歳。ケイト版よりもヘレン版の方が年齢的には近いでしょう。『ゴールデン・エイジ』では、ウォルター・ローリーが女王の相手でしたが、このころの相手は、この作品通りレスター伯ロバート・ダドリー(番組中では女王が「ロビン」と呼びかけている)。劇中で、レスター伯の先祖が謀反を企んだという場面がありますが、これも史実通り。アルマダ海戦の際の演説も、こちらの作品の演説は残されている史料とだいたい一致しています(この演説でのヘレン・ミレンの演技もいいです)。
フランスのアンジュー伯の扱いが、ケイト版とかなり違っているのはおもしろいですが、処刑や拷問シーン、テムズ川の様子、時々見えるエリザベスの大紋章、書類につけられたシールなど、史実に即してかなり忠実に再現されています。テレビドラマですが、ここまで細部にこだわった作りはさすがイギリス、というところ。ただテレビドラマだけに、金がかかるアルマダ海戦の戦闘シーンはまったくなし(帰還してきた艦船が、勝利を知らせる旗を掲げているのみて皆で歓声をあげる)。
DVDの2枚目は、レスター伯の義理の息子、エセックス伯との関係が中心。女王の苦悩はまだまだ続きます。この続きは、DVDボックス『ブリティッシュ・キングダム』の「レジェンド・オブ・サンダー」にて。
NHK BS2で「エリザベス1世」が放送されたときのウェブページ[http://www3.nhk.or.jp/kaigai/elizabeth1/index.html]
『エリザベス・ゴールデン・エイジ』(シェカール・カプール監督、2007年、イギリス) [歴史映画]
エリザベス1世を演じた主演のケイト・ブランシェットは、1969年生まれで今年39歳。間もなく第3子を出産ということですが、女王という立場と一人の女性との立場との間で揺れ動くエリザベスを巧みに演じていました。いい女優です。彼女はこの作品でアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされていましたが、残念ながら受賞はなりませんでした。ケイトは別の作品(『アイム・ノット・ゼア』)で助演女優賞にもノミネートされており、前哨戦のゴールデングローブ賞では受賞していたので大本命だったのですが、こちらも受賞はなりませんでした。
見所は、エリザベスの演説を含めたアルマダ海戦。かなり迫力がありました。歴史の知識がなくてもそれなりに楽しめますが、ウォルター=ローリーや、アルマダ海戦のシーンに登場するドレーク、そしてスコットランド女王メアリ=ステュアートやフェリペ2世と、エリザベスとの関係など知っておくとより一層楽しめるでしょう。バビントン事件や、侍女のベス=スロックモートンがローリーと結婚していたというのは、史実に即してます。
エリザベスの死後、テューダー朝の血統が絶えたため、メアリ・ステュアートの息子がジェームズ1世としてイングランドの王位を継承し、ローリーがジェームズによって死刑となったのは、歴史の皮肉と言えるかもしれません。ジェームズが母メアリの処刑に対して形式的な抗議しかしなかったのは、エリザベスに子どもがいなかったため、いずれ自分のもとにイングランド王位が継承されることが確実だったためと言われています。
私が映画館に見に行った日では、30名ほどの観客のうち、男性は私を含めて2人だけ。あとは女性でした。一人の女性の生き方として、関心が高かったのでしょう。
allcinema [http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=329147]
公式サイト [http://www.elizabeth-goldenage.jp/]
なお、エリザベスの生母アン=ブーリンを描いた映画『The Other Boleyn Girl』が間もなく公開予定です。アンを演じるのは、『スター・ウォーズ』のアミダラ女王ナタリー=ポートマン、ヘンリ8世を演じるのは、『トロイ』のヘクトル、『ミュンヘン』では暗殺チームのリーダー、アヴナーを演じたエリック・バナ!いつも憂鬱な顔をしているエリック・バナに「陽気な王様」はちょっとそぐわない気も.....
『The Other Boleyn Girl』公式サイト[http://www.sonypictures.com/movies/theotherboleyngirl/]
エリザベス:ゴールデン・エイジ (ソフトバンク文庫 ア 3-1)
- 作者: ターシャ・アレグザンダー
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2008/01/17
- メディア: 文庫
『グロ-リー』(エドワード・ズウィック監督、1989年、アメリカ) [歴史映画]
アメリカの南北戦争時、黒人だけで編成されたマサチューセッツ第54連隊を描いた作品。連隊の指揮官である主人公ロバート・ショー少佐は、実在の人物です。デンゼル・ワンシトンとモーガン・フリーマンというアフロ・アメリカンの二大俳優が出演しており、デンゼル・ワシントンはこの映画でアカデミー助演男優賞を受賞しました。その後二人はそれぞれ『マルコムX』、『アミスタッド』という黒人問題に関わる映画に出演したというのも興味深いですね。
『マルコムX』同様、デンゼル・ワシントン表情でも語る演技に注目です。むちで打たれるシーン、隊長から「旗手になってくれ」と頼まれるシーン、ローリング(モーガン・フリーマン)から諭されるシーン、戦闘前夜の決意表明のシーン等々.....。素晴らしい。ストーリー的には奇をてらった部分はない、予定調和的な感じもありますが、俳優陣の演技力と迫力ある戦闘シーンで、素直に感動できる作品です。特に決戦前夜、兵士たちが神を讃える歌を歌うシーンが感動的。
驚くのが当時の戦闘の様子。歩兵は隊列を組んで敵の前面まで歩いて行軍していきます。これはかなり無謀だという気がします。『炎の英雄シャープ』でもそうでしたから、19世紀の欧米ではこうした戦いが一般的だったのでしょう。配給される銃は、シパーヒーの乱の一因ともなったエンフィールド・ライフルでした。映画に登場するフレデリック・ダグラスも実在の人物です。
山川出版社の『歴史と地理』432号(1991年8月)に、この映画を用いた授業展開例が掲載されています。「歴史を観る-映画を駆使した授業」というタイトルで、筆者は伊藤弘成先生。山川出版社の『シネマウォーク』シリーズの著者です。
シネマウォーク in World History〈1〉通史編
- 作者: 伊藤 弘成
- 出版社/メーカー: 山川出版社
- 発売日: 2006/04
- メディア: 単行本
マルコムX(スパイク・リー監督、1992年、アメリカ) [歴史映画]
1960年代に黒人解放運動のオピニオン・リーダーとして活躍した マルコムX(1925~65)の生涯を描いた映画。名作『ルーツ』の作者アレックス・ヘイリーがまとめた『マルコムX自伝』をもとに、奇才スパイク・リーが監督・製作した作品です(手塚治虫の『ブラック・ジャック』にはピノコがテレビで『ルーツ』を見たというエピソードが出てくる)。主演のマルコムXを演じるのは、デンゼル・ワシントン。
3時間以上という長い映画ですが、それだけの時間を費やして見る価値は十分にある作品です。何よりデンゼル・ワシントンの演技が素晴らしい(この作品でデンゼル・ワシントンはNY批評家協会賞・ベルリン国際映画祭男優賞を受賞)。私がマルコムXが演説する映像を見たのはNHKの『映像の世紀』でしたが、ほとんど本人のようです。帝国書院の『タペストリー』にもマルコムXの写真が掲載されていますが、写真から伝わってくるマルコムの雰囲気は、映画でのデンゼルそのもの。映画のエンディングで流れる写真やフィルム(モハメド・アリやキング牧師との写真も)は本物のマルコムXのものだと思いますが、これを見てもデンゼルの演技の素晴らしさが伝わってきます。演説のシーンも印象深いのですが、刑務所から出所した主人公が、イライジャ師に初めて会うシーンが素晴らしい。とめどなく涙を流すマルコムの表情から、彼の感動する様子が伝わってきます。
マルコムXが凶弾に倒れたのは、1965年の2月21日。映画にも出てくるケネディ大統領の暗殺は、63年の11月。暗殺前年の64年にはケネディが成立を目指した公民権法が成立し、キング牧師がノーベル平和賞を受賞していますが、映画の中でマルコムが「アンクルトム的指導者」と揶揄しているのは、もちろんキング牧師のこと。帝国の『タペストリー』では、キング牧師とマルコムXの路線の違いを「人種統合主義」と「分離主義」としてあります。
マルコムXの暗殺後、66年にはストークリー・カーマイケルの「ブラック・パワー」運動が起こり、分離主義がいっそう高まりを見せることになりますが、68年にはキング牧師が暗殺されます。キング牧師の暗殺は、ベトナムでソンミ村事件が起こった翌月のことであり、2カ月後の6月5日には、大統領予備選挙で勝利宣言をしたばかりのロバート=ケネディ上院議員(JFKの弟)が42歳の若さで凶弾に倒れるという、戦後アメリカの暗い時代。また10月に開催されたメキシコ・オリンピックでは、陸上男子200mで1,3位となったアメリカの黒人選手スミスとカルロスが、表彰台上でブラックパワーのデモンストレーションを行ったために選手資格を停止され、選手村からも追放されるという出来事も起こっています(このスミスとカルロスが表彰台の上で拳を突き上げている写真は、この映画のエンディングでも見ることができます)。
東京書籍の教科書『世界史B』には、南北戦争の箇所で「アフリカ系アメリカ人を黒人として法的・社会的に差別する状態は.....」という表現があり、注目されます。アメリカ大統領予備選挙におけるオバマ候補の健闘を、マルコムが生きていたらどう評価したでしょうか?
映画の冒頭に流れるのは、1992年のロサンゼルス暴動の引き金となった、ロドニー・キング事件のフィルム。そして映画のエンディングに登場するSowet Teacherは、なんとネルソン・マンデラ!
『ダブルオー』に今週から登場したネーナ・トリニティ、搭乗機体名や兄弟の名前からするとドイツ出身でしょう。ということは、名前の由来は多分、ネーナ・ケルナーでしょうね。
完訳マルコムX自伝 (上) (中公文庫―BIBLIO20世紀)
- 作者: 浜本 武雄, マルコムX
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2002/03
- メディア: 文庫
完訳マルコムX自伝 (下) (中公文庫―BIBLIO20世紀)
- 作者: 浜本 武雄, マルコムX
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2002/03
- メディア: 文庫
『英雄・国姓爺合戦』(ウー・ツーニィウ監督、2001年、中国・日本) [歴史映画]
「冬休みには、見てなかったDVDを見よう」第二弾。
台湾を根拠に清朝に対する復明運動を続けた英雄、鄭成功の活躍を描いた作品。監督は南京大虐殺を描いた『南京1937』の ウー・ツーニィウ。.鄭成功の母、田川松は熊本出身の島田陽子が演じています。製作総指揮の中村雅哉氏は、当時この映画を配給した日活の社長だった人ですが、経営不振の日活を支援したゲーム会社ナムコの創業者。
キネ旬DB[http://www.walkerplus.com/movie/kinejun/index.cgi?ctl=each&id=34010]
B級映画だろう、とたいして期待しなかったのですが、結構面白かったです。わりと日本人好みの浪花節的な部分も感じます。クライマックスの台湾ゼーランディア城攻略は、結構な迫力です。弁髪だの八旗だの、世界史の教科に出てくる用語も数多く使われており、知らないとちょっととまどうかも。清朝の康煕帝が、鄭成功の台湾攻略の邪魔をしないようと命令するシーンはたいへん興味深いですが、事実でしょうか?康煕帝の後ろには、有名な「正大光明」の扁額が見えます。これは清朝第3代順治帝の筆によるものとされ、康煕帝の次の雍正帝から、歴代皇帝は自分の後継者を記した遺書をこの扁額の裏側に置いておく「密建法」が確立します。
『アンタッチャブル』(ブライアン・デ・パルマ監督、1987年、アメリカ) [歴史映画]
買ったきり見ていなかったDVDをみる週間。まずは「ジョージアミッション」で当選した『アンタッチャブル』。
禁酒法時代のシカゴを舞台に、暗黒街を牛耳るマフィアのボスアル・カポネと、彼の摘発に執念を燃やす財務省の捜査官、エリオット・ネスとの戦いをスリリングに描いた名作。監督は、サスペンス名作『殺しのドレス』等を手がけたブライアン・デ・パルマ。主演のエリオット・ネスはケヴィン・コスナー、彼と争うアル・カポネをロバート・デ・ニーロがそれぞれ演じ、ネスを助ける捜査官には、ショーン・コネリーとアンディ・ガルシアを起用、特にショーン・コネリーはこの作品で第60回(1987年度)アカデミー賞助演男優賞、第45回(1987年度)ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞しました。『スカーフェイス』(83年)の失敗以降精彩を欠いていたブライアン・デ・パルマが見事に復活した作品です。
見所はショーン・コネリー扮するマローンの演技。彼が絶命するシーンの凄絶さは、まさに迫真の演技。そしてセントラル駅での乳母車を用いた「階段落ち」のシーン。その他、イタリア」系らしいブライアン・デ・パルマの演出を見つけるのも楽しい限り。エンニオ・モリコーネによる音楽と、ジョルジョ・アルマーニによる衣装ファッションにも注目したいところ。
帝国書院の『タペストリー』には、アル・カポネの項目で「聖ヴァレンタインの虐殺」が紹介されています。
「まんが倉庫」で買った(¥1000)、「St. Valentine's Day Massacre」シリーズの「Gang's Lover Billie」。
『フォレスト・ガンプ~一期一会』(ロバート・ゼメキス監督、1994年、アメリカ) [歴史映画]
『ベオウルフ』が公開中のローバト・ゼメキス監督(われわれの世代では『バック・トゥ・ザ・フューチャー』.....ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「パワー・オブ・ラヴ」や、マイケル・J・フォックスの「カッコ、インテグラ!」というCMが懐かしい!)の作品で、第67回アカデミー賞において作品賞・監督賞・主演男優賞(トム・ハンクス)ほか6部門を獲得。主人公をケネディ大統領やジョン・レノン、エルヴィス・プレスリーなど故人と共演させ、アカデミー賞の視覚効果賞を受賞したSFXは、『スターウォーズ』をはじめ、最近では『パイレーツ・オブ・カリビアン』『ハリー・ポッター』なども手がけるILMによるものです。
ストーリーその他はWkipediaを参照頂くとして、この映画は人間ドラマとしてのみならずアメリカ現代史を見事に凝縮した作品です。アメリカの戦後史を理解する上で、極めて参考になる作品でしょう。アラバマ州立大学へのアフリカ系入学をめぐって起こった事件をはじめ、ケネディやジョンソン、ニクソンといった大統領と主人公を共演させていますが、いずれも戦後アメリカ史では重要な事件です。ベトナム戦争やウォーターゲート事件など、アメリカの戦後史を概観した上でこの映画を観ると、より楽しめるでしょう。ベトナム反戦運動と黒人解放運動との結びつきや、いわゆる「ピンポン外交」など、かなり深い部分も描かれています。ピンポン外交の舞台として日本も関わっており、その後のキッシンジャーによる忍者外交につながったのは、有名な話です(教科書には出てきませんが)。
主人公が息子に渡した絵本は、「おさるのジョージ」でした。スクールバスの女性運転手が、タバコからガムに代えたのは、これも時代の変化を表しているのでしょうか。
昨日夜、本校の先生が地元ラジオ局の番組「情熱先生」に生出演なさっていました(インターネットでスタジオの様子がライヴ中継されていましたが、ラジオとはかなりタイムラグがありました)。数年前にS先生とH先生が出演なさったときは、(今は亡き)「ウィークエンドガイド」で告知したことが功を奏し、「番組始まって以来」という多くのファックスやメールが届いたそうですが、今回は告知不足のため多くなさそうでした。学校のホームページで知らせておけばよかったと後悔しきり。
今日の午前中は、次男が通う小学校で炭焼きの体験学習が実施され、私も参加してきました。保護者の方からは、木の見分け方(樫の木がいちばんいい木になるらしい)や、「光る泥だんご」の作り方(左官業を営んでおられる方でたいへん土に詳しく、興味深い話を聴かせてもらいました)など、面白い話をたくさん聴くことができました。
フォレスト・ガンプ 一期一会 ― スペシャル・コレクターズ・エディション
- 出版社/メーカー: ビクターエンターテインメント/CIC・ビクタービデオ
- 発売日: 2001/12/21
- メディア: DVD
- アーティスト: サントラ, ボブ・ディラン, ビーチ・ボーイズ, ママス&パパス, バッファロー・スプリングフィールド, ジャッキー・デ・シャノン, ドアーズ, サイモン&ガーファンクル, エルヴィス・プレスリー, デュアン・エディ, クラレンス“フロッグマン”ヘンリー
- 出版社/メーカー: Sony Music Direct
- 発売日: 2005/01/19
- メディア: CD
300〈スリー・ハンドレッド〉(ザック・スナイダー監督、2007年、アメリカ) [歴史映画]
フランク・ミラー原作のグラフィック・ノベルをもとに映画化した作品で、以前紹介した『スパルタ総攻撃』のリメイク。結果は最初から分かっているので、ストーリーではなく映像を楽しむべき作品。スローに早送り(早さは様々)、ストップを組み合わせた視覚効果と、原作を映像化した奇抜なキャラクターが見もの。サイやゾウといった奇想天外な戦法、アケメネス朝のクセルクセス(やたらデカイ)の奇抜なファッションなど、観客の度肝を抜く演出も面白いし、血しぶきが飛び散るシーンさえ、独特の美意識に裏打ちされた映像美を感じさせます。R指定の作品だが、それほど過激というわけでもありません。ストーリー的にはベタな話ですし、映像美と演出だけがウリの映画。かなり期待して買っただけに、期待はずれの作品でした。
イラン政府はこの映画がペルシアの文明を侮辱していると抗議したそうですが(http://cinematoday.jp/page/N0010182)、確かにアケメネス朝軍は(クセルクセスを含めて)人間ではなくモンスターに近い感じで描かれてます。今度はイランが、アレクサンドロスに率いられたギリシア人によってハカーマニッシュ朝の文明が破壊される映画をつくってくれると面白いと思いますが。
私は特別編(2枚組)を買ったのですが、本編前に次世代DVDの広告やら、新作の広告などレンタン版みたいな長い広告がはいっていて、かなり不愉快でした。確かにこの手の映画は、次世代DVD向きの作品ではあるでしょうね。
300 <スリーハンドレッド> デラックス・エディション (ヘルメット付限定BOX) (Amazon.co.jp/HMV限定商品)
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2007/09/26
- メディア: DVD
300: The Art of the Film (Dark Horse Books)
- 作者: Tara Dilullo
- 出版社/メーカー: Dark Horse Comics
- 発売日: 2006/12/13
- メディア: ハードカバー
『オリバー・ツイスト』(ロマン・ポランスキー監督、2005年、イギリス) [歴史映画]
『戦場のピアニスト』でオスカーを獲得したロマン・ポランスキー監督が、文豪ディケンズの名作を映画化。19世紀のロンドンの暗い雰囲気が、ポランスキーらしい美意識を感じさせます。フェイギンに扮するベン・キングズレー(1982年に『ガンジー』でアカデミー賞の主演男優賞を獲得)の演技がイケてますが、特殊メイクのせいで言われないとベン・キングレーとは分からないほど。
原作を忠実に映画化しており、監督自身が語っているように「(これまで自分が撮ったことがなかった)子どもと一緒に観ることができる映画」です。オリバー役の子役俳優の素晴らしい演技もさることながら、再現された19世紀ロンドンの生活も見所。石炭の普及にともなって煙突掃除が職業となり(実際に掃除をする場面はでてこないが、掃除人の言動からその労働の過酷さは覗うことができる)、子どもたちを一カ所に集めて労働力として利用するシーンなどは、産業革命の暗部として見せることもできるかも。
私はカルト映画『ローズマリーの赤ちゃん』(主演のミア・ファローは、ビートルズの曲「ディア・プルーデンス」に歌われているプルーデンス・ファローの姉である)やら、妻のシャロン・テートが惨殺されて以後性犯罪で起訴された事件などで、ポランスキー監督を「ヘンな人」と思ってきましたが、最近の活動をみるとその美意識と映画作りの姿勢には、かなりひかれます。ちなみにディアゴスティーニは以前『週間マーダー・ケース・ブック』という世界の猟奇的殺人を毎週特集するというかなりマニアック?な冊子を出してて、その中にはポランシキーの妻シャロンを惨殺したチャールズ・マンソンの特集もありました(その号だけ買いました)。
【シネマトピックス】 http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=5463
『アミスタッド』(スティーヴン・スピルバーグ監督、1998年、アメリカ) [歴史映画]
1839年、アメリカで実際に起こったアミスタッド号事件をテーマにした、スティーヴン・スピルバーグ監督の作品。熊本高校では、現在の2年生が1年生の時、夏休みの宿題の英語の読み物として指定された作品です。出演は、合衆国第6代大統領ジョン・クインシー・アダムズに、ハンニバル・レクター博士ことアンソニー・ホプキンス(彼はオリヴァー・ストーンの『ニクソン』で主役を演じており、二度目の大統領役である)、奴隷解放運動家ジョッドソン役にモーガン・フリーマンも出演。トラバード検事役は、『炎の英雄シャープ』で悪漢ヘイクスウィル軍曹を演じたピート・ポスルスウェイトがなかなかの好演。
【ストーリー】
キネ旬DB[http://www.walkerplus.com/movie/kinejun/index.cgi?ctl=each&id=30785]
【見所&感想など】
奴隷解放宣言前の合衆国における黒人は、すべて奴隷だったと思っている人も多いようですが、実際はこの映画でモーガン・フリーマンが演じている新聞発行人や通訳のように、解放された奴隷も多く存在していたのです。シンケが回想する奴隷貿易船の様子は、演出とはいえ悲惨の一言。白川隆信『歴史モノ教材で授業を変える』には、『ルーツ』を使う授業が紹介されていますが、この『アミスタッド』も使えます。アダムズ元大統領がジョッドソン(モーガン・フリーマン)と語る中で、「物語を語れ」という言葉は重く響きます。アダムズとシンケが語り合う場面、そしてアダムズの法廷演説も感動的なシーンです。ジョン・カルフーンがアダムズの副大統領だったのは史実通り。アダムズは、親子で大統領となった初めての人物です。
派手なアクションとかSFXとかはないので、歴史に興味がなくて「スピルバーグ」という名前だけで見ると、キネ旬DBに書かれているみたいな感想になってしまうでしょう。
【その他参考となるサイト】
奴隷船アミスタッド号の反乱[http://www.independence.co.jp/usa/amistad/]
武川正吾研究室[http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~takegawa/columns/col19980324.html]
児島研究室[http://www.koma.econ.meisei-u.ac.jp/koji/_tRhEs5H.html]